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本の紹介「ほうさんちゅう」

「ほうさんちゅう ちいさな ふしぎな 生きものの かたち」かんちくたかこ著、アリス館、2019年7月、ISBN978-4-752-00895-8、1400円+税

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【冨永則子 20191023】【公開用】
●「ほうさんちゅう」かんちくたかこ著、アリス館

 ほうさんちゅう(放散虫)…、「虫」とつくけど虫じゃない。体が一つの細胞でできている原生生物。細胞は一つなのに複雑な形の骨格を持ち、アメーバ状の体をいれても3ミリもない、海にプカプカ漂う小さな小さな生き物。放散虫の骨格はガラス質の二酸化ケイ素からできている。はじめは単純な形だったのが少しずつ複雑な形に進化してきたと考えられている。今から5億年前に骨格を持つ生物となった放散虫は繁栄や絶滅を繰り返し、現世の海にも生き続けている。地球の歴史の中で様々な形に進化し、これまでに1万以上の放散虫に種名がつけられているが、その数倍の放散虫にまだ名前がない。この本の中にも名前のない放散虫がたくさん含まれている。未記載種まで掲載するという大盤振舞いの写真絵本。

 お薦め度:★★★  対象:小さいモノ好きに
【上田梨紗 20191025】
●「ほうさんちゅう」かんちくたかこ著、アリス館

 名前に「むし」とついてますが虫ではないほうさんちゅう(ラジオラリア)。。。 ガラス質の骨の写真と、言葉あそび絵本のような文体で紹介しつつ、巻末には説明もあり、存在を知らなかった人には、簡単に知ることができる1冊です。顕微鏡で拡大したモノクロの写真は、不思議で少し不気味ですが、透き通った様々な形の骨の美しさは、心をうばわれます。マリンスノーが神秘的なのも納得できちゃいました!

 お薦め度:★★★★  対象:不思議好きな人、ウイルスの写真を見るのが好きな人、珪藻との違いを知りたい人
【西村寿雄 20191022】
●「ほうさんちゅう」かんちくたかこ著、アリス館

 科学読み物というより、放散虫化石の小さな写真集といった本である。一つ一つの放散虫化石が拡大して載せられているビジュアルな写真集である。しかも、著者のかんちくさんは、幼児向けの本をいくつか出されている。幼児に何かを訴えるつもりなのか。石好きの人にはおなじみだが、後ろに載せてある小さな赤い石は放散虫を含んだチャートである。放散虫というのは、1970年ころチャートは単なる石英ではなく、はるか大洋底の堆積物であることがわかった。堆積した年代が細かくわかることから日本列島の地質が再構築された。放散虫化石は地質学では大切な事象となっている。
 本の終わりに、放散虫のわかりやすい解説がある。写真のように化石として残るのは放散虫の殻の部分である。丸いものあり、針状のものあり、放射状あり、様々のものが写し出されるが、放散虫そのものは原生生物である。この本は放散虫化石のオンパレード、美しい放散虫化石の模様が楽しめる。

 お薦め度:★★★  対象:デザインを楽しみたい人
【和田岳 20191020】
●「ほうさんちゅう」かんちくたかこ著、アリス館

 珪藻より小さな放散虫は、光学顕微鏡では見られず、光の加減でキレイに撮影することもできない。画像はすべて骨格を白黒の電子顕微鏡で撮影したもの。不思議な形、自然とは思えないほど規則正しい構造。色はないけど、幾何学的で多様なその形だけで、充分楽しく見てられる。おもに電子顕微鏡写真が並んでいて、最後に4ページだけ、放散虫の生息場所、体のつくり、進化、発見の歴史などが説明される。放散虫に興味を持つキッカケになる本だとは思うけど、興味を持っても電子顕微鏡がないと、こんな世界はなかなか観察できないなぁ。

 お薦め度:★★★  対象:放散虫って珪藻と同じ?って思う人
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