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本の紹介「里湖モク採り物語」

「里湖モク採り物語 50年前の水面下の世界」平塚純一・山室真澄・石飛裕著、生物研究社、2006年8月、ISBN4-915342-48-4、1700円+税


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【中条武司 20071016】【公開用】
●「里湖モク採り物語」平塚純一・山室真澄・石飛裕著、生物研究社

 水草がつい50年ほど前まで、肥料として産業になるほど採集されていた事実なんてまったく知らなかった。そしてその産業は、現在盛んに言われる「循環型社会」を図らずも実現していたということも。聞き取り調査と市町村・組合の資料を読み解き、モク採りがいかに重要な産業で、それが湖の水質の浄化にも役立っていたことを示している。
 除草剤の影響と沈水植物の衰退と結びつけるのは、(事実だとしても)やや強引で短絡的な気がするが、それを差し引いても湖の文化・産業・民俗や沈水植物の新たな面を見つけられる。

 お薦め度:★★★  対象:湖好きの人

【萩野哲 20070625】
●「里湖モク採り物語」平塚純一・山室真澄・石飛裕著、生物研究社

 かつて50年前頃まで日本全国の湖沼に広範に存在し、湖沼生態系に重要な位置を占めていた沈水植物(=モク)群落の消長を、肥料として人間に用いられた統計資料を基にまとめた本。実際にモク採りに従事した世代が少なくなり、統計資料も忘れ去られようとしている状況で本書をまとめた著者らの努力は貴重である。湖沼の自然再生が叫ばれる昨今、著者らはその原風景としてここで調べた50年前のモク群落の重要さを指摘する。ただ、これら沈水植物の生物学的知見に割いた紙数や、なぜこのような衰退が起こったかについての言及、本書のタイトルになっている里湖に関する記述は少なく、その点物足りなさを感じた。
 それにしても大根島で思い出すのは、戦前の島根県の地図を見ていた先輩が中海を見て、「島根大学はすごい所にあるなあ」と勘違いした学生時代の笑い話である。

 お薦め度:★★  対象:文化人類学に興味がある人

【和田岳 20070629】
●「里湖モク採り物語」平塚純一・山室真澄・石飛裕著、生物研究社

 ほんの50年ほど前まで、日本の主な湖は、底まで見えるほど透明度が高く、船の通行を妨げるほど大量の水草が繁茂していたという。そして、それを支えていたのが、モク採りと呼ばれる水草採集だった。
 中海と宍道湖でのフィールドワークを軸に、本州各地の大きめの湖の様子をアンケート調査した結果に基づき、かつて日本各地の湖で行われていたモク採りが紹介される。本というより、論文のような感じで書かれている。研究自体は、社会学的なテーマだが、生態学的にもとても興味深い。

 お薦め度:★★★  対象:里山の自然に興味のある人

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