友の会読書サークルBooks

本の紹介「ハナバチがつくった美味しい食卓」

「ハナバチがつくった美味しい食卓 食と生命を支えるハチの進化と現在」ソーア・ハンソン著、白揚社、2021年3月、ISBN978-4-8269-0225-0、2700円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]

【西本由佳 20211017】【公開用】
●「ハナバチがつくった美味しい食卓」ソーア・ハンソン著、白揚社

 この本では、ハナバチが花蜜を利用するようになる過程、ハナバチと花の特別な関係、ハナバチと人間のつきあいと栄養面での蜜の重要性、現在のハナバチの危機について紹介している。花粉を媒介してくれるハナバチがもしいなければ、世界はずいぶん違っていただろうという。ハナバチは花にとって歓迎すべき相手で、そのため、植物が害虫に対抗してつくる化学物質に対応する必要はなかった。近年のハナバチの減少には、殺虫剤などの化学物質が耐性のないハナバチに強く影響を与えているからではないかという話は興味深かった。

 お薦め度:★★★  対象:お花畑をきれいと思ったら
【萩野哲 20210829】
●「ハナバチがつくった美味しい食卓」ソーア・ハンソン著、白揚社

 本書は、幼虫の醜悪さや成虫の毒針にも関わらず、蜂蜜の存在によって有史以前から人間を魅了してきたハナバチについていろいろな切り口(起源、花や人間との関係、現状)から調べている。カリバチ類からどのようにハナバチ類が進化したかは12500万年から5500万年間の化石記録空白期間(蜂本体のみならず食物や巣も)があるが、カリバチ類の一部が花蜜を食べ始め、その時偶然体についた花粉を巣に持ち帰ったのが始まりかもしれない。その後、ハナバチの送粉機能が増すのと並行して、植物の方も形や臭いを特化させ、ついには送粉シンドロームと呼ばれる独特な花の特徴ができあがり、更には一見花と送粉者ともに利益が得られるような特別な関係を結ぶに至った。人間との関係からみると、人は食物の三口に一口をハナバチに頼っていると言われている。農作物生産量の1/3はハナバチの送粉に依存しているからであるが、食物の品目から考えるとこの数値は3/4に跳ね上がる!伝統的な生活スタイルで暮らすタンザニアのハッザ族にとって蜂蜜は最高の食物であり、機会さえあればミツオシエ(属名がなんとIndicator!)の後を追っているが、そのような関係は直立二足歩行をしていた初期のヒト属以来の共進化によるものらしい。「人間なんかいなくても世界は回るけど、ハナバチがいないと回らないんだ」。

 お薦め度:★★★  対象:ハナバチとはなにか、多面的に知りたい人
【和田岳 20221019】
●「ハナバチがつくった美味しい食卓」ソーア・ハンソン著、白揚社

 ハナバチ大好き研究者が、ハナバチ愛いっぱいに、ハナバチを紹介した一冊。序章でハナバチと人間の歴史を軽く紹介した後、ハナバチの概要紹介、ハナバチと花、ハナバチと人間、ハナバチの将来という4部構成で展開する。
 カリバチから生まれた菜食主義の系統なんだけど、未だに謎なハナバチの起源。ハナバチ全体の少なくとも20%が托卵性の寄生ハナバチ。ミツオシエは、ヒトに対してあの行動を進化させたらしい。というように、ハナバチ蘊蓄が盛りだくさん。しかしアメリカでは、ハナバチが減少し、ミツバチの蜂群崩壊症候群が問題になっている。これは日本にとっても対岸の火事ではない。
 ツツハナバチがあちこちで売られ、アルファルファ農家は広大なハナバチ畑を併設し、なにも虫がいないアーモンド畑は送粉者不足に悩む。大規模で極端なアメリカ合衆国の農業がとても印象的。

 お薦め度:★★★  対象:ミツバチ以外の花にくるハチが気になる人
[トップページ][本の紹介][会合の記録]