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本の紹介「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」

「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」川上和人著、技術評論社、2013年3月、ISBN978-4-7741-5565-4、1880円+税


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【冨永則子 20130628】【公開用】
●「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」川上和人著、技術評論社

 鳥類学者の著者が、「門外漢の身ながら」と謙虚に恐竜学について語り始めるのかと思ったら…。
 恐竜のサイズをガンダムで例えたり、ガメラやチロルチョコやアダムスキー型円盤や峰不二子やドラエモンまで登場させながら恐竜を縦横無尽に語っていくのが何とも愉快! 下段に脚注があるが、この注がまた、半分くらいは冗談で、真面目に読んでると肩透かしを食らう。でも、ついつい全部読んでしまった。ふんだんに挿入されたイラストも洒落ている。
 現存する鳥でも、骨格だけでは、その姿を想像することはできない。著者は、この例から、恐竜の化石を元に、その姿や生態を知ることの難しさ=恐竜学の限界であるとしながらも、この限界こそが恐竜学の魅力になっていると語る。恐竜の研究者は、限られた化石を手がかりに、自らの想像力を総動員して、恐竜の形態や生態を解き明かしていかなければならない。そこに門外漢である鳥類学者が妄想を語れる余地が生まれる可能性があるのだと本書の意図を説明する。
 そうか!T野さんやK端さん、ヒツジさんは、とってもファンタジーな学芸員さんだったんだ!勿論、W田さんも…?!
 本書は「生物ミステリー」という新シリーズらしい。ある分野のテーマについて、少し離れた分野の研究者が語るという企画は面白いかもしれない。次にどんなテーマの本が出てくるか楽しみだ。

 お薦め度:★★★★★  対象:鳥と恐竜好きに、進化に興味のある人に、物事を斜めに見たいヘソ曲がりな人に

【萩野哲 20130627】
●「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」川上和人著、技術評論社

 鳥類が恐竜の生き残りであることはほぼ定説となってきた。恐竜は化石しか残っていないので、もちろん、その生活などについて復元するのは困難であるが、鳥類が恐竜の生き残りであるならば、かなりの部分は鳥類の生活から類推が可能となる。鳥類学者である著者は、この本で、鳥類は恐竜の生き残りであることを前提としている。ならば、本書のタイトルは「現生恐竜学者 大胆にも絶滅恐竜を語る」の方がふさわしいのでは?と思われるが、実際、本書は鳥類と恐竜の類似について、羽毛、歯、色彩、毒、・・・について、現生恐竜(=鳥類)の生活に基づいて大胆かつ自由に推論している。特に、現在の哺乳類や鳥類が結果的に今の姿になったのは恐竜の存在があってこそ、との推論は楽しい。ともすれば堅苦しくなりがちなこの種の本とは異なり、マンガからの引用も多いし、より気楽に、より分かりやすく読むことができる。

 お薦め度:★★★★  対象:絶滅した恐竜について、より想像を膨らませたい人

【和田岳 20130627】
●「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」川上和人著、技術評論社

 「鳥類は恐竜だ、だから私は恐竜学者だ」と鳥類学者が宣言して、恐竜について面白おかしく語る。とにかく脱線が多い。脱線しまくって、ふざけた口調の割には、言ってる事はまとも。
 現生の鳥類の知識を恐竜に当てはめてみたら。というわけで、恐竜の色、声、有毒恐竜の可能性、食性、渡り、歩き方、巣づくり、子育て、活動時間。いろんな側面を検討する。鳥類についての知識から、恐竜について想像を膨らませるのは楽しい。のみならず、恐竜からの流れで鳥類を考えるのも面白い。
 我々は毎日、現生の恐竜を見ながら暮らしている。そう考えるきっかけになるだけでも楽しい。

 お薦め度:★★★  対象:恐竜に興味のある人

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