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本の紹介「野ネズミとドングリ」

「野ネズミとドングリ タンニンという毒とうまくつきあう方法」島田卓哉著、東京大学出版会、2022年1月、ISBN978-4-13-063952-1、3400円+税


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【萩野哲 20221009】【公開用】
●「野ネズミとドングリ」島田卓哉著、東京大学出版会

 野ネズミのドングリ消化率を測定する実験を行ったところ数日で死亡してしまったのが、著者がこの問題の謎解きを始める契機となった。ドングリが渋いのはタンニンを含むからだ、というところまでは知っていたが、実はタンニンにはタンパク質との強い結合能力があり、食物中のタンパク質や消化酵素と結合して消化阻害を引き起こすのみならず、体組織由来の内的窒素と結合・排泄して生体内の窒素バランスを悪化させ、更には分解されたタンニンがフェノールとなって肝不全や腎不全を引き起こすという、恐ろしい作用を有しているらしい。著者たちは、ドングリ中に含まれるタンニンを野ネズミがどう克服するのか、いくつかの仮説を立て、実験によって正解を導いていく。そして、1つ解決する度に、新たな疑問が次々に湧いてくる。野ネズミとドングリの関係、それは「世界はなぜ緑なのか」というもっと大きな謎の入り口である。

 お薦め度:★★★  対象:自然界の謎を解明する過程を楽しみたい人
【西本由佳 20220821】
●「野ネズミとドングリ」島田卓哉著、東京大学出版会

 実験で飼っていた野ネズミにドングリだけを与えていたところ死んでしまった、ということから話は始まる。ネズミとドングリの組み合わせはよく見かけるものだが、あまりのどかな関係ではないらしい。鍵となるのはタンニンで、著者はタンニンの化学的性質から始めて、ネズミへの影響、どんなドングリにどれだけ含まれるか、それが生態系のなかでの位置にどのような違いとして出てくるか、と話を進めていく。よく言われるドングリの豊凶と動物の個体数の変動にも話は及ぶ。調査方法や様々な事象の定義など、書き方は論文調だが、ネズミやドングリに関心があれば読み進められるし、勉強になると思う。

 お薦め度:★★★  対象:ネズミやドングリに関心があれば
【和田岳 20220616】
●「野ネズミとドングリ」島田卓哉著、東京大学出版会

 アカネズミをドングリだけで飼ったら死んでしまう。というのが最初。でも、野生のアカネズミはドングリを喰いまくってるはずなのに、なぜ?
 というのをきっかけに、アカネズミが、ドングリに含まれるタンニンという毒をどうやって解毒しているかを解明。さらには、ヒメネズミという野ネズミも加えて、ドングリも複数種登場させて、野ネズミとドングリの、タンニンを通じた複雑な関係が見えてくる。
 これぞ化学生態学、という内容。同時に、タンニンって意外と怖いなぁ、とも思う。カキを食べるのが少し怖くなったような。

 お薦め度:★★★  対象:ネズミを飼うならドングリあげたらええんちゃうん?と思ってる人
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