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本の紹介「葉の裏で冬を生きぬくチョウ」

「葉の裏で冬を生きぬくチョウ ウラギンシジミ10年の観察」高柳芳恵著、偕成社、1999年9月、ISBN4-03-634660-1、1200円+税


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【六車恭子 20070628】【公開用】
●「葉の裏で冬を生きぬくチョウ」高柳芳恵著、偕成社

 1987年12月20日、昔ながらの多摩丘陵のおもかげを残す黒川の谷戸で蝶たちの冬越しの姿を探した日、その時がウラギンシジミとの出会いの始まり。「なぜ葉の裏で冬をすごすのか?」という疑問から始まり、家の近所で見つけた累計350匹のウラギンシジミが教えてくれた総和がこの本の成り立ちなのですが・・・。
 寄り添って生きることが<みる視点>を磨き、記録し続けることで、昨日解けなかった謎が明日はその糸口をもたらしてくれることを知っている著者に`観察する神様`が降りてくる。葉っぱに残された4つの小さな爪痕に「いのちを見続けることがわたしの研究」と語るくだりでは思わず脱帽。いのちが繰り広げる工夫の数々が著者の新発見として披露されています。その一つ一つはぜひこの本をひもといてご自分で確かめられることをお薦めします。

 お薦め度:★★★★  対象:観察者の方法と序説、の洗礼を受けたい人に

【長井裕司 20070625】
●「葉の裏で冬を生きぬくチョウ」高柳芳恵著、偕成社

 シジミチョウの仲間で羽の裏が銀色だからウラギンシジミ。これで名前を覚えている人は多いと思う。私もその一人だが、何故銀色なのか考えた人は少ないだろう。
 娘さんの「冬チョウはどうしているの?」という一言をきっかけに、10年に及ぶ観察が始まった。成虫で冬を越す様子を自然の中で観察することは、昨日まで生きていたチョウの死を確認することでもあった。一つの生物を知るということはその生と死をありのままに見つめることなのだろう。
 何故羽の裏が銀色か興味を持った方は、ぜひ一読を!もっと興味を持った方は自分で観察を!

 お薦め度:★★★  対象:自然観察が趣味という方に

【西村寿雄 20070629】
●「葉の裏で冬を生きぬくチョウ」高柳芳恵著、偕成社

 子どもと図書館に通ううちに本好きになり、自然界にも興味を持ち始めた著者が、ある時の自然観察会で羽の裏が銀色に輝くウラギンシジミと出会う。ウラギンシジミの美しさと強い生命力にひかれて観察を続けるうちに、ついに自室での飼育、羽化まで成功させる。この研究レポートが本になった。
 身近な問題に興味を持って追求していくおもしろさがよく伝わってくる。子どもたちにも親しみやすく読んでもらえるのではないか。
 「ふだんは4本足で葉っぱにしがみついているのに、強い風の日は6本足でしがみついている。…」
 「カメラでピントを合わせると、危険を感じているのか、羽で相手を威嚇してくる。」
等と、細かな観察記が続られている。口吻をのばして雨水を吸うウラギンシジの写真は超一流の生態写真である。身近な生きもの研究の楽しさを存分に感じさせてくれる。

 お薦め度:★★★★  対象:虫好きの小学生から大人まで

【和田岳 20070629】
●「葉の裏で冬を生きぬくチョウ」高柳芳恵著、偕成社

 10年にも渡って、じっくりと観察したウラギンシジミの越冬生態の研究成果が紹介される。とある観察会で、ウラギンシジミが成虫のまま葉の裏にとまって冬を越すことを知る。やがて近所の木の葉の裏を見て回り、その様子、とくにまだ生きているかを記録していく。身近に多くのウラギンシジミが越冬してるとは知らなかった。そして、その多くが冬を越せずに、次々と消えて行く。ちょっと切ないドラマがこんなに身近にあったとは…。身近な生き物を観察して、こんな興味深い世界が拡がる事に驚かされる。

 お薦め度:★★★  対象:身近に何か調べてみようと思う人

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