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本の紹介「アザラシ語入門」

「アザラシ語入門 水中のふしぎな音に耳を澄ませて」水口大輔著、京都大学学術出版会、2022年10月、ISBN978-4-8140-0439-3、2000円+税


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【萩野哲 20230120】【公開用】
●「アザラシ語入門」水口大輔著、京都大学学術出版会

 アザラシの音声解析は、著者以前は未解明であり、今も未解明である。本書を読むと、著者が研究対象にしているクラカケアザラシについてはほとんど何もわかっていないことがよくわかる。他種のアザラシでは、ワモンの攻撃側と逃避側の水中音声の違い、アゴヒゲオスの決まった順に発せられる3種の音(=歌!)など、少しずつ音の意味が理解されつつあるようだ。著者は音声のみならず、行動=視覚的ディスプレイも「アザラシ語」に含めたい様子である。種毎の性格の違いも興味深い。しかし難しいテーマを選んだものだ。「アザラシ語入門」という表題は読者に向けられたのではなく、著者自身に向けられた心境のようにも思われる。

 お薦め度:★★★  対象:アザラシに興味がある人
【森住奈穂 20230223】
●「アザラシ語入門」水口大輔著、京都大学学術出版会

 「オウッオウッ」。アザラシの鳴き声ってそんなものだと思っていた(アシカと混同していることが本書を読んで判明)。だけど水中では…本書のQRコードを読みこんで彼らの声を聞いてみてほしい。人魚か宇宙人か!?きっと驚くことだろう。何種もあるという音声レパートリーはもちろんのこと、生態についても謎だらけのアザラシ。学生だった著者は鳴き声を研究の基に据え、寒風吹きすさぶ小樽の海獣公園で、アメリカで、知床で、数々の修行を積んでいく。失敗談も包み隠さず明かしてくれて、研究者としての成長物語にもなっており好もしい。ワモンアザラシ、アゴヒゲアザラシ、クラカケアザラシ、種によって異なる性質は暮らし方のせい?謎は深まるばかり。アザラシのことをもっと知りたくなる楽しい一冊。

 お薦め度:★★★★  対象:アザラシが気になるひと
【和田岳 20230623】
●「アザラシ語入門」水口大輔著、京都大学学術出版会

 哺乳類の研究がしたくて北海道大学に進学したものの、哺乳類の研究ができる研究室がなく、卒論ではケモチダニの研究。しかし、哺乳類への思いは断ちがたく、京都大学大学院でアザラシの声を研究すべく動き出す。
 で、小樽の水族館で、ワモンアザラシ、アゴヒゲアザラシ、クラカケアザラシの声の録音を始める。雌雄のどちらが、どんな状況で声を出したか、ってことだけで新発見になる。なんて研究の進んでない分野だろう。ってことがよく判る。あとは冬の野外でのアザラシ観察はとても寒そう。
 この本を読むまでアザラシの区別なんて付かなかったが、少し違いが分かって、少し親しみが湧いた。こんど水族館にアザラシがいたら、鳴くかどうか待ってみよう。

 お薦め度:★★★  対象:アザラシが気になるなら
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