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本の紹介「結局、ウナギは食べていいのか問題」

「結局、ウナギは食べていいのか問題」海部健三著、岩波科学ライブラリー、2019年7月、ISBN978-4-00-029686-1、1200円+税

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【萩野哲 20190920】【公開用】
●「結局、ウナギは食べていいのか問題」海部健三著、岩波科学ライブラリー

 絶滅危惧種のウナギを食べてよいのか、Q&Aで考える本。
 Q:ニホンウナギは数100万匹/年も食べられているではないか。こんなたくさんいる魚が絶滅するのか?⇒A :可能性はある(判断材料となるデータが少なすぎる)。漁獲規制も緩すぎる。
 Q:法律違反のウナギが売られているのは本当か?⇒A:本当。密漁や未報告のウナギが何と7 割を占める。漁獲・流通システムが確立しておらず、罰則が緩すぎるのが原因。
 Q:消費者として積極的に選ぶべきウナギとは?⇒A:明確なゴールと客観性を持つ店のウナギを選択すること。特にシラスウナギのトレーサビリティについて。
などなど。
 日本ではまだまだ頭の固い行政(温暖化対策、河川構造物、魚政など、主観的優先順位でしか動かない)、民度の低い業界(密漁容認)、無知で大人しい庶民(たくさんいる動物は絶滅しないとか、放流は正しいとか信じており、特に積極的対策を取らない)などに依り、ウナギの前途は明るくないらしい。

 お薦め度:★★★★  対象:いつまでもウナギを食べ続けたい人
【森住奈穂 20191024】
●「結局、ウナギは食べていいのか問題」海部健三著、岩波科学ライブラリー

 環境省のレッドリストにウナギが名を連ねたのは2013年。以来「ウナギが食べられなくなるかも」と度々マスコミに取り上げられるも、世論の盛り上がりは今ひとつ。本書にはウナギを取り巻く様々な問題と、消費者がとるべき行動指針が紹介されている。国内で養殖されているウナギの半分から7割程度が違法に流通したシラスウナギから育てられているそう。しかし、売られているウナギからそれを区別する術がない。消費者が判断できるようにするための仕組み作りが必須となる。とにかくデータがないらしい。業者は協力したがらないし、研究者との癒着もあるらしい。根深い。消費者が無関心のままだと本当に絶滅しちゃうよー!

 お薦め度:★★★★  対象:ウナギを食べていいのか、モヤモヤしているひと
【和田岳 20191009】
●「結局、ウナギは食べていいのか問題」海部健三著、岩波科学ライブラリー

 ウナギの保全、あるいは持続的な利用に関わる問いを、Q&A形式で要領よく解説してくれる。ウナギは本当に絶滅の恐れがあるのか、ウナギを食べてはダメなのか、違法に流通しているウナギの存在、完全養殖や放流はウナギを守る効果があるのか、そして消費者にできることは何か。
 ウナギの持続的な利用のために、というスタンスではあるが、データや引用をきちんと引いて、客観的にそれぞれの疑問に答えてくれる。ただし、結局、ウナギを食べて良いのかについては答えてくれない。それは読者それぞれが自分で考えること。そして考える材料はしっかり示してくれる。
 要は、違法行為をきちんと取り締まり、持続可能な捕獲量の上限を決めて、ウナギが棲みやすい河川環境を整える。とても当たり前な話。ウナギを食いたいなら、シラスウナギの不漁を嘆く前に、やることがあるやろ。と正直に書いてあるので、各方面にたくさんの敵を作ってるんじゃないかと心配。とりあえず一消費者として、出来ることをしようと思う。

 お薦め度:★★★★  対象:これからもウナギを食べ続けたい人
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