友の会読書サークルBooks

本の紹介「おっぱいの進化史」

「おっぱいの進化史」祖田修著、技術評論社、2017年1月、ISBN978-4-7741-8679-5、1880円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]

【上田梨紗 20170616】【公開用】
●「おっぱいの進化史」祖田修著、技術評論社

 帯に書かれた「哺乳類ならおっぱいのことをもっと知るべきである」に、たしかにその通りだと思いました。何者かに哺乳類を代表して答える時が、いつかやってくるかもしれないし、やってこないかもしれない…、そんな哺乳類代表気分を味わいながら、CHAPTER1を読み初めたのですが、代表は辞退しようと思いましました。成分が全く頭に入ってこない。動物によって成分が異なっていたり、人間でも人種によってミルクオリゴ糖が分泌型と非分泌型に別れるなどサラッとしたことしかわかりません。表紙のイメージと違って専門的です。
 CHAPTER2・3・5は、最高でした。海棲哺乳類のおっぱいは脂っこい固まりのようなもの、乳腺フェロモン、オスもおっぱいがでるのか? おっぱいがあって乳歯がある、乳酸菌って大切だけど虫歯菌の一種でもあるなど、おっぱいを作り出した御先祖様スゴイです。ただ爬虫類から哺乳類にどうやってわかれたのか、とても不思議です。

 お薦め度:★★★★  対象:哺乳類・おっぱいが好きで悩んでる人


【萩野哲 20170609】
●「おっぱいの進化史」祖田修著、技術評論社

 ここで「おっぱい」とは@「乳汁」とA「乳房」の両方を指している。本書ではどちらかというと@の方に重点を置いており、その成分について詳しく解説されているが、哺乳類の種によってずいぶん組成が異なり、それはそれぞれの種の生活環や感染予防に適したかたちで進化していったようである。Aの方は3章の初めの辺りのみであるが、その起源は不確かながらアポクリン腺から進化したという仮説が紹介されている。また、哺乳類の毛が乳腺とともに発生したという興味深い仮説も紹介されている。その他、乳酸菌についても多くの紙数が充てられており、虫歯菌も乳酸菌の一種だったとは! また、本書を読んで、古代日本でも牛乳が利用されていたことを知ったが、その加工最高級品が「醍醐」といい、「醍醐味」という最上級を表す言葉はそれが起源だったとは、大変勉強になりました。

 お薦め度:★★★  対象:学校給食で脱脂粉乳を飲まされた人など


【森住奈穂 20170616】
●「おっぱいの進化史」祖田修著、技術評論社

 哺乳類とは、読んで字のごとく「乳」を飲ませて子どもを育てる動物の分類群。ただし「乳=おっぱい」の起源については、いまだ謎に包まれているらしい。哺乳類の祖先から哺乳類へと進化していくどの段階で、おっぱいは始まったのか。卵を抱くイモリの例をとって、原初のおっぱいは皮膚を通して卵に送られていた説、さらに、乳腺の発達が毛の発生を促した説など、ご先祖は脈々とつながっていることが実感として伝わってきて面白い。1〜3章を担当する著者の専門はミルク化学、おっぱいの成分から進化を探る。4章では乳酸菌、5章では乳製品の歴史が盛り込まれ、おっぱいについて広く学べる内容となっている。

 お薦め度:★★★  対象:おっぱいって不思議だな、と感じたことのあるひと


【和田岳 20170616】
●「おっぱいの進化史」祖田修著、技術評論社

 “おっぱい”とは乳房のことでもあり、そこから出てくる乳汁のことでもある。などと最初に宣言されているが、この本の話題はもっぱら乳汁のこと。なんとなれば、著者は人以外の乳汁の成分研究の専門家なので。
 ヒトを中心におっぱい分泌の仕組みと成分の紹介した後、話はさまざまな哺乳類のミルクの成分の話。クマのミルクは乳糖が少なくてミルクオリゴ糖が多い。 アザラシやクジラのミルクは、脂っこくて糖の少ない。カンガルーのミルクの成分は子どもの成長に応じて変化する。乳頭をもたない単孔類のミルクには、MLPという細菌の増殖を抑えるタンパク質が入っている。それぞれの暮らしに応じたミルクの成分の違いの話が面白い。
 なんとなく種によってミルクの成分が違うことは知ってたけど、安易にネコに牛乳あげてはダメなんだなと納得する。まだまだ個々の動物のミルクの成分には謎がいっぱいらしく、動物園は大変そう。

 お薦め度:★★★  対象:ネコに牛乳をあげたことのある人


[トップページ][本の紹介][会合の記録]