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本の紹介「あしなが蜂と暮らした夏」

「あしなが蜂と暮らした夏」甲斐信枝著、中央公論新社、2020年10月、ISBN978-4-12-005343-6、1400円+税


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【西本由佳 20211017】【公開用】
●「あしなが蜂と暮らした夏」甲斐信枝著、中央公論新社

 自然を観察して絵本を描いてきた画家が、40年ほど昔に蜂と暮らした夏を回想する本。あしなが蜂の狩りや巣づくり、子育て、なわばり争いやすずめ蜂との戦いなどを著者は静かに見つめている。あしなが蜂はおとなしい蜂で、一生懸命に毎日の仕事を続けている姿はけなげに思えてくる。母蜂をなくした巣のめんどうをみる著者にとっては本当にいとおしい存在だったろうなと思う。

 お薦め度:★★★  対象:蜂をよく知らない人に
【柴田可奈子 20211021】
●「あしなが蜂と暮らした夏」甲斐信枝著、中央公論新社

 専門用語もほとんどなく、やさしく的確な文章は非常に読みやすい。あしなが蜂は刺されるとヤバい蜂との認識(どちらかといえば怖い)だったが、すっかりいい意味で気になる存在になった。母蜂(女王蜂とは呼びたくない)が一匹で孤軍奮闘で、巣作り、卵を産み、育て、巣のメンテナンスまでしてる。えらいなぁ。
 筆者の蜂によっての個性違いの表現は、ママ友社会を知ってる私には大変わかりやすかった。近くにいるけど、仲良くしてる風やけどライバル。30年ほど前の観察だとあとがきにあったが、洛北の人たちとの交流、東京での住まいなど、今とは違いのんびりしたものだったことがうかがえる。
 巻頭についているスケッチには、蜂の巣がなくて残念。しかし、京都から東京へ連れて行っていいのか?

 お薦め度:★★★  対象:小学校高学年から読めそう
【冨永則子 20210921】
●「あしなが蜂と暮らした夏」甲斐信枝著、中央公論新社

 ある日、キャベツ畑で写生していた著者はアシナガバチの青虫狩りに出会う。かねてよりアシナガバチに魅力を感じていたが精悍でひたむきな狩りの様子に魅了され、どうしても巣が見たくて探しまわるうちに、比叡山の麓近くで一軒の納屋を見つける。その中には60ほどの巣がぶら下がり、納屋の外にせり出した軒下にも新しい巣が幾つも作られていた。著者は納屋の向かいの母屋の農家に許可を取り、そこでアシナガバチの観察を始める。その農家の主である80歳ぐらいの少し足の悪い「りえもんのおかあ」と共にアシナガバチを見守りながら過ごした一夏の出来事が語られている。
 著者は『雑草のくらし あき地の五年間』『たんぽぽ』など、身近な自然を題材にした科学絵本を数多く手掛ける絵本作家。このアシナガバチを観察していたのは今から45年以上も前のことで著者はまだ40代だった。そして、現在、当時の「おかあ」の齢を超え、この作品が書き下ろされた。ひと夏のアシナガバチの観察内容は1975年6月号『月刊かがくのとも』(福音館書店)として絵本化され、1984年に特装版になっている。

 お薦め度:★★★  対象:人も蜂も共に生き、その生命を全うすることに思いを馳せる時に…
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