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本の紹介「カビ図鑑」

「カビ図鑑 野外で探す微生物の不思議」細矢剛・出川洋介・勝本謙著・伊沢正名写真、全国農村教育協会、2010年7月、ISBN978-4-88137-153-4、2500円+税


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【多田裕巳子 20101029】【公開用】
●「カビ図鑑」細矢剛・出川洋介・勝本謙著・伊沢正名写真、全国農村教育協会

 表紙デザインはカワイく、コドモ向け?という感じながら、中身は探究心を満足させてくれる一冊。カビといえば、お風呂場や数日間放置したお弁当箱、忘れてたミカンなど、嫌われ者のイメージしかないが、ライフサイクルの面白さ、野外で見られるいろいろな姿、生活に役立つ姿などをわかりやすく解説。「カビさん、今まで誤解してましたー」と素直な気持ちになれる。
 解説は専門的な部分もあり内容は濃い目だが、図鑑ならではの多数の写真のおかげで苦しくない。文字嫌いの人も騙されて読みそう。
 この本の注目ポイントは、ざくっと読んで、「何かやってみたいっ!」と思った読者の心を離さないところ。「水の中のカビを釣る」、「土の中からカビを呼び出す」、「動物の糞に生えるカビを観察する」といった、好奇心を刺激する数々の実験観察の方法がいろいろ詳しく載っている。
 さらに、カビ集めのノウハウにコツ、観察の仕方、記録のつけ方、写真撮影のわかりやすい説明もあり、カビの世界へはまっていきそう。

 お薦め度:★★★  対象:小学校高学年くらいから大人まで

【六車恭子 20101029】
●「カビ図鑑」細矢剛・出川洋介・勝本謙著・伊沢正名写真、全国農村教育協会

 水回りにはびこるカビ、密かに冷蔵庫で繁殖しているカビ・・・。人の暮らしから見ると悪玉に見られがちですが、自然界で彼らが果たす役割を思えば、180度の思考転換が必要だろうか。生物遺体を分解し、動植物と共生して、栄養のやりとりをする。増えすぎた生物を間引きし、環境を調和する役割を果たす重要な存在だ、という。
 きのこと同じ仲間で、「腐生」「寄生」「共生」の三つのライフスタイルの各ステージで観察することが出来るその生活誌を伊沢氏の写真が身近に引き寄せてくれる異色図鑑である。大地の下や、植物の葉先で、カビたちが演じる仕事は我々も腰を屈めて目を凝らさなければならなさそう・・・。カビの知恵に負けじと、人もアスピリンを抽出し、かつお節や味噌醤油、日本酒や上質のワインを生み出して来た。これからもカビと行き来することで人の暮らしも大いに益するだろう、読後にしみじみ思えた。

 お薦め度:★★★  対象:きのこ好きはぜひ、堆肥づくりをしているひともぜひ

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