友の会読書サークルBooks

本の紹介「ナメクジの言い分」

「ナメクジの言い分」足立則夫著、岩波科学ライブラリー、2012年10月、ISBN978-4-00-029598-7、1200円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。

[トップページ][本の紹介][会合の記録]


【釋知恵子 20121219】【公開用】
●「ナメクジの言い分」足立則夫著、岩波科学ライブラリー

 「ナメクジの言い分」というタイトルと、岩波科学ライブラリーだからと惹かれて手にとったが、読後感が残らない。作者は、元新聞記者で、文章はわかりやすいけれど、いかんせん専門的でもないし、ナメクジのことを総花的に集めた事典でもない。目撃情報からのナメクジマップといっても、知り合いに頼んだだけという印象が拭えず、文学作品に出てくるナメクジを紹介するといっても、ごく一部しか拾っていないじゃないかと思ってしまう。元記者なら、もっと自分の疑問を突き進み、実験するとか、取材するとか、ナメクジのことをつきつめ分かる喜びを伝えてほしい。せっかくおもしろい題材なのに、残念。

 お薦め度:★★  対象:科学的なエッセイをどう書けばいいのに。考えたい人に

【萩野哲 20121216】
●「ナメクジの言い分」足立則夫著、岩波科学ライブラリー

 ナメクジって何?という、一般的には嫌われ者の動物に対する一般の人たちの反応から、本書は始まっている。でもね、ほんとうはナメクジはこうなんだよ、という回答を期待して読んだ人には、かなり期待外れ。著者は「ナメコロジー研究会」なるものを立ち上げ、その会員のネットワークのおかげで、アンケートに基づいた日本全国のナメクジ分布図を作成している。これが本書の目玉である。しかしその分布図すらも、結構がんばってる人の偏りにより、よい所はよいが、抜けの多い所も多く、とても完成品とは言えないように思える。ほんとうに日本のナメクジはこれだけなの?という感じ。その他の項目ではほとんどが他書からの引用であり、その文献数も少なく、雑学の範囲にとどまっている。従って、ナメクジを嫌いでもない動物として扱える人にとっては、やや不満が残る一冊と断言できる。

 お薦め度:★★  対象:ナメクジが嫌いな人

【和田岳 20121221】
●「ナメクジの言い分」足立則夫著、岩波科学ライブラリー

 著者はナメコロジ−研究会の創設者。といっても一人でやってるだけらしい。自然科学が本職ではなく、でも大学の講議でナメクジを取り上げたりする元ジャーナリスト。趣味の延長で関わってきたナメクジについて記した本。
 ナメクジ研究者ではないので、基本は自分が読んだ本や経験に基づく感想がつづられる。ただナメクジについて著者が疑問に思ったことについて、少し引用して紹介される。唯一の面白いのは、日本各地、さらには海外の友人・知人からの情報に基づいて作られたナメクジの分布図。日本に本州にも市街地周辺にも、こんなにたくさんの種類のナメクジがいたとは知らなかった。

 お薦め度:★★  対象:日本にどんなナメクジがいるか軽く知りたい人

[トップページ][本の紹介][会合の記録]