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本の紹介「カビの取扱説明」

「カビの取扱説明書」浜田信夫著、角川書店、2020年6月、ISBN978-4-04-400548-1、1600円+税


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【西本由佳 20201213】【公開用】
●「カビの取扱説明書」浜田信夫著、角川書店

 カビはあちこちにひそんでいる。エアコンや洗濯機にいるのは予想のつく範囲だが、窓のサッシやカメラのレンズやスマホ、吹奏楽の楽器などにもいる。中毒症状を起こしたり、アレルギーの原因にもなる。一方で、酵母や麹など、パンや酒やしょうゆを作るのに使われるものもある。火事で大発生するアカパンカビは、発芽に熱という刺激が必要だという。また、合成界面活性剤のある所を好むカビは、自然のなかではどこにいるか謎だったが、調査によって石灰岩地帯が本来の生息地であるとわかったという。家の中に勝手に発生する厄介者という先入観さえなければ、生きものとして興味深い存在かもしれない。

 お薦め度:★★★  対象:潔癖症でなければ
【冨永則子 20210122】
●「カビの取扱説明書」浜田信夫著、角川書店

 日々の暮らしの中で、たびたび目にするカビ。なかなかの厄介者だが、一方では“食べるカビ”として様々な食品がもてはやされている。カビに対する人々の関心がどのように変わってきたのか、その歴史と現状を紹介していく。本文中に使われる図説は全てイラストで、ほんのすこし簡易な表が出てくるぐらい。専門書に必ずある実体写真や細かい数字のグラフもない。そういう意味でも専門書に抵抗感のある人にも読みやすい。生物学では微生物に分類されるカビは、キノコや酵母の仲間だ。カビは放置していたパンやお餅、掃除をサボった排水口に潜んでいるものと思っていたが、キノコや地衣類のように自然界に存在し、条件が揃うと発生する生物なんだと改めて納得した。図説の登場する浜田さんのイラストは、ご本人に似ていて可愛らしい。

 お薦め度:★★★★  対象:冷蔵庫に入れてた食品にカビが付いていてガッカリしたことのある人に
【和田岳 20210221】
●「カビの取扱説明書」浜田信夫著、角川書店

 「人類とカビの歴史」「カビはすごい!」に続く、浜田のカビ本第3弾。「人類とカビの歴史」は、食品、洗濯機、エアコン、浴室、居間、窓や壁のカビの話だった。その文庫版に近い「カビはすごい!」では、食品や家の中のカビの話は同じで、カビ毒、水虫、アレルギーといった話が加わっている。
 第3弾の本作はと言えば、基礎知識は共通で、定番の洗濯機やエアコンに加え、冷蔵庫や食洗機が加わった。さらに家の中でも、スマホケースや文具、楽器のカビの話はこれが初出。もう家の中はカビだらけ。家の中のカビの由来の話(石灰岩帯)も最近のネタ。カビ毒の話や、人とカビの関係の話も章立てされて、3作の中で一番視野は広いかと。

 お薦め度:★★★  対象:身近なカビの真実が知りたければ
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