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本の紹介「サボテンはすごい」

「サボテンはすごい 過酷な環境を生き抜く驚きのしくみ」堀部貴紀著、ベレ出版、2022年8月、ISBN978-4-86064-699-8、2200円+税


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【萩野哲 20221117】【公開用】
●「サボテンはすごい」堀部貴紀著、ベレ出版

 サボテンとは何者か?サボテンが過酷な環境を生き抜くしくみはどのようなものなのか?本書はサボテンの葉、トゲ、毛、茎、根、花、骨など、表面や内部の構造を多くの図で示し、更に貯水方法や光合成についても大変わかりやすく解説している。サボテンはどのように役に立っているのか?食用や餌などでも結構利用できるのではないか?サボテンの水耕栽培についても触れられ、サボテンは必ずしも苛酷な環境を好んでいないこともわかる。著者のサボテン行脚も紹介されている。1500〜2000種あるといわれるサボテンの内の代表的な属と、更にはサボテン似の多肉植物の写真も掲載されていて楽しめる。

 お薦め度:★★★  対象:サボテンをより深く知りたい人
【里井敬 20221219】
●「サボテンはすごい」堀部貴紀著、ベレ出版

 サボテン科は南米が起源だけど世界中に広がっている。砂漠に住むイメージだけど熱帯雨林にも生息する。
 サボテン科以外にもよく似た多肉植物があり、以前は混同されていた。サボテン科は構造により化石が残らないし、標本も作りにくい。そこで遺伝子の塩基配列で分化が調べられている。
 乾燥から身を守る構造のおかげで、水不足の地域での食料や家畜の餌になっているが、世界中に広がったお陰で侵略的外来生物の問題が出ている。コチニール(カイガラムシ)を使った防除は効果があるが、その地域の食料不足の問題を引き起こしている。コチニールはサボテンに付く虫だが、食品や化粧品の色素として使われている。
 サボテンの生息地のメキシコへの旅の注意点や、サボテンの育て方も載っている。
 内容に関係ないが、本文は横書きなのに章の見出しが縦書きで個人的にブツブツ切れる感じがして読みにくかった。

 お薦め度:★★★  対象:サボテンが大好きな人
【和田岳 20221220】
●「サボテンはすごい」堀部貴紀著、ベレ出版

 サボテン研究者によるサボテン紹介本。おもにサボテンを栽培する人を意識した本になっている。
 前半は、サボテンの分類と系統からはじまり、形の多様性、 棘の種類と機能いろいろ(温度のコントロールや水分集めまで!)。そして圧巻は、水を蓄え逃がさない、全身乾燥地対策だらけのサボテンのスゴ技の紹介。
後半は、サボテン博士がサボテンを見に行く話であり、作物としてのサボテンの話。そして最後に身近な多肉植物・サボテン図鑑。
 前半は勉強になる。食料などとしてサボテンの利用の話も面白い。でも、繁殖生態や種子分散など、生態学的な話がほぼ抜け落ちているのが、とても不満。

 お薦め度:★★  対象:サボテンのことを知りたい人
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