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本の紹介「イルカを食べちゃダメですか?」

「イルカを食べちゃダメですか? 科学者の追い込み漁体験記」関口雄祐著、光文社新書、2010年7月、ISBN978-4-334-03576-1、740円+税


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【中条武司 20101029】【公開用】
●「イルカを食べちゃダメですか?」関口雄祐著、光文社新書

 「The Cove」で一躍有名となった和歌山県太地のイルカ追い込み漁とその歴史、そして捕鯨・鯨食などの文化についての著者の主張を書いた本。著者はイルカの行動学の研究者として、そして水産庁調査員として、太地で長年イルカ漁に関わってきた。1・2章はイルカ漁の体験記、3章は太地を中心とした捕鯨の歴史、4〜6章はイルカの飼育や食べること、捕鯨に関する著者の主張という構成。1・2章のイルカ漁に関する記述はとても生き生きしていて、「The Cove」で描かれているであろうイルカへの残虐行為とは無関係に思えるものだ。
 著者の一部の主張(水銀汚染の健康被害の問題、飼育の問題など)には首をかしげる部分もあるが、一番納得したのは、現状では北極海や南極海での“調査捕鯨”やめ、捕鯨は日本近海で行うべきだ、という点。そして、どうせ税金を投入して行う“調査捕鯨”なら、その肉は無料もしくは安価で提供しろいう点だ。関西人としては鯨肉を安く食べられるなら、もっと食べるけどねえ。

 お薦め度:★★★  対象:鯨肉を食べたことがある人

【瀧端真理子 20101029】
●「イルカを食べちゃダメですか?」関口雄祐著、光文社新書

 水産庁調査員(非常勤)で太地町に滞在したことをきっかけに、イルカ追い込み漁にも便乗させてもらった著者が、太地でのイルカ漁とその文化、太地で生きる人々への愛を語る本。イルカ追い込み漁の様子や、鯨肉の非商業的流通の仕組みなどがよく分かる。名称がイルカとクジラに分かれているのは、人為的な分類によるものであり、世界中には80種類ほどの鯨類がいるとのこと。鯨目全体の見取り図と、人類による利用のされ方、みたいな一覧表か図解があると理解しやすいと思う。色々、知らないことが書いてあって面白い反面、「他の動物の生存よりも絶対的に人が優先されなければならない」という主張はいかがなものか? 価値観の対立がある現象を調査・分析の対象に選ぶに際し、一方の言い分しか調査・代弁しないのは、果たして「科学者」の仕事なのだろうか?

 お薦め度:★★  対象:太地町のイルカ追い込み漁について知りたい人

【萩野哲 20101027】
●「イルカを食べちゃダメですか?」関口雄祐著、光文社新書

 太地のイルカ追い込み漁批判を題材にした映画『THE COVE』が上映され、話題になった。著者はこの太地のイルカ追い込み漁の水産庁調査員であった。少なくとも日本人にはイルカ追い込み漁の姿を正しく理解してほしいと書かれたのが本書である。本書には著者の豊富な経験に基づくイルカ追い込み漁の詳細と、沿岸捕鯨文化の正当性についての著者の想いが綴られている。日本人はもっともっと捕鯨について関心を持ち、文化を継承していかなければならないのではないのだろうか、という気持ちにさせられる本である。

 お薦め度:★★★  対象:捕鯨について正しい知識を得たいと思っている人

【和田岳 20101028】
●「イルカを食べちゃダメですか?」関口雄祐著、光文社新書

 水産庁の調査員として、イルカの研究者として、太地町で漁師の方々に混じり、実際にイルカ追い込み漁を経験した著者による、真実のイルカ追い込み漁のレポート。『The Cove』を見てもわからない太地町のイルカ追い込み漁がわかる一冊。
 1章と2章は、太地のイルカ追い込み漁の様子が紹介される。3章は、地元漁師への聞き取りと、文献を交えて、イルカ追い込み漁の歴史が紹介される。4章から6章は、イルカの飼育、捕鯨、イルカを食べる事を順に取り上げ、著者の意見が披露される。著者の主張は、日本の文化の一つなので守ろう!というもの。
 とにかく圧巻は、最初の2章。体験に基づいて、実在の漁師とともにいきいきと紹介されるイルカ追い込み漁。イルカの行動、漁師の知恵。経験者にしかわからない話が満載。漁師さんたちが蓄積してる知識のすごさの一端が伝わってくる。

 お薦め度:★★★  対象:賛否はともかく捕鯨問題に関心がある人、『The Cove』を見た人

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