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本の紹介「科学とはなにか」

「科学とはなにか 新しい科学論、いま必要な三つの視点」佐倉統著、講談社ブルーバックス、2020年12月、ISBN978-4-06-522142-6、1000円+税


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【和田岳 20210827】【公開用】
●「科学とはなにか」佐倉統著、講談社ブルーバックス

 まず「科学とはなにか」という大上段のタイトル。中身はタイトルに見合ってるのか?と心配になるが、ちゃんと科学とはなにか、科学とは誰のためのものか、科学といかに付き合うかが論じられる。そんな一冊。
 京都大学の霊長類研究所でサルを研究して博士号をとる。そんな著者が、自分は科学者ではない。だから科学の外から科学とはなにかを考える、というスタンスに立ってるのが面白い。
 ヨーロッパの歴史を中心に、科学を振り返り、統治者のための科学から市民のための科学への変化。“人のために役立ってこそ科学” と“知のための科学”という2つのスタンス。17世紀に科学的方法が確立し、18世紀から19世紀に科学者という職がひろまり、パトロンが国家から民間に移った20世紀という流れが紹介される。
 そして、市民のための科学の時代。それだけに科学的事実の取り扱い方が重要になった21世紀。科学とどのように付き合うべきかが考察される。かならずしもすっきりした結論はでないけど、考える材料はたくさんある。

 お薦め度:★★★  対象:科学とはなにか判ってるつもりの人
【西村寿雄 20210819】
●「科学とはなにか」佐倉統著、講談社ブルーバックス

 「科学とは何か」を多様に論述している。もともと科学とは社会的に認められてこそ「真理」だと言われてきた側面がある。科学技術についても「現代の科学技術は社会との関係なしには成り立たない」、「世の中の役に立ってこその科学」と説く。科学技術と社会性について多く書いている。また、同じ事実でも、科学の事実は「仮説−演繹のサイクルの繰り返しが求められる」と説き、たんなる事実とは区別している。国家とかかわって起きる「科学技術と社会の関係が、個人の責任や単純な善悪では語れない」と例をあげて語る。「福島の放射線量」等については科学的には安全値を示しても、人々の心は単純に動かない面があることも書く。日本人は文化的側面が強いので科学的側面の出し方にも工夫の余地がある。博物館等の運営のありかた等にもかかわってくることがらも説く。

 お薦め度:★★★  対象:科学観に関心のある大人
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