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本の紹介「地球の発明発見物語」

「地球の発明発見物語」西村寿雄著、近代文藝社、2010年12月、ISBN978-4-7733-7739-2、1600円+税


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【和田岳 20110422】【公開用】
●「地球の発明発見物語」西村寿雄著、近代文藝社

 大人はまず「あとがき(大人の人に向けて)」から読んだ方がいいだろう。『地球物語』(1949年発行)という地質学の発明発見を物語風に紹介した本。これを、現代風に書き直したとある。あくまでも子ども向けの本であり、大人には物足りなかったり、物語パートは読んでいてちょっと恥ずかしくも懐かしい。
 ピタゴラスから始まり、ダ・ヴィンチ、ビュホン、キュビエ、ライエル、アガシイ、ウェーゲナー。いろいろな地学畑の有名人が登場し、5〜6ページの中に、物語風のやりとりをはさみつつ、その業績が紹介される。後半の研究者の姿が見えない章は、物足りなさが気になるが、前半の人物列伝風のパートは、大人でも思いのほか楽しく読める。いろんな人々の長い営みの中で、現代科学はようやくここまで到達してきたんだなぁ、と改めて考えることができる。

 お薦め度:★★★  対象:化石や科学に興味のある小学生、及び地学が苦手な大人

【中条武司 20110422】
●「地球の発明発見物語」西村寿雄著、近代文藝社

 化石って何? 山はどうして高くなる? 地面の下はどうなっている? という地球に関する素朴な疑問は、今も昔も科学者たちにとって解くべき大きな謎である。ピタゴラスからダ・ヴィンチという有名どころから、ハットン、ウェゲナー、モホロビチッチという地質学の大物まで、彼らがどのようにそれらの謎を考えたかが物語風に述べられていき、過去の人たちと語り合いながらそれら疑問を解いていくよう。そして、冒頭にある“わたし”と「都」に住む人との語らいが、<地球の歴史>物語を象徴的に物語っている。近視眼的に地球を見ることは、愚かしいことだと言ってるかのように。
 本文中にいくつかの間違いがあるけど、それは改訂してくれますよね、西村さん!

 お薦め度:★★★  対象:本読みならだれでも

【六車恭子 20110422】
●「地球の発明発見物語」西村寿雄著、近代文藝社

 著者自身も長年教育の現場で科学教育に研鑽され、特に地質学の分野から「地球の発明発見物語」をその豊富な知識を開陳されたのが本書である。いま私たちが当たり前として受け取っている理論も長い歴史の中で産みの苦しみを経て科学遺産として定着しているのだ。
 各章立てでスポットを当てられた人々の真理を追究するその情熱こそ地球の歴史の謎解きに貢献した汗の結晶だろうか。その壮大な科学史から物語を選びとり、物語の流れを示された手腕に敬服します。各章で一冊の書物を要しそうだが、ぎっしり詰め込んだために少し淡くなってしまったところが惜しまれる。先人の目の確かさ、真理をつかむ手際に触れえる好著である。

 お薦め度:★★★  対象:トリピアの泉の向こうに広がる世界の謎に魅せられた人ならだれでも

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