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本の紹介「ハチのふしぎとアリのなぞ」

「ハチのふしぎとアリのなぞ」矢島稔著、偕成社、2008年12月、ISBN978-4-03-617160-6、1600円+税


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【岩坪幸子 20120706】【公開用】
●「ハチのふしぎとアリのなぞ」矢島稔著、偕成社

 著者の矢島稔さんはNHKラジオ「夏休みこども電話相談」で長く解答者としてお馴染みの人。この本も児童書として子ども向けに大変わかりやすく書かれている。最初にハチの系統進化について図示と共に解説があり、これでハチの進化についての基礎知識が得られる。次にハチの観察を通して進化についての考察が進められる。観察は実に細かく根気強く続けられ、寄生バチの産卵の様子から進化の根拠が明かされる。更にジガバチとクロアナバチの狩りの様子と獲物を巣穴の中に引き込む様子はまるで映画を見ているようでワクワクさせられる。このハチの行動を本能と一言で片付けられないものを感じる。実際IQを計れるものなら計ってみたい。やがて社会性を持つ集団へと進化したニホンミツバチとキイロスズメバチの戦いやハチ目に含まれるアリの仲間の生態の解明なども興味深く面白い。

 お薦め度:★★★★  対象:虫好きの子どもと昔昆虫少年だった大人

【六車恭子 20121026】
●「ハチのふしぎとアリのなぞ」矢島稔著、偕成社

 「わたしの昆虫記」6巻目にあたる人気シリーズの一冊。完全変態という体の変化に成功したことが今日の多様性をもたらし、ハチ目は地球環境への適応を遂げ、昆虫相の三割を占める繁栄をもたらしたという。アリは狩りバチを祖先にもつグループに近く、集団で社会を構成し、女王、働きアリ、オスアリと役割の異なる家族が仕事を分かち合う。その小さな巨人の知恵に満ちた生活誌は人間社会も学ぶこと大だという。
 「キバチとオナガバチ」「ジガバチの狩り」「クロアナバチとにらめっこする」「ニホンミツバチとスズメバチの闘い」…「サムライアリの奴隷狩り」「シジミチョウを育てるアリ」、ここには著者のカメラアングルが発見へと至った体験がある。
 この本の面白さは「体験がさがすコツを教えてくれる、文字や写真では伝えられないものを体験が発見となる」を身上に、日々虫を追いかけた著者の気迫が随所に横溢していることだろうか。アトランダムに語られるハチ研究者の古典に類される文献の存在。これからハチやアリの研究をめざす学究には必読の一冊になるだろう。

 お薦め度:★★★  対象:これからハチ研究をめざす人、またはあっと驚けることのコレクター人

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