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本の紹介「ハキリアリ」

「ハキリアリ  農業を営む奇跡の生物」 E・O・ウィルソン&バート・ヘルドブラー著、飛鳥新社、2012年4月、ISBN978-4-86410-160-8、1800円+税


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【岩坪幸子 20120618】【公開用】
●「ハキリアリ」 E・O・ウィルソン&バート・ヘルドブラー著、飛鳥新社

 テレビの画面でしか見たことのない生き物、熱帯の森で切り取った葉を背負い列をなして移動するハキリアリ、不思議な働き者という印象しかなかったが、何という知恵・組織力 そのすごさに圧倒される。1匹1匹のアリは自分の体の大きさと作りによって決められた役割をひたすら果たそうとするだけだが、女王アリを中心とした巣全体としてはまるで大きな生き物のように超個体として菌類を栽培し、その菌類と共生するという優れもの。ハキリアリのことを多角的に深く研究した論文であるが、読みやすく面白さにぐいぐい引き込まれる。難しい数字は飛ばして読む。たくさん挿入された写真は楽しく理解を助ける。

 お薦め度:★★★★  対象:生き物の不思議に興味のある人

【萩野哲 20120618】
●「ハキリアリ」 E・O・ウィルソン&バート・ヘルドブラー著、飛鳥新社

 ハキリアリの名前や映像ぐらいは見聞きした人は多いであろう。しかしその驚くべき生活の実態はあまり詳しく知らないのではないだろうか。本書はアリ研究の大御所2人がハキリアリについて解説している。真社会性を営むアリの中でもハキリアリは極めて高度に分業が進んでおり、ワーカーでもそのサイズによって、直接木から葉をカットする者、それを細かく切断する者、それを巣まで運ぶ者、運び屋を寄生バエから守る者、菌の栽培をする者等々、実に様々な階級が存在する。彼女らのコミュニケーションの能力を知れば、アリのような真社会性の昆虫の群全体を1個体(超個体)とする考えもうかがえる。アリと菌との共生についても、もちろん詳しく解説されている。巣の型など美しく、かつ驚異的な写真が多数収載されているのも本書の魅力であるが、葉のカットの仕方などのイラストも、理解をより助けている。訳者あとがきに書かれているように、ハキリアリの初級者や中級者がこの本を読めば上級者への道が開かれよう。まるで普通のアリからハキリアリに進化したように。

 お薦め度:★★★★  対象:生き物の不思議に興味のある人

【和田岳 20120628】
●「ハキリアリ」 E・O・ウィルソン&バート・ヘルドブラー著、飛鳥新社

 ヘルドブラーとウィルソンと言えば、世界のアリ研究者のツートップ。その二人が最新のアリ研究の成果を交えて、ハキリアリの不思議な生活を紹介した一冊。
 きれいな装丁にひかれてページをめくると、目にはいるのはアリの写真だらけ。虫嫌いには厳しいかもしれない。多少の生き物好きでも、同じようなアリの写真ばっかりと思うかもしれない。でも、本文を読み進めながら見ると、その写真はとても興味深い。
 ハキリアリと言えば、葉っぱを収穫してきて、キノコを栽培する。でもそれだけではない。巨大な兵隊アリから、大小様々な働きアリに、女王アリが、さらに年齢でも分業して、高度に組織化された社会。100m四方に広がる巨大な巣、数百mも伸びるアリ道。アリが育てる菌類、そこに侵入する菌類、侵入者を退治する放線菌…、巣の中ではさまざまな種間関係も展開している。
 アリマニアが書いてるので、ちょっと細か過ぎる話もあるが、それも含めて、生き物の複雑な世界を堪能することができる。

 お薦め度:★★★★  対象:アリがつくる社会なんてたかが知れてると思う人

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