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本の紹介「フォッサマグナ」

「フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体」藤岡換太郎著、講談社ブルーバックス、2018年8月、ISBN978-4-06-512871-8、1000円+税

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【中条武司 20190222】【公開用】
●「フォッサマグナ」藤岡換太郎著、講談社ブルーバックス

 フォッサマグナは言葉としては有名だけど、何を示している言葉かよくわからない。著者はそれを「鵺」と例えているが、言い得て妙な感じ。そもそもナウマンが感じた感動は地形のことだったはずだけど、のちのちにはそれが地質の違いも反映しており、さらに北部と南部で全く違った様相を示していることがわかる。日本列島の中央部にある特異な地質帯を知るにはうってつけの本。
 とはいえ、いろいろ疑問や不満点もあり。北部フォッサと南部フォッサの形成プロセスが全然違うのに、同一の「フォッサマグナ」という言葉を使っていいのかという疑問(これは前から思っている)や、北部フォッサ下部の火成活動にプルームの証拠があるのかとか。ナウマンがそもそも最初に付けた「フォッサマグナ」は地形的部分から命名したので、その部分に関する記載が不十分に感じたけど、それは現在の地質研究者が地質や形成論と合わせて「フォッサマグナ」という言葉を使っているから何だけど、初めての読者には混同するんじゃなかろうか。

 お薦め度:★★★  対象:地質好きの人
【上田梨紗 20181219】
●「フォッサマグナ」藤岡換太郎著、講談社ブルーバックス

 ナウマンゾウのナウマンさんが明治時代に発見した、日本が世界に誇る巨大な地溝。中央構造線を分断しつつ、南部と北部で形成過程に違いがあり、生物地理区でもあるという話題豊富なフォッサマグナですが、その成り立ち等の詳しいことは、わかっていない。。。秘密のベールに包まれたフォッサマグナを伝説の妖怪「鵺」に例えながら、著者は地質探偵を名乗り、仮説や試論を紹介してくれる。「鵺」は、形成することができたとしても、持続するのが難しい等、稀有な存在ということは理解できたが、興味があります程度の初心者には、読んでいて難しかった。日本海の成り立ちも含めて、謎の解明が待ち遠しい。「北薩の屈曲」という、素晴らしいネーミングセンスに震える。

 お薦め度:★★  対象:フォッサマグナってなに?と思ってる人、ある程度地学の知識がある人、難しい所は流しながら読める人
【西村寿雄 20181219】
●「フォッサマグナ」藤岡換太郎著、講談社ブルーバックス

 地質学者の著者がフォッサマグナについて今迄の研究事例から新たな見解まで書き綴ったフォッサマグナ研究史である。フォッサマグナは、140年前にナウマンが見つけた大地溝帯(糸魚川—静岡構造線)から東に数十kmもの幅を持つ巨大な岩体で、地下6000mもの基盤岩が占めていることも分かっている。フォッサマグマの研究は今や日本列島形成のカギも握るものとして注目を集めている。内容としては「フォッサマグマとは何か」「地層から見たフォッサマグマ」「海から見たフォッサマグマ」「世界にフォッサマグマはあるか」「〈試論〉フォッサマグマなぜできたのか」「フォッサマグマは日本に何をしているのか」の項に分けている。近年の巡検成果も取り入れて各項わかりやすく説いている。

 お薦め度:★★★  対象:日本列島の成り立ちを知りたい人、フォッサマグナを学びなおしたい人
【西本由佳 20190221】
●「フォッサマグナ」藤岡換太郎著、講談社ブルーバックス

 フォッサマグナはラテン語で大きな地溝を意味する。日本列島を中部地方あたりで南北に縦断し、ナウマンというお雇い外国人が、その大きな地形に感動して命名したという。ところがこの地溝は、北部と南部では様子がずいぶん違う。北部は堆積層がその場で厚く積もり、南部は海底火山の噴出物が移動してきたものだ。ナウマンのようにこの地溝を一望できる場所に立てばまた違うかもしれないが、これだけ違いのあるものを一つの名前で呼ぶことが理解しにくかった。フォッサマグナの成因ははっきりわかっていない。著者はいくつもの説を紹介しているが、読むほどにわからなくなる。最後に著者自身の説がていねいに解説され、ようやく全体像と、これが一続きの地形だというところに落ち着く。著者はフォッサマグナを妖怪ぬえに例えるが、本当にぬえのようにつかみどころのない話だった。

 お薦め度:★★★  対象:なぞに挑戦したい人
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