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本の紹介「昆虫はすごい」

「昆虫はすごい」丸山宗利著、光文社新書、2014年8月、ISBN978-4-334-03813-7、780円+税


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【西村寿雄 20150224】【公開用】
●「昆虫はすごい」丸山宗利著、光文社新書

 100万種以上はこの地球上にいるという昆虫、彼らの驚くべき習性や能力、生きる知恵をこの本は存分に語っている。小さな虫たちも「そこまでやっているのか」というのが読後の感想である。捉まえた獲物をすかさず麻酔させ鮮度を落とさせないくふう、得意なフェロモンを効果的に発せられるように改造されたガの触覚、摂氏100度ものおならを出して相手を攻撃するゴミムシ、空調完備の巨大な「蟻塚」を作るシロアリ等々枚挙にいとまない。もう8000万年も前から食料を「栽培」して食べている蟻もいる。「虫けら」とは侮れない「ムシ」たちの多様な驚くべき習性が紹介されている。

 お薦め度:★★★★  対象:虫好き、虫嫌いの人

【萩野哲 20141214】
●「昆虫はすごい」丸山宗利著、光文社新書

 死から白骨化までに人体に起こる変化に昆虫が果たす役割の大きさに気付いた著者は、その分野の将来性を確信した。少数の仲間とともに地道に死体の腐乱過程についてのデータを集め、その過程に新鮮期、膨満期、腐乱期、後腐乱期、そして白骨期の5段階を認めた。死体が地面に接している時と宙ぶらりんの時、梱包されている場合や水につかっている時など、様々な場合でこれらの過程には一定の法則が認められた。などなど、著者は多くの事例を紹介し、次第に自分たちの手法が法医学の現場で信頼を得ていったことを報告している。日本でもそのうち、ホネホネ団のメンバーから法医学に貢献する人材が誕生するのでは? というような想像をしてしまった。

 お薦め度:★★★  対象:推理と昆虫が好きな人

【森住奈穂 20150225】
●「昆虫はすごい」丸山宗利著、光文社新書
昆虫のすごさに魅せられ、「話そうとしていろいろな事象を思い出すと胸が熱くなるほど」という昆虫学者の著者が、その大好きな事象を選りすぐり、また最近の知見も含めて、これでもかと詰め込んだ一冊。擬態や寄生といったよく知られる事象でも、マニアックな事例を紹介。「化学擬態(体表の成分を植物に似せ、アリなど嗅覚で餌を探す天敵をあざむく)」や、「ゾンビゴキブリ(ハチが毒を注入して作り出す、歩けるが逃げないゴキブリ。巣に誘導してその体に産卵する)」などなど、えげつな〜い世界が展開される。虫はヒトに比べると極端に小さいせいか軽んじられがちだけれど、個々の能力は、ヒトよりも優れているものが大勢いる。わが身を顧みれば「昆虫はすごい」と唸るしかないのです。

 お薦め度:★★★  対象:ヒトだって一介の生物にすぎないんだから。謙虚な気持ちを持ちたいひと

【和田岳 20141219】
●「昆虫はすごい」丸山宗利著、光文社新書

 昆虫全般に詳しい著者による昆虫のさまざまな「すごい!」を並べた1冊。なんやこのタイトルは?と思いながら手にとったが、読み終わってみると、なるほど昆虫はすごいと思わせるからすごい。
 各章には、収穫する、旅をする、農業する、牧畜する、戦争する、奴隷を使う、昆虫とは思えないフレーズが並ぶ。ゾンビゴキブリを使うセアカアナバチ、ハナカメムシやコクヌストモドキの同性愛、トリカヘチャタテの雌雄逆転、キンウワバトビコバチの兵隊幼虫。アリマキバチに寄生するツヤセイボウのトロイの木馬作戦、バクダンオオアリの自爆攻撃。シワアリの女王の背中で生活するオンブアリ。これだけでは何のことか分からないけど、興味深い話題だらけ。ちなみに最小の昆虫はチャタテムシの卵の寄生蜂の雄で、0.139mmだそう。すごい小さい!

 お薦め度:★★★★  対象:虫好き、生き物の生態に興味のある人

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