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本の紹介「進化のからくり」

「進化のからくり 現代のダーウィンたちの物語」千葉聡著、講談社ブルーバックス、2020年2月、ISBN978-4-06-518721-0、1000円+税

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【西本由佳 20200418】【公開用】
●「進化のからくり」千葉聡著、講談社ブルーバックス

 本書では、カタツムリやカワニナ、クモといった目立たないな生きものから、研究者たちがどうやって進化の手がかりを得てきたかが紹介される。島という閉じた空間で多様な進化をしたカタツムリは、小笠原の世界遺産登録にも大きく貢献するほど価値あるものだった。ガラパゴスのカタツムリからは、被食圧に対する殻のカモフラージュの進化が、島の生態系の性質を変化させてきたことがわかるという。文章がうまく読みやすい。人物や時代が交錯しているので、何回か行き来しながら読み込む必要がある。

 お薦め度:★★★★  対象:脳に刺激がほしい時に
【西村寿雄 20200313】
●「進化のからくり」千葉聡著、講談社ブルーバックス

 著者が長年取り組んできた遺伝子研究の経過を詳細に書いている。ゲノム解析を通しての進化研究の様子がよく読み取れる。一般向けに、ジョークも交えて楽しく読めるが中身は難解な面も多い。進化論もダーウィンの時代からずいぶんとミクロになったことがよくわかる。身近なモノアラガイやカタツムリ、カワニナなども複雑に進化していることがくわしく書かれている。カタツムリ調査を通じて、小笠原の島に潤いが増えたとか、鋭い棘をかき分けてのガラパゴス調査など、ハラハラドキドキの読み物でもある。

 お薦め度:★★★  対象:生物好きの高校生以上
【萩野哲 20200619】
●「進化のからくり」千葉聡著、講談社ブルーバックス

 著者は、ダーウィンの志を受け継いで進化を研究する学者も進化の話を楽しむファンもどちらも、後継ダーウィンであると位置づける。更に、アンチ自然選択の論客も、敵がいて初めてゲームが成り立つとの意味で同士であると。本書にはそのような人物が、何人も紹介されており、それぞれの進化のストーリーが語られる。進化には誤った効率化を回避する力がある。2つのタイプをもつホソウミニナは、それぞれ異なった環境に住むが、その理由はそれぞれの環境に適応したからではなく、一方が寄生虫に感染していたからだった。などなど。難しい話にぶつかってワケが分からなくなったら、一歩戻って見出しに注目しよう。著者が何を言いたいかが分かるから。左巻きのガーデン・スネイルにジェレミー(英国の左派政治家でガーデニングが趣味)と名付けるセンスのような、一見、進化や生物学に何の関係もない知識が、難解な進化の謎解きに役立っているような気がしてきた。進化をめぐる謎解きのストーリーとその成果を読書に楽しませるという、著者の目的は十分に達成されていると思う。

 お薦め度:★★★★  対象:この世の少しでもダーウィンまたは進化に興味がある人
【和田岳 20200626】
●「進化のからくり」千葉聡著、講談社ブルーバックス

 「歌うカタツムリ」で、進化理論の歴史を貝を中心に紹介するという妙技を見せてくれた著者が、この本では、現代の進化研究の成果を紹介してくれる。
 第1章こそガラパゴスフィンチの話だが、右巻きと左巻きの陸貝の話。日本のカワニナ類の急速な進化の話。小笠原諸島のカタマイマイの島ごとに反復する適応放散の話。ホソウミニナの寄生者の話。と、やはり貝に偏った進化の話題が盛りだくさん。どれも興味深く、なぜか北斗の拳が気になる。登場する学生に知り合いがいるのも気になる。
 ただ、「歌うカタツムリ」のような歴史といった全体の軸がないので、バラバラといろんな話題を読まされる感は否めない。

 お薦め度:★★★  対象:進化が気になる人、あるいは貝好き
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