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本の紹介「植物はなぜ毒があるのか」

「植物はなぜ毒があるのか 草・木・花のしたたかな生存戦略」田中修・丹治邦和著、幻冬舎新書、2020年3月、ISBN978-4-344-98585-8、800円+税


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【西本由佳 20210417】【公開用】
●「植物はなぜ毒があるのか」田中修・丹治邦和著、幻冬舎新書

 植物についての医学寄りの雑学がたくさん載っている。トリカブトの毒とフグの毒はどちらも致死性の毒だが作用は正反対で、同時に摂取すると拮抗して毒のまわりはじめる時間を遅らせることができる。推理小説に出てきそうな話だが、実際にそういう殺人事件があったという。毒に限らず、毒を利用して薬とする話など、普通の植物の本とは少し毛色の変わった話が多く載っていて楽しめる。ただ、副題の「草・木・花のしたたかな生存戦略」の部分はあまりなかったので、副題の内容を期待しないほうがいい。

 お薦め度:★★★  対象:植物について少し変わった雑学を仕入れたい人
【冨永則子 20210421】
●「植物はなぜ毒があるのか」田中修・丹治邦和著、幻冬舎新書

 植物は地球上の全ての動物、生きものの食料を賄って生きている。植物は動物に食べられる宿命にあるが、食べ尽くされれば絶滅してしまう。植物は食べ尽くされないために色々な仕組みや工夫を凝らしている。その一つの方法が有毒な物質を身につけること… なんだけど、その目的のために有毒な物質を作り出すようになったかどうかは定かではない。…って『はじめに』にサラッと書いてある! なぜ毒があるのか知りたいから読もうと思ったんですけど。それにしても、ヒトって食いしん坊な生きものだと思った。食べられる植物に似てるからって、よく分からないものを食べてしまう。食糧難の時代でもないのに、どうして食べたくなるのかなぁ。

 お薦め度:★★★  対象:食べることを基準に植物を見てしまう食いしん坊に
【西村寿雄 20210414】
●「植物はなぜ毒があるのか」田中修・丹治邦和著、幻冬舎新書

 植物生理学専門の田中さんと神経病理学者の丹治さんの共著、植物の毒性に関する話がおもしろい。まず、植物はなぜ毒があるのか。植物にとっては生きるための戦略であることを語る。ジャガイモや水仙、トリカブトなど人間にとっては毒性が強いことを書く。その他、身近な植物に潜んでいる毒についてわかりやすく説く。野外などでの山菜料理の参考になる。全体に、各植物の名前のいわれや毒素の種類まで書かれていて参考になる。中ほどから、それら植物の毒を巧妙に利用してきた人間の知恵が書かれている。植物の毒も程度の問題、毒は薬にもなる。本の題名をさらに広げて、後半は植物の薬としての効用が書かれている。最後は、長寿と植物について。大豆やニンニクなどを取り入れた食生活の大切さがわかる。万人必読の書である。

 お薦め度:★★★★  対象:すべての人
【萩野哲 20210407】
●「植物はなぜ毒があるのか」田中修・丹治邦和著、幻冬舎新書

 タイトルの“なぜ毒があるのか”については第1章の最初の2行(18ページ)で済まされている。その後、どんな植物にどんな毒があるのか、人間はその毒をどのように利用しているのかについては書かれているが、“したたかな生存戦略”はどこに書いてあるの? 確かに、ジャガイモの芽や未熟なものに毒が多いのは“生存戦略”といえばそうなのかもしれないが…。他は特に気付かなかった。タイトルが不適切なのでは? 平易そうな文章で書かれているが、クドさが目立って読みにくい。

 お薦め度:★★  対象:植物がどんな毒を持っているか知りたい人
【和田岳 20210413】
●「植物はなぜ毒があるのか」田中修・丹治邦和著、幻冬舎新書

 タイトルになる疑問の答えは、イントロに書いてある。動物に食べられないため、病原菌を撃退するため。それ以上は出てこないし、“したたかな生存戦略”も出てこない。説明されているのは、ひたすら植物の作る物質が人にどんな影響があるのかって話だけ。タイトルは完全にウソ。
 毒をもつ身近な植物、防虫剤に使われる植物、有毒な植物から生まれた薬、摂取すると役に立つ植物由来の物質、食べると薬の効果を消してしまう植物、長寿につながる食べ物。だんだん毒の話ですらなくなっていく。
 とりあえず健康のためには、サケ、コーヒー、茶、グレープフルーツ、ダイズ、ニンニク、オリーブ、ウコンなどを適度に摂ったらいいらしい。

 お薦め度:★★  対象:植物のつくる物質を、人がどう利用できるかを知りたい人
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