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本の紹介「幻のシロン・チーズを探せ」

「幻のシロン・チーズを探せ 熟成でダニが活躍するチーズ工房」島野智之著、八坂書房、2022年2月、ISBN978-4-89694-295-8、1800円+税


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【萩野哲 20221008】【公開用】
●「幻のシロン・チーズを探せ」島野智之著、八坂書房

 本書は、著者が過去の著作で何度も取り上げた“この”話題のみをじっくりと解き明かす。目的地は世界で3か所残っているダニ・チーズ製造工房であるミルベンケーゼ(ドイツ)、ミモレット(フランス)およびアーティズー(フランス)。これら各々の旅に1章ずつを充て、残りの2章にチーズとは何ぞや、ダニとは何ぞやの説明に充てている。あとはプロローグとエピローグ。チーズの章で、個人的にはあまり馴染みがなかったチーズの製法や種類についても一通りの知識が得られた。旅の章では各々の工房の豊富な写真の中の島野先生楽しそう。エピローグで、旅した工房のダニたちに遺伝的に差異がなかったことが明かされている。人間がチーズを作り始めてから1万年弱。著者はそんな短時間でチーズコナダニが進化したことに否定的だが、実際はどうなんだろう?

 お薦め度:★★★  対象:ヒトの食性の奥深さの一端を知りたい人
【西本由佳 20221015】
●「幻のシロン・チーズを探せ」島野智之著、八坂書房

 ダニの研究者が「ダニがつくる」チーズに夢中になってヨーロッパまで行ってチーズを探す本。ときどきチーズの歴史や、ダニの同定や、ダニと土壌と農業についても書いているけど、とにかく旅行記が楽しい。ダニとつくるチーズに魅せられた人々が丁寧にチーズを育てている様子や、語られる言葉のはしばしから感じられるダニ愛、チーズ愛がほっこりする。ダニがチーズにどんな作用をしてチーズがおいしくなるのか、科学的にはまだはっきりしていないらしいが、ダニとともにチーズをつくるための丁寧な仕事がおいしいチーズをつくっているという著者の言には納得。そのうちダニの作用も解明されてくると楽しいなと思う。

 お薦め度:★★★  対象:発酵みたいな微生物の作用した食べ物が好きな人
【森住奈穂 20221019】
●「幻のシロン・チーズを探せ」島野智之著、八坂書房

 西ヨーロッパの数カ所に、シロン(コナダニ)を使うチーズの熟成方法がある。チーズ大好きのダニ学者にとって、これは黙っちゃおれぬ。シロン・チーズを求めてドイツやフランスに飛んだ著者が出会ったのは、シロンを「ダニちゃん」と呼んで愛するチーズ工房の人間たちだった。
 ただ保存するだけではなく、表面に生えるカビをコントロールしながらチーズをより美味しく変化させる熟成という過程において、ダニちゃんは 大活躍しているはずだと調べてみた結果は果たして。
 同じ作り方でも工房ごとにチーズの味わいが異なるのは、固有の蔵付き酵母ならぬ蔵付きシロンがいるせい?シロンが直接チーズを美味しくしているの?チーズ大好きダニ学者の旅は続く。

 お薦め度:★★★  対象:食いしん坊
【和田岳 20221016】
●「幻のシロン・チーズを探せ」島野智之著、八坂書房

 シロンとはチーズコナダニのこと。ダニ研究者が、ダニを利用して熟成させるチーズを調べに、ドイツやフランスに行く。大部分はチーズを求めての旅行記の趣。
 ドイツでは、ミルベンケーゼ。フランスでは、ミモレットとアーティズー。チーズ工房を訪ねては、作ってるところを見せてもらい、熟成庫に入り込んでダニを採集し、チーズを味見して帰ってくる。
 合間に、ダニの解説、そしてチーズの解説。最後に採ってきたダニを調べる。どうも、チーズコナダニがチーズを美味しくしている訳ではなさそう、で終わった。不思議。とりあえずチーズを食べたくなった。

 お薦め度:★★★  対象:チーズ好き
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