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本の紹介「なぜ蚊は人を襲うのか」

「なぜ蚊は人を襲うのか」嘉糠洋陸著、岩波科学ライブラリー、2016年7月、ISBN978-4-00-029651-9、1200円+税


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【萩野哲 20161026】【公開用】
●「なぜ蚊は人を襲うのか」嘉糠洋陸著、岩波科学ライブラリー

 現在、デング熱やジカ熱の蔓延のニュースを聞く機会が増え、蚊が媒介する病気は文明国ではほとんど撲滅されたと楽観視できない状況になってきている。そのようなご時世に、タイトルを見て読みたくなる1冊。まず、蚊が吸血する標的を発見するには@二酸化炭素(遠距離)、A臭い(中距離)、B熱(短距離)の3大要因があることを説明している。リンバーガーチーズの臭いはハマダラカを誘引することを見出した研究者はイグノーベル賞を受賞したことなどが面白く紹介されている。蚊が媒介する病気および蚊と人との闘いについて2章が割かれており、マラリア原虫の発見の歴史や、現在は人の過密が進んでおり危機的状況であることに警鐘が鳴らされている。コラムも読んで楽しい。ところで、著者は蚊を愛しており、しばしば自分の血を吸わせている場面が散見される。

 お薦め度:★★★  対象:デング熱などに罹りたくない人
【森住奈穂 20161027】
●「なぜ蚊は人を襲うのか」嘉糠洋陸著、岩波科学ライブラリー

 蚊を好きな人なんていないだろう。刺されたあとのあのかゆみ、就寝中のあの羽音。思い出すだけでイライラが募る。と思っていたら、研究者は違うらしい。著者はよく“食事”をふるまうらしい。そして「私の研究室の可愛い蚊たち」なんて呼んでいる!蚊の本場(?)アフリカやアマゾン、アラスカでは、一晩に200回以上血を吸われることが珍しくなく、手で一回で殺した非公式世界記録は78匹、なんていう怖ろしい数字が紹介される。蚊は病気の運び屋でもある。日本でも平清盛はマラリアで亡くなったらしいし、デング熱やジカ熱の流行は記憶に新しい。蚊帳に殺虫剤、最近では遺伝子操作など、蚊と人類とは闘いの歴史にあるのだが、「蚊を知れば、本当の悪者である病原体をきっと追い出せるはず」と著者は結んでいる。

 お薦め度:★★★★  対象:蚊に刺されたことのあるひと
【和田岳 20161028】
●「なぜ蚊は人を襲うのか」嘉糠洋陸著、岩波科学ライブラリー

 デング熱、マラリア、フィラリア。蚊はしばしば恐ろしい感染症の媒介者となる。著者は、蚊の生態・行動を調べることから、感染症対策を行うという研究者らしい。西アフリカからアマゾンまで世界をまたにかけて蚊を採ってまわる著者の仕事が紹介され、その合間に蚊の生態が語られる。
 蚊についての小ネタをいろいろ仕入れられる。蚊が目指してくるのは、二酸化炭素(遠距離)、匂い(中距離)、熱(短距離)。足の悪臭がハマダラカを誘引する。蚊に刺されて痒いのは一種のアレルギー反応なので、いままで経験したことのない外国の蚊に刺されても痒くない。蚊に刺されまくると減感作が起こって、アレルギー反応は起きず、痒くない。

 お薦め度:★★  対象:蚊が気になる人
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