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本の紹介「21世紀に読む「種の起原」」

「21世紀に読む「種の起原」」デイヴィッド・N.レズニック著、みすず書房、2015年10月、ISBN978-4-622-07936-1、4800円+税


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【萩野哲 20160411】【公開用】
●「21世紀に読む「種の起原」」デイヴィッド・N.レズニック著、みすず書房

 生物学のみならず、他の分野でも大きな影響を与えたダーウィンの「種の起源」は、なぜか自分の周りを見ても、読んだ人が少ないようだ。その原因は、難解であることや、今更感もあるだろう。実は本書の著者も「種の起源」を読むのにかなり時間を要したと記している。しかし、その過程で「種の起源」の先見性と現代の生物学に与えた影響や、理論とは何かについて学ぶ優れた教材として、その重要性を本当に理解するに至り、「種の起源」がより多くの読者に受け入れられることを目標に本書を執筆した。「種の起源」の難解さの原因は、複雑な問題をきちんと切り分けていないことにある。著者はこれを明確に@自然淘汰、A種分化、およびB起源に分け、ほぼ「種の起源」に書かれてある順にそれが書かれた意味、背景ならびに後の生物学が感化された影響について極めて丁寧に解説している。もちろん、ダーウィンの時代には解明されていなかったこと(例えば遺伝学)についてダーウィンは間違った解釈もしているが、それにも増して、ダーウィンの洞察の深さをあらためて認識することができる。「種の起源」にただひとつ示されている図についても、奥深い意味が込められていることがやっと理解できた。ダーウィンは知らなかったが、進化は必ずしも人の一生の間に見ることができないものではなく、著者が専門とするグッピーやその他の生物でも短期間で自然淘汰が観察できることも紹介されている。あとがきで、本書が「種の起源」の最高の解説書である旨紹介されているが、間違いないだろう。

 お薦め度:★★★★  対象:進化をより深く考えたい人。可能ならばダーウィンに読ませたい
【六車恭子 20160826】
●「21世紀に読む「種の起原」」デイヴィッド・N.レズニック著、みすず書房

 今から150年も前に書かれた「種の起源」、その視座の遠大さと慧眼に改めて脱帽した!
 ダーウィンはそこで自らの理論が「謎の中の謎」−種の起源−を解明したと述べることから筆を起こした。これが「自然淘汰」というメカニズムだった!
 地球誕生から地質学的時間が経過した19世紀半ばに、「自然淘汰が生命科学の中心なのだ!」と発表したのだ。その真意は当時も今も正しく理解はされていない。その手引書を書いたのが、当時、ダーウィンが見つけることができなかった証拠を我々の前に開陳してくれたのが本書だ。
 個体間に見られる変異こそ進化の火種となる。小さな集団より大きな集団のほうが見つかりやすい。変異は環境の変化や他の生物との相互作用が引き金となる。潜在的能力は世代から世代へ保持され、進化はほとんどの場合、新しい機能のために古い機能が再利用される!
 こうして種は捕食者や資源をめぐって競合する多種や病気などなどから、変化をともなう由来を経てきたのだ。

 お薦め度:★★★★  対象:いまここにいるあなたを迷宮に誘う!
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