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本の紹介「アリ語で寝言をいいました」

「アリ語で寝言をいいました」村上貴弘著、扶桑社新書、2020年7月、ISBN978-4-59408546-9、900円+税


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【森住奈穂 20201216】【公開用】
●「アリ語で寝言をいいました」村上貴弘著、扶桑社新書

 アリが大好きな著者。専門のハキリアリにとどまらず、いろんなアリのすごいところを紹介してくれる。数年前に日本中が大騒動となったヒアリの章もある。今後刺されることがあるかも知れないので、しっかり読んでおこう!一口にアリと言っても、1万1000もの種と5000万年もの歴史があり多種多様。有名な働かない働きアリはハキリアリには該当なし。100%、24時間365日活動(15分おきに数分の休憩有)し、寿命はわずか3か月…アリ版蟹工船。研究のために巣掘りをすると兵隊アリに襲われて衣服は銃弾を受けたかのようなズタボロ状態になるらしい。クルミの中に巣を作る体調2ミリのヒメナガアリ、巣を覗いてみたいなぁ。奥深いアリの世界に触れられる一冊。

 お薦め度:★★★★  対象:寝言がアリ語とはどんな生活なのか、覗いてみたいひと
【萩野哲 20201212】
●「アリ語で寝言をいいました」村上貴弘著、扶桑社新書

 女王がいなくなったコロニーではどうするか? 種によってそのまま滅びたり、とりあえずオスを産んだり、がんばってメスを産んで存続したり、いや、女王を実力(運?)で決めたり…とても複雑。平易な文章で書かれているにもかかわらず、ますますアリがわからなくなった。まあ、15000万年の進化の歴史がそうさせているのだろう。タイトルの“アリ語”については、多くのアリが腹柄節(アリ特有だって!)から発音している事実がわかってきたことについて1章が割かれている。格安かつ小型のトップシークレット録音機が気になる。著者のアリ愛にあふれていて楽しい反面、原始的とか進化型とか、たくさんの種類が出てくるアリの系統的なリストを付けておいてくれたらよかったのにと思う。

 お薦め度:★★★  対象:もっとアリの秘密を知りたい人
【六車恭子 20201218】
●「アリ語で寝言をいいました」村上貴弘著、扶桑社新書

 アリは一億5000万年前に出現、約5000万年前に現在のアリの姿に。コロニ一がひとつの生き物「超個体」。アリの社会は効率よく分業がされている。
 著者の専門は農業するアリ!究極の地産地消のキノコアリ。アリの体内に有用な菌を選択するシステムがあった!と著者は類推する。キノコアリの巣の中は「小宇宙」。彼らが栽培している共生菌は地球上で彼らの巣の中にしかない。キノコのカサを捨て胞子を作ることをやめ、キノコアリの巣のなかでアリに世話になりながらクロ一ン繁殖が5000万年くらい自らの遺伝子をひたすら繋ぎ続けている!なんという深い信頼関係!まったく別の生き物でありながら、互いをここまで必要としている!キノコアリの巣の中に は寄生菌をやっつける抗生物質まであるのだ。ハキリアリのこの洗練された農業では換気システムが構築され、巣内の湿度や温度がキ一プされ、完璧な生産管理がなされている。女王の寿命は10〜15年、新女王は口の中の特殊なポケットに巣の菌糸をいれ、結婚飛行に飛び立つ。
 著者はアリ語を解読し、視覚ではなく、嗅覚やフェロモンなどの化学物質でコミュニケーションをとっているという。平和的なアリばかりではない。近年「ヒアリ」上陸は正しく恐れる必要を強調する。われわれ人間の先人(?)、アリに教わることはまだまだ途上にありそうだ。まさしく著者は私たちの頼もしいストーカ一にちがいない!

 お薦め度:★★★★  対象:生きる指針を探しているかた
【和田岳 20210221】
●「アリ語で寝言をいいました」村上貴弘著、扶桑社新書

 アリ研究者が、アリの形態と社会とコミュニケーションと繁殖などに見られる驚きの側面を中心に、アリをさまざまな角度から紹介していて、アリの面白さがよく伝わる一冊。
 最初にナベブタアリ、ミツツボアリといった不思議なカーストをもったアリ、ツムギアリ、グンタイアリといった変わった暮らしをするアリ、さらには爆発するジバクアリなど、不思議なアリを次々と紹介して、つかみはOK。
 その後は、農耕するハキリアリ、アリがしゃべる話、存在しない有翅メスを求めて飛び立つアミメアリのオス、「2:6:2」働きアリの法則は本当か?などと、アリの意外な側面が次々と紹介される。各章末にはさまれるコラムをはじめ、研究エピソードも楽しい

 お薦め度:★★★  対象:アリのすごさ、面白さを知りたい人
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