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本の紹介「里の音の自然誌」

「里の音の自然誌 生きものの声から風景を聴く」内田正吉著、エッチエスケー、2009年12月、ISBN978-4-902424-09-6、600円+税


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【加納康嗣 20100423】
●「里の音の自然誌」内田正吉著、エッチエスケー

 里に満ちる自然の音を感受性豊に綴った好著である。音を通して描く里の風景世界から著者の生き様を感じる。アマガエルの輪唱と流れ去る声、夏の早朝のあの香り、ヒグラシの抑揚、秋の早朝のツヅレサセと声の道、コオモリ・ミゾゴイ・アカハラの季節の声、雨を告げるオナガ、シュロの風など景観を作る音。あふれる情感が行間に漂うのは、里の自然の音の中で暮らしてきた生活がかけがえのない、いとおしいものだからであろう。音を聴き取り、その変化を聞き分け、音と共に生活することは遙か昔に置き忘れてきた私たちの生活だった。郷愁を持って懐かしく読みすすむことが出来た。

 お薦め度:★★★★  対象:「お背戸に木の実の落ちる」音を聞きたいと思う人

【六車恭子 20100624】
●「里の音の自然誌」内田正吉著、エッチエスケー

 言葉で綴られた「里の音の自然誌」。著者は長年里暮らしをされており、生き物にも精通されておられるので、微細な音も聞き漏らさない地獄の耳の持ち主、いやソロモンの指輪の持ち主、とお見受けした。生き物が発する信号を受け止めるアンテナの性能を、日々研鑽する著者ならではの著作だろうか。おしむらくは正確をきするゆえか、経験からの蘊蓄の深さの故か、重複する記述が散見され、密やかな「音」の案内人が不本意に犯してしまったのだろう日本語の言葉の連なりを軽視した傾向がみられる。表などで表現できるものはそのように、里の音の案内人に徹していただきたかった。

 お薦め度:★★  対象:田舎暮らしを夢みるひと

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