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本の紹介「サルと屋久島」

「サルと屋久島 ヤクザル調査隊とフォールドワーク」半谷吾郎・松原始著、旅するミシン社、2018年12月、ISBN978-4-908194-08-5、1600円+税

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【西本由佳 20190616】【公開用】
●「サルと屋久島」半谷吾郎・松原始著、旅するミシン社

 1989年から現在まで、屋久島でサルの調査が続けられている。野生のサルを知りたいという研究者の試みから始まった調査は主力を学生に移しながら発展してきた。その調査を現在主導するサルの研究者が調査の軌跡と研究に仕上げる過程を、長らく調査に関わってきたカラスの研究者が調査隊の日常を書き留めている。調査ははっきり言ってきつい。お風呂もまともなトイレもない山中でテントで1週間過ごす。調査地への道は林道とやぶこぎ、気を散らせば道に迷う。屋久島お得意の雨が降ればテントもカッパもあっさり浸水する。それでも参加者たちがやる気になるのは、自然の中で一人ですごし、ときに全くの野生のサルと出会う経験の得難さだ。そして、調査をできる限り有意義なものにすること、採ったデータを成果として残すことを考える立場の人もいる。急峻な地形や天候に阻まれ、統一的な調査の難しい屋久島で、それでもその不揃いなデータを最大限生かせるよう、地道な努力が続く。学生という限られた時間をこの調査に投じた人たちの熱意が印象に残った。

 お薦め度:★★★★  対象:生きもの、もしくはフィールドが好きな人
【森住奈穂 20190620】
●「サルと屋久島」半谷吾郎・松原始著、旅するミシン社

 カラスくんとマツバラくんシリーズ?に新キャラ登場!その名はサルちゃんとゴローくん。サルちゃんはヤクシマザル。ゴローくんはサルの研究者、マツバラくんの後輩であり、1989年に始まった「ヤクザル調査隊」に学生時代から参加、今は事務局長として関わり続けている。マツバラくんは1992年から2000年まで参加。「学んだことの半分くらいと、とんでもない経験の8割くらいは、屋久島がらみ」だそうで、電気・ガス・水道の無い山中でのキャンプ生活に大活躍していたようだ。本書では、ゴローさんが調査隊の歩みを、マツバラくんが調査隊のエピソードを紹介。伝説?の1993年夏は他書にも紹介があり、よっぽど楽しかった(振り返れば)んだろうなぁ。30年続く調査のうちにあった様々な試行錯誤や紆余曲折も紹介され、動物生態学のリアルに触れられる。

 お薦め度:★★★  対象:野生生物調査に興味のあるひと
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