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本の紹介「きっと誰かに教えたくなる蚊学入門」

「きっと誰かに教えたくなる蚊学入門 知って遊んで闘って」一盛和世編著、緑書房、2021年6月、ISBN978-4-89531-596-8、1800円+税


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【森住奈穂 20211021】【公開用】
●「きっと誰かに教えたくなる蚊学入門」一盛和世編著、緑書房

 私は例え相手がGやムカデであってもソッと見ないフリをしてやり過ごすのだけれど、蚊だけは。蚊だけはほっておけない。敢えての自分の腕を差し出し、囮作戦で必殺に血道をあげる。それもこれも蚊は私をめがけて飛んでくるし、あの痒みにはイライラさせられる!そんな憎まれっ子の蚊だけれど、雄と雌が羽音で和音のハーモニーを奏でるなんて、血っとも知らなかった。蚊取り線香の開発物語はそのまま朝ドラになりそうだし、夏の風物詩として浮世絵での存在感もすごい。解剖の様子まで紹介されており、大変興味深い。でもやっぱり今度見つけたら、仕留めずにはおけない。

 お薦め度:★★★  対象:蚊をパチンとしたことのあるひと
【西村寿雄 20211020】
●「きっと誰かに教えたくなる蚊学入門」一盛和世編著、緑書房

 この本は2019年の「蚊の世界」展の資料が元になっている。多くの蚊を愛し、蚊を研究し、蚊と闘い、蚊を仕事としている人が書いた編著である。大学の研究者、感染症研究所の研究者、病院の医師、企業の研究者等25人が書いている。まず、口絵にある蚊の写真がすばらしい。蚊とはこんな生き物だったかと改めてみることができる。本文は、蚊の生態から、蚊の防除史、蚊による感染症の話、蚊を調べる手段などが各専門家によって書かれている。はては折り紙の蚊、蚊の歌もある。長く人類を悩ましてきた蚊と付き合ってきた人類の研究史でもある。読みやすく編集されている。

 お薦め度:★★★  対象:蚊になやまされてきた人
【萩野哲 20210829】
●「きっと誰かに教えたくなる蚊学入門」一盛和世編著、緑書房

 本書は蚊の分類、構造、生活史、生態、そして編者の専門である蚊による感染症や蚊の防除について簡潔にまとめている。蚊はゴキブリと並んで(理由は異なるけれど)最も嫌われる昆虫の一群であろう。だが、数々の感染症によって蚊が人類やその他の動物を脅かしてきた規模はゴキブリの比ではないだろう。マラリアの年間罹患者数は229百万人、死者数は40.9万人、日本国内での感染はないものの、輸入マラリアは50-60例知られているそうだ。イヌフィラリア症はかつて犬の死亡の主原因であったが、予防薬の開発により犬の寿命が倍増した。比較的南方に限定されていた蚊による感染症が地球温暖化により北上する危惧がある。そんな嫌われ者の蚊でも、著者にとっては好ましい対象であることが本書の様々な箇所で散見される。

 お薦め度:★★★  対象:蚊に刺されたくない人
【和田岳 20211011】
●「きっと誰かに教えたくなる蚊学入門」一盛和世編著、緑書房

 蚊の研究者や医者から、製薬会社やペストコントロールの業界人まで、28人が蚊について紹介した一冊。ただし、蚊という生きものの多様性というより、衛生害虫としての蚊を紹介。蚊が運ぶ感染症を含め、蚊の衛生問題とその対策が中心。
 浮世絵から蚊取り線香・蚊取り器の変遷など、血を吸う蚊と人間との戦いの歴史は面白い。デング熱、マラリア、人のフィラリア症、イヌのフィラリア症、ジカウイルス感染症、蚊が運ぶ感染症は勉強になる。データを示しての蚊に刺されやすい人、刺されにくい人の話は興味深いんだけど、生きた蚊のつかまえ方、飼い方、解剖の仕方に、誰が興味を持つんだろう?という疑問も。

 お薦め度:★★  対象:蚊が運ぶ病気が気になる人
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