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本の紹介「動物たちの反乱」

「動物たちの反乱 増えすぎるシカ、人里へ出るクマ」河合雅雄・林良博編著、PHPサイエンス・ワールド新書、2009年11月、ISBN978-4-569-70830-0、880円+税


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【西村寿雄 20100306】【公開用】
●「動物たちの反乱」河合雅雄・林良博編著、PHPサイエンス・ワールド新書

 本書は、全国的にも数少ない野生動物の専門研究機関、兵庫県立森林動物研究センターの研究者が、それぞれの野生動物管理の現状と課題を述べた書である。外来種も含めシカや熊、イノシシなど人との軋轢と向き合いながら、数値的なデータを元に合理的な個体数管理を図ろうとする著者達の意気込みがよく伝わってくる。外来生物の駆除を初め、野生動物の個体数管理には「命」という難題にも直面する。各動物にあった捕獲手法や管理のノウハウも紹介されている。
 第2章に、河合雅雄さんの「里山とは何か」がある。歴史的経過や海外の現状もふまえ、わかりやすくまとめられている。自然教育を通して「森林文化」を芽生えさせ、人と動物の入会地としての里山再生を訴えている。

 お薦め度:★★★  対象:里山保全活動にかかわる人

【加納康嗣 20100423】
●「動物たちの反乱」河合雅雄・林良博編著、PHPサイエンス・ワールド新書

 在来種のクマ・サル・シカ・イノシシや外来種のアライグマ・ヌートリアなど野生動物が反乱を起こしている。最新の動物社会に起こった異変の原因を個々の動物の置かれた現況を探って究明するとともに、野生動物管理について解説した好著である。すべては人と里山との関係性の変化に起因するがものである。山林の皆伐、一斉植林、中山間部農村や里山の荒廃など農村の構造的変化に起因する。里山を文化林としてみる、里山とのあり方を変える必要が実感された。

 お薦め度:★★★  対象:野生動物に悩まされている方。里山再生を目指す人

【和田岳 20100423】
●「動物たちの反乱」河合雅雄・林良博編著、PHPサイエンス・ワールド新書

 兵庫県森林生物研究センターの面々が、中大型哺乳類と人間との関わりと共存の可能性をついて、兵庫県における調査と取り組みを中心に紹介した本。
 近年、シカやイノシシ、あるいはアライグマやヌートリアの増加が目立ちはじめた。とくに増加していなくても里に出没するサルやクマも目立ちはじめた。人との軋轢が生まれ、近年大きな社会問題となっている。兵庫県は北海道などと並んで、こうした中大型哺乳類の問題に先進的に取り組んできており、その中心が兵庫県森林生物研究センター。ここで紹介されている現象・問題は兵庫県だけの話ではなく、ほとんど日本中で起きている。ちょっとセンターの活動の宣伝になっていて、問題点の掘り下げが弱いものの、先進的な人と哺乳類の共存への取り組みを知ることができる一冊。

 お薦め度:★★★  対象:シカ好き、クマ好き、哺乳類好き。人と野生動物の共存に関心のある人

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