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本の紹介「人類とカビの歴史」

「人類とカビの歴史 闘いと共生と」浜田信夫著、朝日新聞出版、2013年6月、ISBN978-4-02-263002-5、1400円+税

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【釋智恵子 20131024】【公開用】
●「人類とカビの歴史」 浜田信夫著、朝日新聞出版

 冷蔵庫に長く入れておいたあんなやつやこんなやつに出現し、お風呂場のタイルの目地を黒くして、洗濯槽の見えない裏側にも潜んでいる。ブルーチーズを喜んで食べていながら、カビってイヤだなという印象しかなかった。高温多湿なところにしか出てこないと思っていたカビが、実は、乾燥を好んだり、南極で出てきたり、酸性やアルカリ性にも負けないし、界面活性剤だって栄養にする、多種多様な生き物だった。そんなたくさんのカビの中、人の近くに出現するのは種類が限られているらしい。人との暮らしの中で自分の居場所を見つけたカビたちだ。
 長年、研究所で市民からのカビ相談を受けて来た著者が語るカビは、この家の中のカビが中心で、カビの暮らしだけではなく、洗濯した後は洗濯機のふたをすぐ閉めない方がいいとか、掃除機は長い時間かけてもカビを吸い取る効果は増さず軽くささっとかけた方がいいとか、カビ対策の生活の知恵もところどころ語られるのが楽しい。語り口も軽くわかりやすく、家事をする人におすすめしたい。カビと人との切っても切れない縁に気づくはず。

 お薦め度:★★★★  対象:家事をする人、家の中のカビが気になる人に

【冨永則子 20131014】
●「人類とカビの歴史」 浜田信夫著、朝日新聞出版

 なんと重厚なタイトル! これぞ学術書という雰囲気を醸し出している。しかし、内容は暮らしの中のカビを主に取り上げているので身近に感じながら読める。私たちの周りにカビはあって当たり前で、なくてはならないものでもある。生物多様性と共生を謳いながら暮らしに迷惑なものは根治したいというのは人間のワガママ?

 お薦め度:★★★  対象:お風呂場や洗濯機のカビが気になる人に

【萩野哲 20131010】
●「人類とカビの歴史」 浜田信夫著、朝日新聞出版

 本書はカビが主役である。カビがどのような生物かの解説から始まり、一応様々な生活形態のものが網羅されている。特に力が入っているのは著者の研究した住居との関わりの項であり、洗濯機のカビについてはいろいろと参考になる示唆も多い。健康面から、酸に対する耐性など、一般人が細菌と誤って対応していることの指摘なども有用な情報である。命にかかわるカビはほとんどないらしい。すこし全体としてのまとまりを欠くところもあるが、カビとうまく付き合う方法が、本書を通じて見えてくるかもしれない。

 お薦め度:★★★  対象:カビで困っている人、うまくつきあいたい人

【村山涼二 20131017】
●「人類とカビの歴史」 浜田信夫著、朝日新聞出版

 まずカビと酵母、キノコの違いを示す。食品とカビでは、カビの性質を述べ、被害と対策について述べている。水餅の長期保存が溶存酸素の減少など。カビから得られる食品として、貴腐ワインではブドウの皮をカビが傷つけ水分蒸発・糖分濃度上昇、日本酒ではデンプン分解、カツヲ節の水分減少・アミノ酸分解など、その役割を示す.。住居とカビでは、洗濯機、エアコン、居間との関係を述べ、掃除の際の窓開けの効果も述べている。カビと健康については、カビ毒(アフラチキシンなど)、ナッツ類・黄変米、アレルギー、真菌症、水虫など。カビから生まれた薬・ペニシリンについても。カビの歴史は、真核生物は21億年前、カビとしては、シルル紀(4.4億年前)に誕生している。文学に出てくるカビにまで及んでいる。カビは目立つので嫌われているが、殺菌ばかりにこだわらず、ほどほどに予防すれば、大発生することはない、少しばかり生えても健康上恐れることはない、カビを毛嫌いする必要はないと述べ、太古の昔より環境・生活をを支えて来ていることへの理解を求めている。

 お薦め度:★★★★  対象:カビについて正しく知りたい人

【森住奈穂 20190829】
●「人類とカビの歴史」 浜田信夫著、朝日新聞出版

 前半は著者が勤務する環境科学研究所に持ち込まれた食品や住居に生えるカビについて。さながらカビの事件簿。洗濯機のカビについては特に詳しく書かれているので、お悩み中の方は読まれたらよろしい。後半はヒトとカビの関わりについての考察。水餅は知らなかった。溶けてしまわないのか不思議。物干し竿が登場するのは平安時代だそう。それまでは草むらや河原に広げて干していた。現代の洗濯といえば白さの追求が半端ないけど、昔は少しくらい黒い方が当たり前だったんだろうなぁ。カビやニオイも当たり前。それが高気密住宅と電化製品の普及によって、たった40年余りの間に180度変わってしまった。何より変わったのは人の意識なんだなぁ。「今日では不潔という意識は、汚染という客観的な事実に基づいたものではなく、古代ケガレ思想のような抽象的なものであると言えよう」

 お薦め度:★★★  対象:カビも生きもの。共栄は困るけれど共存をめざすひと

【和田岳 20131019】
●「人類とカビの歴史」 浜田信夫著、朝日新聞出版

 著者は、長年、家屋内のカビを調べてきた。その豊富な経験を披露した一冊。食品のカビ、洗濯機のカビ、エアコンのカビ、浴室のカビ、居間のカビ、窓や壁のカビ。次々と家屋内のカビが紹介されていく。
 最近とカビの比較はとても勉強になる。酸性に弱い細菌に対して、むしろ酸性が好きなカビ。短期間で爆発的に増える細菌に対して、ゆっくり増えるカビ。おかげで、好適な環境を支配する細菌に対して、厳しい環境で暮らすことが多いカビ。合成洗剤、高温、低温、防腐剤。我々が“殺菌”に効果があると思っているのは、対細菌の話しであって、カビにたいしてはあまり有効でないらしい。それが、洗濯機や冷蔵庫に生えるカビの話しにつながっていく。
 家の中のカビ対策を考えるなら必読の一冊。

 お薦め度:★★★★  対象:家の中のカビが気になる人

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