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本の紹介「琉球列島のススメ」

「琉球列島のススメ」佐藤寛之著、東海大学出版部、2015年12月、ISBN978-4-486-01997-8、2500円+税


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【和田岳 20160414】【公開用】
●「琉球列島のススメ」佐藤寛之著、東海大学出版部

 動物が好きで琉球大学に入った著者は、大喜びで海に山に動物とふれあいまくる。大学院に行ってO大先生のもとでスッポンの研究で博士号をとり、研究者の道を進むのかと思いきや、環境教育の場で琉球の自然と向き合う道を選ぶ。フィールドの生物学シリーズの一冊。にしては珍しく、外国には行かない。そして、少なくとも現時点ではプロの研究者というわけではない。
 漁港で出会ったさまざまな魚やカニ。毒のある動物の味見体験。大学周辺で普通に見られるクロイワトカゲモドキ。アカウミガメの繁殖とそれを狙うアカマタ。冬のある日突然一斉に産卵するハナサキガエルやリュウキュウアカガエル。再発見されたケナガネズミにトゲネズミ。実体験に根ざしたリアルな沖縄島の動物たちの話はとても面白い。
 第8章以降は、一転して環境教育の話。珊瑚舎スコーレでの体験、泡瀬干潟での学校教育との連携、教材作りの話。読み始めと、読み終わりでは、全然テイストが違う。生き物好きには第7章までが、環境教育に興味があれば第8章以降がオススメ。

 お薦め度:★★★  対象:沖縄の動物とくに両生爬虫類に興味がある人、あるいは環境教育に興味のある人
【萩野哲 20160411】
●「琉球列島のススメ」佐藤寛之著、東海大学出版部

 子供の時からのカメ好きが高じて、なぜかカメが見れると信じた琉球大学に入り、琉球列島の生物にどっぷりとはまり込んだ著者。努力の甲斐もあって、琉球列島の生物には非常に詳しくなり、とっても珍しい生物に遭遇したり、決定的瞬間に立ち会ったりして、楽しい学生生活を送った。しかし、やはりというか、職探しには大変苦労をしており、やっとのことで環境教育の分野に何とか活躍の場を見つけたかに見える。“沖縄の人々は自分たちの周りにある素晴らしい自然を知らない”という意味のことが書かれているが、恐らく他の地域でも同様であろう。どうかこのような人が生活できる場がありますように。

 お薦め度:★★★  対象:沖縄の生き物が好きな人、または就職の大変さを味わいたい人
【森住奈穂 20160414】
●「琉球列島のススメ」佐藤寛之著、東海大学出版部

 琉球列島はその地理的成り立ちから、「そこにしかいない」生きものの宝庫である。
 そんな生きものたちとの出会いを至上の喜びとする著者が、海モノ、陸モノ、毒モノなどなど、自身が体験した琉球列島の自然の魅力を自由に語っている。大学ではスッポンを研究されていたとのことで、そのせいなのか、とにかく爬虫類率が高い!爬虫類や両生類好きにとって琉球列島は天国のような場所なんだろうな〜。研究者という立場に身を置かず、現在は環境教育や生涯学習に関わっておられるとのことで、教材作りや観察会、ワークショップの紹介も盛り込まれている。生きもの相手ならどんなことも苦労にならないのに、それで職を得ることの難しさも描かれ、少々切なくなってしまった。

 お薦め度:★★  対象:生きもの好きの沖縄好きなひと
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