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本の紹介「極限に生きる植物」

「極限に生きる植物」増沢武弘著、中公新書、2002年8月、ISBN4-12-101654-8、940円+税


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【釋知恵子 20061222】【公開用】
●「極限に生きる植物」増沢武弘著、中公新書

 小さい頃に切手集めが流行った。集めた切手の中のお気に入りの一枚に、コマクサの切手がある。かわいい花だなあと思った。高山植物を知ったのはその切手がきっかけだった。
 この本の中には、高山をはじめ、砂漠、北極など過酷な自然の中で生きている植物たちがたくさん登場する。環境に適応するために植物たちは驚く技を秘めている。あるものは体に似合わない大きな花を太陽に向けて懸命に日をあび、あるものは岩場の間に太い根をのばし力強く生きる。美しい写真と簡潔な文章で、私にとっては、コマクサの切手がいっぱいつまった本だった。

 お薦め度:★★★ 対象:植物との出会いを求める人

【魚住敏治 20061221】
●「極限に生きる植物」増沢武弘著、中公新書

 本棚に置いておいて気の向いたときに手にとって好きなページを読むことが出来る便利な本です。
 もともと植物はそれぞれまわりの環境に合わせて生活しているのですが、それでもやはり本書に書かれてあるように極限の地でも形態をそれぞれに変化させ生きている様子を見せられると驚いてしまいます。
 出てくる植物一つ一つの写真や筆者の現地での体験談も理解への一助となっています。
 それにしてもこんな色々な地域に調査にでかけた体力と気力にビックリです。

 お薦め度:★★★  対象:植物の好きな方ならどなたでも

【加納康嗣 20061120】
●「極限に生きる植物」増沢武弘著、中公新書

 美しい写真、簡明でわかりやすい解説で非常に読みやすい。寒冷な高地や極地、乾燥した砂漠や土壌の不安定な火山灰地、石灰岩や蛇紋岩、カンラン岩など特殊な土壌環境が重複した極限地帯もあるが、そこに生きる植物たちの姿を紹介している。環境に適応し、見事に形を変え、巧みな戦略で生きぬいている姿は不思議そのものである。海岸砂漠の霧の通り道に出来る砂漠のお花畑(ロマノス)群落に、陸続きなのにそれぞれ固有に特殊化したノラナという植物が分化している面白さなども。 それにしても、アフリカやアンデス、ヒマラヤ高地の塔のようなかっこいい植物たち、レイムノビレ(セイタカダイオウ)、ボンボリトウヒレン、ジャイアントセネシオ、ジャイアントロベリア、ロベリアテレキー、センチュリープラントに会いたいものだ。なぜ円錐形や円筒形なのか、なぜそんなに大きいのか。なぜ突然そこにニョッキリと生えているのか?

 お薦め度:★★★★   対象:植物に関心のある大人、遠くへ旅行したい願望のある方

【高田みちよ 20061219】
●「極限に生きる植物」増沢武弘著、中公新書

 高山や砂漠、極地といった「極限」にだけ生きる植物は、どれもその極限を生き抜くすべを習得している。その技がまだ解明されていない種も多いが、本書では研究成果から、根の張り方、光合成の時期など、解明されているかぎりの解説をしてくれる。著者は富士山を中心に、世界各地の極限で、実際にその植物に対面し、簡潔な言葉で各種を紹介する。読者もその植物を目の当たりにしたような感覚を覚える、臨場感あふれる文章である。また、文章だけでなく、全ての種の美しい写真が添えられているのがうれしい。この写真、必ずタイトルの次のページに配置されているのは、読者に気を持たせるためだろうか?

 お薦め度:★★★★   対象:不思議好きの人に

【西川裕子 20070223】
●「極限に生きる植物」増沢武弘著、中公新書

 おとぎ話や冒険物語はそれが絵空事であればいっそう心のどこかに住み続けることがあります。ここに収録された極限に生きる植物たちは、可憐に清楚に厳かに、または猛々しく老獪に、彼らの存在そのものが事件であり奇跡に思われる。過酷な環境の試練が彼らを練り上げ無駄のない(?)形に導いた。地球生成のドラマがそこでは展開しているのだろうか。ガンコウランのとげのような葉の企み、パパベル・ラッポニクムのパラポラアンテナのような黄色い花びら、森林限界の高地にまるで卒塔婆のように屹立するプリスルコーンパインの威容、100年の夢に生きるセンチュリープラント・・・。地球上のどこかに彼らがいま生きていることを感じ取れる出会いを提供してくれる本だ。

 お薦め度:★★★   対象:いつかきっと、そんな気持ちをくすぐられたい人に

【六車恭子 20070223】
●「極限に生きる植物」増沢武弘著、中公新書

 おとぎ話や冒険物語はそれが絵空事であればいっそう心のどこかに住み続けることがあります。ここに収録された極限に生きる植物たちは、可憐に清楚に厳かに、または猛々しく老獪に、彼らの存在そのものが事件であり奇跡に思われる。過酷な環境の試練が彼らを練り上げ無駄のない(?)形に導いた。地球生成のドラマがそこでは展開しているのだろうか。ガンコウランのとげのような葉の企み、パパベル・ラッポニクムのパラポラアンテナのような黄色い花びら、森林限界の高地にまるで卒塔婆のように屹立するプリスルコーンパインの威容、100年の夢に生きるセンチュリープラント・・・。地球上のどこかに彼らがいま生きていることを感じ取れる出会いを提供してくれる本だ。

 お薦め度:★★★   対象:いつかきっと、そんな気持ちをくすぐられたい人に

【村山涼二 20061214】
●「極限に生きる植物」増沢武弘著、中公新書

 極限の世界、極寒(北極・南極・高地・北海道・富士山頂など)、低栄養、有害成分のある地域(橄欖岩とヒダカソウ)、水分の乏しい地域(アンデスの砂漠の霧の水分を利用するロアサウレンス)、僅かな太陽エネルギーを捕捉し虫たちを呼び込むヒマラヤの白い塔形の温室(レウムノビレ)等、美しい花、珍しい形態の植物が、けなげに種の保存に生きているさまが、美しい写真で見ることが出来る。増沢さんが、「しっかり生きよ」と励ましているような気持ちが写真の一枚一枚から伝わってくる。居ながら極地の自然がわかる。

 お薦め度:★★★★   対象:中学生以上廣く一般に

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