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本の紹介「第三の脳」

「第三の脳 皮膚から考える命、こころ、世界」伝田光洋著、朝日出版社、2007年7月、ISBN978-4-255-00401-3、1500円+税


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【六車恭子 20081226】
●「第三の脳」伝田光洋著、朝日出版社

 「皮膚思う ゆえに我あり」自身の研究者としての立場からの宣戦布告であり、その限界への挑戦の書と見た。前著「皮膚を考える」をより説明的にしたのが本著のようです。
 畳み一畳分の面積をもち、重さ三キログラムにも及ぶ表皮は脳と同じ出自であることから、「皮膚は第三の脳である」という説を展開しており、その皮膚学会の最先端の知見が網羅されている。視覚聴覚などの感覚器の情報はすべて電気信号によって変換されて処理されるシステムが存在する。常に新しい細胞に入れ替えて感じているケラチノサイトの働きこそ、今後の皮膚学会が現代社会への貢献できる分野であろうか。東洋医学から進化論、心のありかまで著者の好奇心は留まる所なしだが、いま皮膚のことを考えるのが熱い!が伝わってくる。

 お薦め度:★★★  対象:いま医者通いをされている方

【村山涼二 20080423】
●「第三の脳」伝田光洋著、朝日出版社

 皮膚は身体を包むためにあると信じられていたが、20世紀終わり頃から皮膚の様々な能力が明らかになってきた。皮膚のシステムも、角層バリアを作る表皮細胞バリアを作るだけでなく、環境変化をモニターするセンサーとして、そこで受けた情報を処理する機能を持つ。その情報が、神経系、循環器系、内分泌系まで、様々な全身システムにまで影響する可能性を持つ。皮膚は心に影響を与え、また、心は皮膚に影響を与える。人間は毛をなくしたことでスキンシップによるコミュニケーションを行うようになった。脳の機能は、情報受容、情報処理の要、感じ、考え、判断し、行動する指示を与える臓器であるとすると、「皮膚は脳である、言わば第三の脳である」と皮膚の重要性を語っている。

 お薦め度:★★★  対象:皮膚に関心のある方

【和田岳 20080627】
●「第三の脳」伝田光洋著、朝日出版社

 化粧品会社の研究所に所属する皮膚科学の研究者である著者が、皮膚について思いついたさまざまなことを書いています。短く言えば、我田引水。
 皮膚はただ体の表面を覆っているだけでなく、バリア機能や免疫機能などさまざまな機能を持っています。電気的に皮膚全体が一つのネットワークを形作って機能している可能性もあります。そこまでは面白いのですが…。
 皮膚は第三の脳である! と宣言した後、東洋医学、超能力、はては進化まで。なんでも皮膚から説明しようとし始めます。後半はマユにつばをつけて読みましょう。あるいはこの著者の他の本を読んだ方がいいかも。

 お薦め度:★★  対象:皮膚なんて体を覆ってるだけやん、と思ってる人。ただし人の話を鵜呑みにする人を除く。

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