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本の紹介「コウモリのふしぎ」

「コウモリのふしぎ 逆さまなのにもワケがある」船越公威・福井大・河合久仁子・吉行瑞子著、技術評論社、2007年7月、ISBN4-7741-3135-0、1580円+税


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【萩野哲 20071018】【公開用】
●「コウモリのふしぎ」船越公威・福井大・河合久仁子・吉行瑞子著、技術評論社

 コウモリについて、分類、生活環(生態)、エコーロケーション、繁殖、生理、冬眠のような普通に知りたい内容から、大変知りたい進化まで、コンパクトにまとめられた本。まず、コウモリは哺乳類5416種中1116種を擁す大所帯であることに驚く。18科各々の特徴が分布図入りで要領よくまとめられている。“変な顔”の解説も楽しい。飛翔法の解説も詳しい。極めつけの“進化”は最新の分子系統学の成果が盛り込まれており、他の哺乳類との関連も未解決の問題山積ながら興味深くよむことができる。グラビアの写真も大変見事。

 お薦め度:★★★★  対象:コウモリの全てを知りたい人

【加納康嗣 20071016】
●「コウモリのふしぎ」船越公威・福井大・河合久仁子・吉行瑞子著、技術評論社

 コウモリの科学情報満載で中途半端に関心があるものには少々下痢気味な脳髄になる。だだ流れで何も残っていない不快感がある。具体的な観察経過が少なく、項目が細分されているので、読み切るのに一苦労。しかし決してけなしているのではない。詳しすぎる贅沢に慣れていないだけである。
 面白かったのは、夜間の塒ナイトルースト。アブラで観察したことがあるのでコレコレと嬉しくなる。チスイコウモリが餌を取れなかった血縁関係にない個体に血を分ける、相互利他的行為、社会生物学でどう説明するか興味がある。食虫類に近縁と思っていたのに、馬や犬猫に近いなんて、驚き。コウモリの捕食を免れるためにシャクガ上科、ヤガ上科、スズメガ上科、メイガ上科など14科以上の鱗翅目が超音波をキャッチする耳器官を開発したという。昼行性の蝶は、コウモリの捕食を免れるために、活動の場を移したとまで言われる。コウモリは奥深い。

 お薦め度:★★★  対象:コウモリに情熱を持っている方

【和田岳 20071018】
●「コウモリのふしぎ」船越公威・福井大・河合久仁子・吉行瑞子著、技術評論社

 大勢で分担して、コウモリの分類、生態、行動、形態、系統とさまざまな側面を紹介した本。とくにエコーロケーション、社会行動、冬眠、系統関係は大きく取り上げられている。
 世界中のさまざまなコウモリ達が紹介されているので、それを眺めるだけでも楽しい。エコーロケーションの理屈は面倒なのであまり興味がない人はパスしてもいいかも。とにかく、コウモリについていろいろ載っていて、日本語で気楽に読める本としては一番詳しいコウモリ本。

 お薦め度:★★★  対象:コウモリ好き、及び哺乳類の生態・系統・エコーロケーションに興味のある人

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