友の会読書サークルBooks

本の紹介「白菜のなぞ」

「白菜のなぞ」板倉聖宣著、平凡社ライブラリーOFFシリーズ、2002年10月、ISBN4-582-76447-9、900円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。

[トップページ][本の紹介][会合の記録]


【魚住敏治 20030820】【公開用】
●「白菜のなぞ」板倉聖宣著、平凡社ライブラリーOFFシリーズ

 「たかが白菜、されど白菜」本当にそのとおりです。話としては、種と品種の事なのですが…。この「種」ということのために、明治以降の人々が、今では珍しくもない白菜をこの国に作物として定着させるために、いかに多くの労力と努力を必要としたかが繰り返し語られています。
 筆者は最後に種の区別のしかたとしてタネの形の違いにたどりつくのですが、それがなんとなくすごい発見のように思えるのは白菜のたどってきた歴史のせいでしょうか。
 
 お薦め度:★★  対象:中学生

【村山涼二 20030817】【公開用】
●「白菜のなぞ」板倉聖宣著、平凡社ライブラリーOFFシリーズ

 この小さな本が、「日本のハクサイの歴史として最も詳しい本」とのことです。日本でハクサイを食べるようになったのは明治8年です。清国からタネを持ってきて、次々と栽培してタネを取ってゆくと、ハクサイの特徴が無くなってしまう。これは他の植物との交配が原因です。離島で隔離したり、網で囲って栽培することにより、他の植物の交配を防ぐことにより、特徴が失われないハクサイのタネを取ることに成功しました。
 この理由から、ハクサイは明治8年よりずっと以前に日本に渡来していたが、交配に より特徴を失い、日本に残らなかったものと著者は推定しています。十字科植物の中でも、ハクサイはアブラナ、カブとは交配するが、ダイコンとは交配しない。交配する者同士が同じ種(しゅ)です。著者は種(しゅ)の特徴として、タネの大きさ形が似ていることを発見しています。詳細に、ハクサイ栽培研究の史実をしらべあげた科学史の本です。
 
 お薦め度:★★★★  対象:中学生以上広く一般向き

【瀧端真理子 20030918】
●「白菜のなぞ」板倉聖宣著、平凡社ライブラリーOFFシリーズ

 仮説実験授業の発想を、日本での白菜栽培史を素材に、一般向けに紹介したハンディ本。白菜栽培はなぜ明治になるまで日本に伝来(定着?)しなかったのか、の謎解きに読者をいざないます。
 アブラナ科の植物の中でも、大根とカブは別の種で、白菜・カブ・アブラナ・漬け菜類はみな同じ種。同じ種の花粉がまじると結球しない白菜ができてしまう。その交雑を防ぐ方法が確立するまでは、日本では白菜栽培が定着しなかったらしい・・・と論が進められています。
 謎解きの楽しさは味わえるのですが、種とは何か、を含めて、さらに様々な疑問が浮かんでくるのが、この本の長所でもあり短所でもあるのかもしれません。
 
 お薦め度:★★★  対象:仮説実験授業に関心のある人

【寺島久雄 20030804】【HPのみ公開用】
●「白菜のなぞ」板倉聖宣著、平凡社ライブラリーOFFシリーズ

 白菜を漬菜として、鍋物用として、ごはんに合ふ最高の味として身近に味わっていながら、白菜に就いて全く無知であった事を此の本を読んで感じた。
 明治維新以後に中国から輸入され、篤農家の人達によって今日の素晴らしい食感と風味を持つ白菜が食膳に並ぶ様になったのです。
 白菜の「種」とかの歴史を書かれており、白菜を味わふ気分で読める本です。
 
 お薦め度:★★★  対象:野菜に興味のある人に

【西村寿雄 20030819】【HPのみ公開用】
●「白菜のなぞ」板倉聖宣著、平凡社ライブラリーOFFシリーズ

 著者自身がいだいていた「白菜の〈なぞ〉」(白菜はいつごろ、だれによって、どのようにして、日本に伝来したのか)を解明することをきっかけに、日本への食文化伝来のおもしろさ、白菜のタネ育種に苦心した日本人の話を中心に、「種とは何か」という科学上の概念確立の話にまで言及した異色の科学読み物である。
 この本の特徴は、著者自身の疑問や問いかけに、読者も一緒になってテーマを追求できるところにある。ページをめくるとついつい引き込まれて読んでしまう。みなさんも、この本と共に、一つ一つ予想しなが〈白菜のなぞ〉にせまってみませんか。意外な発見がありますよ。
 著者は、〈楽しい科学教育〉の提唱者です。興味のある人は「仮説実験授業」と名の付く本を読んでみてください。
 
 お薦め度:★★★★  対象:中学生以上広く一般向き

【和田岳 20030821】【HPのみ公開用】
●「白菜のなぞ」板倉聖宣著、平凡社ライブラリーOFFシリーズ

 日本でハクサイが栽培されるようになったのは、明治時代になってからのこと。古くから中国や朝鮮にあったハクサイが、どうしてそれまで日本に伝わっていなかったのか。明治時代に日本でハクサイを栽培しようとした人々の苦労を紹介しつつ、その謎を解き明かしてくれる。
 その背景には、栽培植物の種の問題があるのだが。ダイコンとカブは別の種。でも、カブとアブラナ、コマツナ、水菜、野沢菜、そしてハクサイは同じ種。さらにキャベツ、ブロッコリー、カリフラワーが同種で…。身近だがよく知らなかったアブラナ科の栽培植物の種を整理してくれる。そもそもこれが全部アブラナ科ってことを知らなかった人も多いのでは?
 
 お薦め度:★★  対象:栽培植物の種の違いに興味のある人

[トップページ][本の紹介][会合の記録]