友の会読書サークルBooks

本の紹介「葉っぱはなぜこんな形なのか?」

「葉っぱはなぜこんな形なのか? 植物の生きる戦略と森の生態系を考える」林将之著、講談社、2019年5月、ISBN978-4-06-515669-8、1400円+税

【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]

【萩野哲 20190920】【公開用】
●「葉っぱはなぜこんな形なのか?」林将之著、講談社

 葉っぱを10万枚もスキャンし、わかりやすい図鑑を著した作者が、なぜ葉っぱはあのような形をしているのか考えた。4章から構成されており、第1章は図鑑作り、第 2章がメインで葉の形についての考察である。第2章では、あまり科学的な証拠は揃っていないが、ギザギザ、切れ込みの有無や、羽状複葉、葉の大小などについて、そうかも知れないなあという説明がされていて、楽しい。第3章と第4章はそれぞれ植物と動物との関係および人間は自然に属するのか否かのお話で、どこかで聞いたような話が続く。葉の形とは少し異なる内容なので、この本では不要ではないかと思った。

 お薦め度:★★★  対象:葉がなぜあのような形をしているのか疑問を持っていた人
【上田梨紗 20191025】
●「葉っぱはなぜこんな形なのか?」林将之著、講談社

 この本について著者は、自身の考えを紹介するエッセイと言っている(あとがき参照)ので、そう思って読むと心理テストもあって面白かった。タイトルの答え、つまり葉の形が違うことについては、はっきり解明されていないらしく、そのなかで著者の見解が紹介されている。例えば、切れ込みのある葉は風をとおすや、葉状複葉は成長スピードを速める上で有利などなど。葉っぱの形についてだけを読みたい方は、第2章へジャンプすると良い。興味深かったのは、全緑率(全緑葉率)というのがあり、平均気温が高い地域ほど全緑の葉をもつ植物の割合が増えるということだ(計算式まである)。また、人間も植物に利用されているのではないかということも納得できる。樹木鑑定サイト「このきなんのき」は、のぞいてみようと思った。

 お薦め度:★★  対象:植物が好きだけど種類とかわかんない人、著者のファン
【西本由佳 20191020】
●「葉っぱはなぜこんな形なのか?」林将之著、講談社

 著者は山溪や文一などから多数の樹木図鑑を出している図鑑作家。スキャナを使って撮影する鮮明な葉っぱの写真がわかりやすい。本人が樹木を覚えるときに苦労した経験から考案した検索手法や、得意だったという画像編集技術で、樹木図鑑作家というニッチを獲得したようだ。研究的なキャリアは持たず、ひたすら観察から知識を増やしてきたという。葉っぱのギザギザや切れ込み、複葉、対生か互生か、といった見分けの際の大切な特徴について、それがなぜそうなのか、見聞きした知識や観察事例から解説してくれる。識別のための特徴を覚える頭が少し整理できた。

 お薦め度:★★★  対象:葉っぱの形をきれいだと思う人
[トップページ][本の紹介][会合の記録]