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本の紹介「パンダの死体はよみがえる」

「パンダの死体はよみがえる」遠藤秀紀著、ちくま新書、2005年2月、ISBN4-480-06220-3、700円+税


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【和田岳 20050629】【公開用】
●「パンダの死体はよみがえる」遠藤秀紀著、ちくま新書

 国立科学博物館(当時)の学芸員の著者が、哺乳類の死体を引き取っては標本にし、その中でさまざまな発見をする。そうした少し変わった日常を、あふれんばかりの情熱と共に語った一冊。
 話は、ゾウの死体の解体から始まる。パンダの死体を処理しつつ、その前肢の構造について発見した話。さらにノギス1本をもって海外で調査した話や、国立科学博物館に所蔵されている標本の話へと続く。
 イントロの出だしからして「死体に幸せな未来を求めるのが、私の責務だ」。死体を前にしたときは「おまえが隠している謎は何だろうか?」と問いかける。やたらと使命感に燃え、思いこみの強そうな文章にはなじめない人もいるだろう。

 お薦め度:★★  対象:ゾウの死体の解体の様子に興味が持てれば

【田中久美子 20050629】
●「パンダの死体はよみがえる」遠藤秀紀著、ちくま新書

 著者の紹介に「遺体に隠された謎を解き明かしている」とあるように、パンダの偽の親指の役割を解明したり、ツチブタの掌の機能のメカニズムをシミュレーションしてみたり、遺体と向き合いながら、様々な物語を引き出している。動物が死んでから始まるそんな物語もたくさんあるのだ。遺体でしか調べられない“事実を知る。”そんな楽しさに出会える本です。

 お薦め度:★★★  対象:動物のことをもっと知りたいという人に

【六車恭子 20050629】
●「パンダの死体はよみがえる」遠藤秀紀著、ちくま新書

 「遺体科学」、著者はその豊かな知の世界への案内人である。しかもその遺体は最新の科学技術が適応されるマネーの動く場でもあるようだ。息絶えたばかりの巨象の厚い皮下脂肪の中から心臓を取り出し格闘したことに始まり、従来の定説をくつがえした戦後最大の発見、パンダのもう一つの「偽の親指」は彼の学者人生の黄金期のはじまりとなった。
 古今東西の遺体が語る物語を彼は披瀝して止まない。遺体を学術文化の未来に残す活動を続けるヒーローを印象づける小気味のいい文章である。

 お薦め度:★★  対象:一種使命に陶酔する文体に向かない人には薦めません

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