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本の紹介「魚食の人類史」

「魚食の人類史 出アフリカから日本列島へ」島泰三著、NHKブックス、2020年7月、ISBN978-4-14-091264-5、1400円+税


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【萩野哲 20220804】【公開用】
●「魚食の人類史」島泰三著、NHKブックス

 霊長類は様々なものを食べているが、魚食についてはヒト類以外、ほとんど例がない。オーストラロピテクスの骨食からホモ・エレクツスやネアンデルタール人の大・中型哺乳類食を経て、サピエンスでは華奢な体を補う様々な道具の発明により食性の幅が広くなり、世界にその分布を広げた航海や水辺の根菜・水稲栽培から必然的に魚食との関連が深まったそうだ。水生生物からは陸の獲物から得られない様々な栄養素も得ることができ、サピエンスの発展に寄与した。子供時代を漁業の町、下関で過ごした著者には魚食に特別の思い入れがあるらしい。主に流通の状況により魚種に貴賤がついていたのは興味深い。紫式部作?「日の本に はやらせたもう いはしみづ まゐらぬ人はあらじとぞおもふ」にえらく感心した。

 お薦め度:★★★  対象:ヒト類の食性に関するいろんな説を知りたい人
【和田岳 20220824】
●「魚食の人類史」島泰三著、NHKブックス

 現生霊長類の研究者で、人類の進化についての著作も多く、下関の鮮魚商の息子として育った著者が、ホモ・エレクツスから旧石器時代までの人類、そして日本人の食生活の歴史を、魚食を切り口に考えてみた一冊。
 魚食の人類史といいつつ、狩りや農耕を含めて食生活の変遷が紹介されていく。石器を使っての狩りをする以前、農耕が始まる前は、たしかに水辺で簡単に採れる魚介類は、重要な食料だったんだろうなと思う。
 最後の第7章では、日本の魚食が紹介されるのだけど、突然歴史学的になってとまどう。日本全体を見渡す内容になっていないのも、なんか不満。第6章までは面白かったのに。

 お薦め度:★★  対象:霊長類や古人類の食生活に興味がある人
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