友の会読書サークルBooks

本の紹介「なぜイノシシは増え、コウノトリは減ったのか」

「なぜイノシシは増え、コウノトリは減ったのか」平田剛士著、平凡社新書、2007年3月、ISBN4-582-85365-X、740円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。

[トップページ][本の紹介][会合の記録]


【魚住敏治 20070627】【公開用】
●「なぜイノシシは増え、コウノトリは減ったのか」平田剛士著、平凡社新書

 動物との共存の方法論を示してくれたり、原因究明するための本ではありません。で全国色々な地域でおこっている問題を、バランスよく紹介してくれていますし、それぞれのケースについて、どのような取組がなされているか、成果はあがっているのか、問題点は、どの方向に進もうとしているのかなどが、ざっと理解できます。
 文章は読みやすく、それぞれの章の関連もはっきりしていて、筆者の述べているフィードバック管理の重要さもよくわかります。その意味ではおすすめ本です。
 でも最後まで読んで、なんとなく違和感を覚えるのは、価値観が最初にあって書かれていて、やはり記事だという感じがするからでしょうか。

 お薦め度:★★★  対象:高校生以上

【福西勝之 20070629】
●「なぜイノシシは増え、コウノトリは減ったのか」平田剛士著、平凡社新書

 地域の生活・生産のシステムを昔に近い形に変えることにより絶滅したコウノトリを再導入し、地域のシンボルとして共生した事例と耕作放棄地が増えることにより、繁殖環境が良好となり増加したイノシシをタイトルとしているが、イトウやツキノワグマ、オジロワシ、オオマルハナバチ、さらには大学という枠組みを越えて、地域社会と連携した多様な生物環境保全・創出の取り組みを紹介している。中山間地域における人口減少が野生動物と人間生活との境界領域をあいまいにした事や「狩猟圧」がイノシシやシカなどの「野生動物保護管理に欠かせないツール」であるが、捕殺した後の適切な処理が課題(狩猟者の質や経済性など)となっている。あるいはトマトを食べれば、トマトジュースを飲めばセイヨウオオマルハナバチと無縁ではないことなど幅広く問題提起と解決の糸口を模索している状況を紹介している。

 お薦め度:★★★  対象:野生動物との付き合い方に悩んでいる人

【和田岳 20070629】
●「なぜイノシシは増え、コウノトリは減ったのか」平田剛士著、平凡社新書

 ダムの撤去やコウノトリの野生復帰に取り組む現場の抱える問題からはじまり、ツキノワグマとの共存の道、地球にやさしいはずの風車が抱える問題、セイヨウオオマルハナバチやアライグマといった外来生物との関わりなど、日本の生物多様性の現状を報告したルポ。ここ数年のホットな話題が並ぶ。
 無駄なダムを撤去すればそれで済むわけではない。コウノトリを飼育下で増やして放したとしても、野生のコウノトリがすぐに復活するわけではない。地球にやさしいクリーンエネルギーの風車が、多くの鳥を殺している。生物多様性を守る試みは、なかなか一筋縄ではいかない。一見よさそうに思えるやり方が、思わぬ問題を引き起こしたりもすることがよくわかる。
 果たして日本の生物多様性は守れるのか? 「キューダイ方式が里山を救う?」のか?

 お薦め度:★★★  対象:日本の自然環境に関心のある人

[トップページ][本の紹介][会合の記録]