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本の紹介「野尻湖のナウマンゾウ」

「野尻湖のナウマンゾウ 市民参加で氷河時代をさぐる」野尻湖発掘調査団著、新日本出版社、2018年3月、ISBN978-4-406-06194-0、1300円+税


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【森住奈穂 20180816】【公開用】
●「野尻湖のナウマンゾウ」野尻湖発掘調査団著、新日本出版社

 今年で57年目を迎える野尻湖の発掘調査。その概要と成果が紹介されている。特徴はなんといっても市民参加。発掘はもちろん運営もすべて参加者が自前で行っているのだ。組織図を覗いてみると、7つの専門班(地質、哺乳類、人類考古、生痕、植物、貝類、昆虫)と並んで、おやつ係、おやつ配り係まである!親子3世代がそろって参加されることも珍しくないとのこと。初期に発掘されたナウマンゾウやヤベオオツノジカの化石に加えて、石器が出たことから野尻湖人発見の可能性も秘めているという。ロマンや〜。さらに、野尻湖人はホモ・サピエンスより古い人類かもしれないという。ロマンありすぎる。「年齢に関係なく、自然に対して目を輝かせつづけられる人は幸せ者だといえましょう。幸せ者の集まりが野尻湖発掘参加者といえるかもしれません。」わたしも参加したい!

 お薦め度:★★★  対象:ロマンが大好きなひと
【中条武司 20181025】
●「野尻湖のナウマンゾウ」野尻湖発掘調査団著、新日本出版社

 長野県北部・野尻湖周辺で、50年以上市民と共に行ってきた「野尻湖発掘」。アマチュアが中心となって、発掘の運営や研究、そして普及と様々な活動を行ってきた。特に地質や考古学に無縁の老若男女に発掘という研究作業現場を体験してもらい、そしてその興味を広げてもらうという点では、その意義は高かったに違いない。しかし本書では、では野尻湖発掘でどのような成果が出たのかという点では掘り下げが足らないし、きっと究極に目指しているそれらの総合化については不十分と言わざる得ない。

 お薦め度:★★  対象:市民調査のいちスタイルを知りたい人に
【萩野哲 20180514】
●「野尻湖のナウマンゾウ」野尻湖発掘調査団著、新日本出版社

 野尻湖の旧石器時代遺跡調査は1961年に始まり、半世紀を経た今も続いている。野尻湖の遺跡ではナウマンゾウとヤベオオツノジカの2種が特異的・高密度の一定条件で見つかるため、「野尻湖人」が獲物を解体したキルサイトだったことがわかってきた。しかし、「野尻湖人」は誰だったのかという最大の謎が今も残されている。この調査の最大の特徴は、多数の市民が参加して実践されていることである。2年に1回の実地調査では数百人の参加者が組織的に配され、効率的に運営されていることが、本書を読むとよくわかる。今後も調査は継続され、いつの日か、野尻個人の謎が解明されるのだろう。

 お薦め度:★★★  対象:古代人はどのような生活をしていたのか、野尻湖を介して知りたい人
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