友の会読書サークルBooks

本の紹介「嗅覚はどう進化してきたか」

「嗅覚はどう進化してきたか 生き物たちの匂いの世界」新村芳人著、岩波科学ライブラリー、2018年10月、ISBN978-4-00-029678-6、1400円+税

【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]

【西本由佳 20190221】【公開用】
●「嗅覚はどう進化してきたか」新村芳人著、岩波科学ライブラリー

 光を感じる受容体は4つ、そのうち色を見分けるためのものは3つ。だから3原色である赤・緑・青があればヒトが感じる色はすべて再現できるという。それに対して、においを感じる受容体は400あるらしい。しかも、一つのにおいに対していくつかの嗅覚受容体が組み合わさって信号を受け取る。そのため、においを感じるメカニズムはとても複雑だ。匂い分子の構造が少し変わっただけでも全く違うにおいに感じられる。そして匂い分子の構造をどう変えればヒトの感じるにおいがどう変わるか、いまだ予測することはできないという。生物がどのようににおいを感じ、それはどういう必要で進化してきたか、生物のもつ嗅覚受容体の数とその生活、そして実験から考察される。

 お薦め度:★★★  対象:においに興味のある人
【森住奈穂 20190222】
●「嗅覚はどう進化してきたか」新村芳人著、岩波科学ライブラリー

 嗅覚は不思議だ。私は布ものの匂いが大好きで、木綿でもウールでもついクンクン、スーハァしてしまう。なんなんでしょう、これ。ヒトには嗅覚受容体が約400個あり、その遺伝子を同数持っているという。視覚の遺伝子は4個、味覚でも30個しかないらしいのに。何をそんなに嗅ぎ分けて、それがどのように働いているのか、想像が膨らむなぁ。嗅覚受容体の発見は1991年。まだまだ分からないことが多いのだ。調べられた哺乳類の中で最も嗅覚受容体遺伝子を多くもつのはアフリカゾウ。マサイ族とカンバ族を嗅ぎ分けられるそう。食べ物の違いが体臭に現れるかららしいけど、それってヒトでもできることのような。ゾウは遠くからでも嗅ぎ分けられる、ということかな?著者の専門は分子進化学。遺伝子を解析して嗅覚の進化を探っている。具体的な事例をたくさん盛り込んでくれたら、もっと楽しく読めたのになぁ。

 お薦め度:★★  対象:匂いについて詳しくなりたいひと
【和田岳 20190222】
●「嗅覚はどう進化してきたか」新村芳人著、岩波科学ライブラリー

 嗅覚受容体遺伝子を対象に分子進化学研究者が、生き物たちの匂いの世界を紹介した本。のはずなんだけど…。
 まずは、乳香・没薬から始まり、麝香・龍涎香・霊猫香から香道まで。ヒトが愛でてきた香りの世界が紹介される。そこから匂いの基礎知識。どのように匂いを感じているのかを紹介しつつも、どんな分子がどんな匂いを持っているかは、ほぼ予測できないという残念なお知らせ。
 そしてようやく動物たちが出てくる。アジアゾウの匂いの識別能力の高さ。イヌの匂いへの感度の高さの謎、嗅覚を失ったイルカ類。で、霊長類は進化の過程で「視覚が発達した代わりに、嗅覚が退化した」という仮説を検証、ってゆうか、霊長類の系統樹に嗅覚受容体遺伝子の数をのっけてみる。
 いろいろと知らないことが書いてあって勉強になりつつも、タイトルに関係のあるパートは少なめ。タイトルを見て期待して読むと、肩すかしを食わされた感が…。

 お薦め度:★★  対象:嗅覚についての色々な蘊蓄を求めている人
[トップページ][本の紹介][会合の記録]