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本の紹介「巨大地震の科学と防災」

「巨大地震の科学と防災」金森博雄著、朝日選書、2013年12月、ISBN978-4-02-263012-4、1300円+税


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【西村寿雄 20140417】【公開用】
●「巨大地震の科学と防災」金森博雄著、朝日選書

 世界的な地震学者金森博雄氏にインタビューした話をまとめた本だが、金森氏の仕事や主張がよくまとめられている。金森氏は、長くアメリカにいて世界の地震学者と研究を共にした。金森氏はP波、S波だけでなしにすべての地震波を地震エネルギーとしてとらえ「モーメントマグニチュード」という概念を確立した。これは今では世界的なモーメントの基準になっている。2011年の東北大地震の時、気象庁は従来のマグニチュードで試算して大津波の発生を予言できなかった。金森氏は、大きな津波を引き起こす「津波地震」震源地の存在も明らかにした。その他、金森氏らが観測している長周期地震の解明は高層ビルなどの防災に生かされ始めている。また、「リアルタイム地震学」を提唱し、地震発生をより早く市民に知らせるシステム作りにも貢献している。従来の地震学の枠を超えた、科学と防災の地震学の現状がわかりやすくまとめられている。

 お薦め度:★★★★  対象:現代地震学に関心のある人

【岩坪幸子 20140309】
●「巨大地震の科学と防災」金森博雄著、朝日選書

 「これは読むべき本である」と強く勧められ手に取った。著者とされる金森博雄氏が書いたのではなく、取材を受け語った内容をAERA編集部の副編集長の瀬川茂子氏と関西大学社会安全学部准教授の林能成氏がまとめ構成した本である。金森博雄氏の地震学者になるまでの経歴も大変面白かった。地震学者になってからの研究スタイルも独特で地震波形にこだわりを持ち、とことん追求することで次々と成果を生み出していったことがよくわかる。地震は複雑で多様性を持ち、様々な条件でいかようにも変容すること、短期の予知は難しいが長期的な防災対策に生かすことで減災に貢献できるとある。地震から逃れることはできない日本で自分は何をすべきか考えなくてはと考えさせられた。

 お薦め度:★★★★  対象:地震に関心のある人、ない人

【中条武司 20140425】
●「巨大地震の科学と防災」金森博雄著、朝日選書

 カリフォルニア工科大学地震研究所所長まで務めた著者が、自身の研究史を振り返りつつ、巨大地震のメカニズムを解説している。著者の専門である地震波形の解析に説明の多くが割かれているにせよ、内容に特に目新しい部分はないが、インタビューの再構成から構成されているのでとても読みやすい。また、「短期的予測は不可能」と断言し、かつ長期的な予測や防災の重要性を強調している点は誠実さを感じさせる。
 しかし、アメリカに赴任して「英語を覚えるより先に、日本語を忘れた」ってすごいなあ。

 お薦め度:★★★  対象:プレート境界地震の外観を知りたい人向け人

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