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本の紹介「ミミズと土」

「ミミズと土」チャールズ・ダーウィン著、平凡社ライブラリー、1994年6月、ISBN4-582-76056-2、1165円+税


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【石田惣 20061222】【公開用】
●「ミミズと土」チャールズ・ダーウィン著、平凡社ライブラリー

 ダーウィンが亡くなる前年の1881年、彼が最後に書き上げた本の主題は「ミミズと土」。彼の鋭い観察眼は、まずミミズの消化器官の図解からはじまる。その眼は少しずつズームアウトする。ミミズが餌を食べ、糞を出し、地表にたまり、遺跡を埋め、さらに土壌を侵食し・・・ちっぽけなミミズが、実は長い年月を経て陸上の景観形成に貢献していることを、40年にわたる観察から丹念に推論する。つまり、これは単なるミミズのモノグラフではない。地球史をライフワークとした彼が、ミミズの糞からその解明を試みたという、研究の集大成といえる。果たして現代の生物学者は、こんな縦横な視点を持つ遺作をものせるだろうか。あらゆる学問が細分化し、ごく短期間で成果を求めようとする今日、本書は決して古典ではなく、むしろ新鮮な輝きを誇っている。

 お薦め度:★★★  対象:福音館の「ダーウィンのミミズの研究」を読んで興味を持った人に

【六車恭子 20061219】
●「ミミズと土」チャールズ・ダーウィン著、平凡社ライブラリー

 うっかりこの本をいつものように初頁から読み始めると、挫折してしまうかもしれません。この本に関してはスティヴン・J・グールドの心憎い解説「小さな動物に託された大きなテーマ」から読むことをお薦めします。ダーウィンを知り尽くした彼の案内があって初めてなぜ生涯の締めくくりにミミズの本なのかが了解できるというものです。
人類が出現するはるか以前から、土地はミミズによってきちんと耕やされ続けている!このような下等な体制をもつ動物で、世界の歴史の中でそんな重要な役割を果たしたものが他にあっただろうか?だからこそダーウィンは40年もの間ミミズの習性を見つめるという仕事を選んだのかもしれません。肥沃土層の形成に果たしているミミズの役割を述べたのが本書の主題であり、肥沃土はつねに同じだがつねに変化していることを科学的に証明しようとした力業に出会えるのも本書だ。

 お薦め度:★★★  対象:研究の方法に関する序説をミミズで体験してみたい人

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