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本の紹介「干潟に生きる小さな貝たち」

「干潟に生きる小さな貝たち のどかで楽しい不思議な暮らし」小倉雅實著、八坂書房、2021年8月、ISBN978-4-89694-290-3、1600円+税


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【西本由佳 20220220】【公開用】
●「干潟に生きる小さな貝たち」小倉雅實著、八坂書房

 三浦半島の小網代干潟に通いつめた小倉さんが干潟の楽しさを教えてくれる本。小倉さんは退職後に干潟に通いつめ、ノートと物差しを使ってひたすら貝を数えて測り続ける。貝の殻より生きている貝の軟体部のほうが好きで、飼育して行動を観察することもある。あまり目にすることのない貝の中身の水管や目を撮りためた写真などがたくさん出てくる。形式はトピックに分かれ、小倉さんよりはだいぶん普通の人に近い漫画家が調べていることの概要や一般の人の感覚を漫画で示した後、小倉さんが解説をする。難しい言葉はなく、わかりやすい。貝を買ってきて観察したくなるけど、その後が困りそう。

 お薦め度:★★★★  対象:干潟を好きな人はもちろん、干潟をあまり知らない人にも
【萩野哲 20220131】
●「干潟に生きる小さな貝たち」小倉雅實著、八坂書房

 本書は、貝殻より干潟の生きた貝の生活に興味を持って長年観察を続けている著者が、その観察手法、結果、新たな疑問などを綴っているのに加え、著者と一緒に観察を始めた画家が著者の文章をマンガと絵で分かりやすく補強した構成となっている。干潟に住む産業的にも重要でない貝たちの生活には不明点がたくさん残っている。何をどうやって食べているのか?どこで増え、成長するのか?更には、貝の水管や触手に存在する眼のような細かい点にまで触れている。水管の形態や機能から、二枚貝はどのように進化してきたのかなど、随所に歴史的考察が織り込まれているのも奥深い。フトヘナタリの寿命が20年以上にも及ぶとの観察も印象に残る。みんな同じように見えるカサガイ類にも、家を持たずに乱暴な食事をするタイプ、家を持って穏やかな食事をするタイプ、更にはお気に入りの食事ができる(刈り取りと施肥により藻類畑を手入れしている)タイプがあるらしい。今度海に行ったとき、本書を読んだ人は今まで以上に視野が拡がるだろう。

 お薦め度:★★★★  対象:名も知らぬ貝の生活についてもっと知りたい人
【和田岳 20220506】
●「干潟に生きる小さな貝たち」小倉雅實著、八坂書房

 三浦半島にある小網代湾を中心に、おもに干潟の貝類を観察してる、というか、いろいろ数えまくっている著者が、普通に干潟に自然観察に行っても、まず目に留めることのなり貝たちの観察ポイントを紹介してくれる。文章の前後に、2〜4ページのマンガが付いていて、カラー写真もいっぱいで、とても読みやすい構成。
 干潟の泥をフルイでふるって見つかるコメツブガイ類なんて探したこともなかった。干潟にもぐってる二枚貝の水管や、大量の目。フトヘナタリの寿命の話、ヘナタリ類の第3の目。そもそも貝の目って実際に見たことがなかったけど、あんなんだったのね。貝の目の画像コレクションはちょっとホラー。干潟の緑のウミウシの盗葉緑体、アメフラシ類の砂嚢板。
 今まで何度も干潟には行ったけど、見たこともないものがこんなにたくさんあったとは。今度、干潟に行ったら忙しい。

 お薦め度:★★★★  対象:干潟に自然観察に行く機会があるなら
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