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本の紹介「「幻の鳥」オオトラツグミはキョローンと鳴く」

「「幻の鳥」オオトラツグミはキョローンと鳴く」水田拓著、東海大学出版部、2016年12月、ISBN978-4-486-02118-6、2000円+税


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【萩野哲 20170417】【公開用】
●「「幻の鳥」オオトラツグミはキョローンと鳴く」水田拓著、東海大学出版部

 読後感想。オオトラツグミの情報は少なかった(未だ論文書いてないし、これで全部なのかも?)。著者も言っているように(思える)が、他の情報を入れてボリュームを膨らませた感がある。オオトラツグミが増えてきてよかったこと、奄美のミミズの種類が分からないことは分かった。しかし、もっとトラツグミ全体について掘り下げるか(論文化していないからできない?)、奄美の生物についてまとめるか(これも「奄美群島の自然史学」との重複を避けた?10年もすばらしい奄美にいるのに)、はじめからサンコウチョウやオオトラツグミなどの短編集にするとか、いろんな工夫ができたのではないか?

 お薦め度:★★  対象:いろんな生物を知りたい人
【冨永則子 20170420】
●「「幻の鳥」オオトラツグミはキョローンと鳴く」水田拓著、東海大学出版部

 タイトルは、もう編集者の勝利としか言いようがない。このタイトルに興味をもって読んでも肝心のオオトラツグミが第4章まで出てこない! 著者自身が前置きが長くなってしまったと悪びれることなく言ってるが、このシリーズは研究者になるまでの経緯を語っていくのでしかたないかぁ…。「幻の鳥」のカッコ書きの理由も最後の最期に証される。オオトラツグミもさることながら、生物多様性や絶滅危惧種の保護、外来種対策など自然保護をどう捉え、どのように実践していくのか考えさせられた。

 お薦め度:★★★  対象:生物多様性って何?って思ってるヒトに
【西本由佳 20170417】
●「「幻の鳥」オオトラツグミはキョローンと鳴く」水田拓著、東海大学出版部

 トラツグミは、その鳴き声を「ぬえ」と言われた大きなツグミ。大人しく臆病で、とろんとした目が愛らしい。本書で扱うのは、その亜種とされ、姿はほとんど同じながら、鳴き声が全く異なるオオトラツグミ。その鳴き声は「世界でいちばん美しい声」と称されることもあるという。奄美大島だけに住み、個体数が少なく、生態も謎だらけだったこの鳥を、著者や、奄美の自然に魅せられた人たちが、少しずつ明らかにしていく。その方法は地道の一言。自然を理解しようと思ったら、自然の中に身をおいて考えることが、いちばん近道なのかと感じさせられた。

 お薦め度:★★★  対象:森林浴の好きな人
【森住奈穂 20170420】
●「「幻の鳥」オオトラツグミはキョローンと鳴く」水田拓著、東海大学出版部

 結論から言うと、オオトラツグミは(今は)幻の鳥ではないということと、コトラツグミやーいということと、サンコウチョウの長い尾羽と色彩二型の謎に迫る話だった。サンコウチョウについては、タイやマダガスカルでの海外調査体験が、このシリーズらしく語られていて楽しく読めた。尾羽の長さがツバメと同様につがい外交尾に影響するものなのか、気になるところ。オオトラツグミについては、著者の現職が「保全」に携わる奄美野生生物保護センターの自然保護専門員であることから、10年をかけた生息状況と個体数のモニタリング調査が主に紹介されている。幻の鳥(だった)だけに生態の解明はこれからで、第5章に今後の課題が並べられている。

 お薦め度:★★★  対象:珍しい鳥に興味のあるひと
【和田岳 20170421】
●「「幻の鳥」オオトラツグミはキョローンと鳴く」水田拓著、東海大学出版部

 フィールドの生物学シリーズの一冊。著者は、学生時代は大阪市大で、サンコウチョウ類の研究をしていた。それが就職して奄美大島のオオトラツグミ調査に取り組むことに。
 その流れのまま、第1章から第3章は、静岡でのサンコウチョウ、タイでのカワリサンコウチョウ、マダガスカルでのマダガスカルサンコウチョウの調査の話。とくに第2章は、このシリーズらしい若者が右も左も判らない熱帯で調査に取り組む話。こういう展開好きなので、このパートを膨らませばよかったのに。第4章と第5章は、就職して奄美大島に赴きオオトラツグミの調査に取り組む話。地元の人たちとの連携で、オオトラツグミの生息状況と生態を明らかにしていく。
 前半と後半で別の話がまとまって読めるお得な一冊なんだけど、引っ付けたら単なる水田さんの半生記になっただけかも。

 お薦め度:★★  対象:サンコウチョウ類またはオオトラツグミに興味があれば
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