質問コーナー 過去のやりとり(1999年7月-9月)

寄せられた質問 ・ 質問への回答

質問

1999/9/29  堺市の鳳南小学校5年生さんの大阪のシラカバについての質問
1999/9/26  大阪府のたんちゃんさんのタヌキについての質問
1999/9/23  名古屋市の岡田さんのアオマツムシの分布についての質問
1999/9/23  岡山市のみぃちゃんの姉さんの家の中の虫についての質問
1999/9/22  三重県の谷口さんのヒルについての質問
1999/9/18 和歌山県野上町の高木ゆかさんのおいしい水についての質問
1999/9/17 徳島県松茂町の樋口清文さんのアゲハチョウについての質問
1999/9/17 神奈川県横浜市の匿名希望さんの北米産テントウムシについての質問
1999/9/16 兵庫県宝塚市の猿人さんのスズメについての質問
1999/9/8 大阪市の花井さんの昆虫の数え方についての質問
1999/9/6 大阪府のLainさんの葉脈標本の作り方についての質問
1999/9/1 滋賀県の山谷さんのドバトの繁殖についての質問
1999/8/31 和泉市の翔吾の父さんの樹についての質問
1999/8/27 川西市のなべさんの友達さんのカメムシについての質問
1999/8/27 吹田市の樽美真生さんのゴキブリについての質問
1999/8/25 東京都の磯村 司さんのラウンキエの生活形についての質問
1999/8/24 兵庫県加古川市の山岡広樹さんのカブトムシにつく虫についての質問
1999/8/21 堺市の春日建二さんの中央アジアのツバメの渡りについての質問
1999/8/20 東京都の松原なおみさんの学芸員についての質問
1999/8/18 栃木県黒磯市の枝さんの日本のカマキリについての質問
1999/8/13 川崎市の 山田博康さんのコアラのへそについての質問
1999/8/12 島根県浜田市の永野 聖さんのオジギソウについての質問
1999/8/11 東京都三鷹市の高遠徳尚さんの謎の莢についての質問
1999/8/5 福岡のサザエさんのタバコシバンムシについての質問
1999/8/5 千葉県の匿名希望さんの家の中の虫についての質問
1999/8/5 東京都文京区の夕子さんのヤギの黒目の形についての質問
1999/8/5 大阪府のかもめさんのクマゼミの色についての質問
1999/8/4 京都府の匿名希望さんのムカデについての質問
1999/8/4 東京都大田区の小田征史さんの昆虫の心臓についての質問
1999/8/3 兵庫県西宮市の谷川智康さんの淡路島産のアンモナイトについての質問
1999/8/2 東京都文京区の夕子さんのカメについての質問
1999/7/27 川西市の安田さんの化石を採取できる場所についての質問
1999/7/22 東京都日野市の横尾幸江さんのチョウの行動についての質問
1999/7/19 東京都町田市の山田さんのガについての質問
1999/7/16 横浜市栄区の匿名希望さんのヤマモモについての質問
1999/7/15 千葉県流山市のガクトさんのダンゴムシについての質問
1999/7/8 東京都のすみやんさんのアシナガバチの巣の取り除き方についての質問
1999/7/7 岐阜市のM.T.さんのドングリの樹についての質問
1999/7/6 東京都のカメカメハさんのカメムシについての質問
1999/7/6 福井県の松岡由浩さんの昆虫の成長についての質問
1999/7/1 茨城県つくば市の岩永千沙子さんのシダについての質問


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質問への回答
1999/9/29  堺市の鳳南小学校5年生さんからの質問
 我が校には、大阪にはめずらしく白樺の木があります。8年前には3本あったのですが、今は、1本だけ。それも枯れかけています。やはり、温暖化のせいかとも思うのですが、なんとか生き延びさせる方法はないでしょうか。

【岡本学芸員の答え】
 シラカバは、本州の中部以北の高原の涼しい土地の木で、生育が早いかわりに寿命の短い木なので、大阪でいつまでも生育させるのは難しいでしょう。東京あたりの造園をやっている人の話では、せいぜい20年もてばよく、枯れたら植え直す、というつもりでやっておられるようです。多くは15年頃から弱りはじめるそうです。大阪では、もっときびしいでしょう。

1999/9/26  大阪府のたんちゃんさんからの質問
 我が家の裏山にタヌキがいます。今後も共存していきたいので、餌はやらない方がいいと思うのですが、いかがでしょうか。餌をやって増えすぎたらよくないのではと考えています。
 タヌキの鳴き声はどのようなものでしょうか。犬でも野犬は鳴かなかったと思うので同様に鳴かないのか、飼えば鳴くようになるのか。

【和田学芸員の答え】
 野生動物に餌をやることは、いろいろな問題を含んでいます。とてもそれを網羅することはできませんが、思いつくままにあげると、
●人の生活地域に近づきすぎて、人との間でトラブルが生じる。
 →人間に病気を移したり、逆に人間のペットの病気に感染してしまうなど。
●人を襲うようになる。 →箕面のサルを思い浮かべましょう。
●自分で食物を探そうとせず、人間に依存するようになる。
 →野生味がなくなる、というわかったようなわからないような問題点を除けば、給餌が打ち切られると生活出来なくなる可能性でしょうか。あるいはその動物の生態自体が変化することに問題があるのかもしれません。
●不自然に1ヶ所に集まりすぎて、伝染病によって個体群に大きな打撃を与える恐れがある。
●給餌を受けた種が不自然に増加する。
 →奈良のシカや高崎山のサルを思い浮かべましょう。必然的にその地域の生物群集全体に影響を与えます。

 一方で餌不足のときは、少なくとも餌をもらった動物は当座は助かっているのも事実でしょう。餌を与えるかどうかは、こういった問題点がありうることを考慮した上で、判断してください。

 タヌキも一応声を出すけど、あまり頻繁に鳴く動物ではないようです。手元の本をいくつか見ましたが、「冬から春の繁殖期に、クーンクーンという発情期特有の声が聞かれることがある」【アニマル・ウォッチング、安間繁樹著、晶文社】といった記述があった程度でした。


1999/9/23  名古屋市の岡田さんからの質問
 アオマツムシは、都市部を中心に分布を広げていると聞きました。確かに我が家周辺では、夜ともなると街路樹の上からうるさいほどに聞こえて来ます。
 ところで、このアオマツムシは、大陸よりの帰化種と聞いておりますが、今では本州のどのあたりまで分布を広げているのでしょうか。というのも、盛岡(市内だそうです)にいる知人は、アオマツムシを聞いたことがないと言っているのです。よろしくお願いいたします。

【金沢学芸員の答え】
 日本直翅類学会発行の連絡誌「ばったりぎす」120号によれば、北は新潟県・福島県まで、南は熊本県・宮崎県(声のみ)までとなっています。岡山県、鳥取県、島根県、徳島県、愛媛県、大分県、佐賀県の記録がないことになっていますが、たぶん生息するでしょう。山陰地方ではこの数年で分布をどんどん拡大していると聞いています。

1999/9/23  岡山市のみぃちゃんの姉さんからの質問
 最近体に赤いポチポチが出て、病院に行くとダニにかまれたのでは、ということで塗り薬をもらいました。バルサンを使用したりこまめに掃除をしていますが、あまり変わりありません。2ヵ月の子供は刺された跡はないのですが・・・ ダニ以外にこのような症状が出る虫がいるのか教えてください。

【金沢学芸員の答え】
 赤いポチポチだけでは判断できませんが、このような症状の原因がダニであることは、案外少ないのではないかと考えています。
 近頃よく持ち込まれるのがノミです。フローリングしている家が増えて、板の間にたまった有機物を幼虫が食べて育つようです。ノミを知らない人が増えているので、気がつかないようです。板の間にすきまがあれば、きれいに掃除しておくことです。バルサンは密閉度が高くないと効かないでしょう。
 吸血するカメムシの一種であるナンキンムシも増えています。タバコシバンムシなどに寄生するシバンムシアリガタバチも刺します。家の中に入ってくるアリも咬むことがあります。
 肌の露出したところをやられますので、2カ月のお子さんが被害を受けないのではないでしょうか。


1999/9/22  三重県の谷口さんからの質問
 家の庭に年に1回現れるヒルのような生き物があります。形は、ヒルなのですが、体長が10センチくらいで幅が2センチくらいあります。ヒルにしては大きすぎるように思うのですが、形はやっぱりヒルです。でも、色がちょっと派手で、表が黒で、裏が、オレンジ色がかった黄色です。ちょうどムカデの色のような感じです。こいつはいったい何者なのでしょう。いったいなにを食べているのでしょう。私の家は、山の中に立っています。
 ちょっと違った質問になりますが、「以前、大杉谷に行ったとき、山ビルが登山道の石の上で登山者が通りがかるのを待っていました。そのとき、ふと思ったのですが、ヒルは血だけを食物にしてしているのでしょうか。一生で、どの位の血を吸うのでしょうか。血を吸えなかったヒルは死んでしまうのでしょうか。動物の血を吸うというのは、食物をとる戦略としてはかなり困難な戦略のように思えるのですが、そのためにヒルは何か工夫をしているのでしょうか。

【山西学芸員の答え】
 本当にヒルなら体の前端と後端にそれぞれ吸盤があり、それを使ってシャクトリムシのように這い進みます。そうでなくてジワジワと静かに這うようでしたら、コウガイビルではないかと思われます。また、コウガイビルなら頭の部分が半月形にひろがります。これらの点をチェックしてみてください。
 ヒルは、ふつう吸血して餌と摂っています。吸う量についてはよく知りません。ヤマビルはもっぱら恒温動物の血を吸うヒルで、木の上のような高いところにいて、下を通った動物の体熱(赤外線)を感知して、その瞬間に落下し、相手に取り付きます。


1999/9/18 和歌山県野上町の高木ゆかさんからの質問
 おいしい水(飲み水)について調べてみたいと思って、名水で有名な水をいくつか取ってきて自由研究で調べています。成分(PH、鉄分、COD、亜硝酸、硬度)はそのままの状態で調べました。おいしさを調べるため、そのままで飲んで調べたかったのですが、飲む時は煮沸してくださいと書かれていたため、家で煮沸消毒をしてから飲み比べてみました。そこで質問ですが、おいしさを調べたい時は、そのままの水を飲んで調べるべきなのでしょうか。一度煮沸すると味が変わってしまうものでしょうか?教えてください。また他においしい水の調べ方があれば教えてください。

【那須学芸員と石井久夫学芸員の答え】
 おいしい、という味覚の問題は、かなり判定者の個人差(味覚力、どんな水に慣れ親しんできたか、など)、その時の体調、水の温度,飲むときの気候などによって感じ方がかわると思いますので、難しいです。名水というのは、多くの人からおいしいという評価を得ているわけですから、一応おいしいということにして、まずいといわれる水と成分をくらべてみる必要がありそうです。そうでないとなぜおいしいと感じるかわかりません。煮沸か生水かも水温など条件を一定にしたうえで、両方飲み比べることと、煮沸すると成分がかわっているかどうか調べて比べてみることも必要だと思います。
 飲むとき煮沸してくださいというのは、大腸菌などが検出されたことがあるからでしょう。名水がわき水だとしたら、普通は、もともと雨がしみこんでふたたびわき出したものですから、大腸菌がふくまれることもあるわけです。水の専門家であれば、ある程度害になる危険を覚悟で実験することがあるかもしれませんが、そのまま飲まないように注意されているなら無理しない方がよいと思います。また知られている限りでは、煮沸で消えるような成分は味の良さには関係ないようです。
 わき水だけでなく深山の川を流れる水も、川によって味が違うものです。水が通過する場所の地質(地下水の場合は地層)によって、わずかではあってもとけ込む成分が違うため、味が違うわけです。わき水だとしたら、まわりの地質や岩石、井戸だとしたら、水をくんでいる深さ、山の中か平野か、海に近いか遠いかなどで、味がどう違っているかを調べたらおもしろいかもしれません。
 ちなみに蒸留水はそのまま飲んでみても、緑茶や紅茶などを入れてみても美味しくないことを体験してみても良いでしょう。


1999/9/17 徳島県松茂町の樋口清文さんからの質問
 1999年9月13日に五齢幼虫に脱皮したあげはの幼虫を飼育しています。昨9月16日と本日9月17日まったく葉(みかんの葉)を食べません。まださなぎになる訳でもないように思います。食欲盛んに食べてさなぎになる準備をするべき時期だと思いますが、食べずほとんど動きません。原因は何だと思われますか。お教えください。

【金沢学芸員の答え】
 ハチやハエに寄生されているか、病気であるかのどちらかだと思います。新鮮な葉を用意して、様子をみるしか、手の打ちようがないでしょう。
 寄生を防ぐには、容器の中で単独で飼育することです。また、病気を防ぐには、容器などを加熱殺菌して使うことです。


1999/9/17 神奈川県横浜市の匿名希望さんからの質問
 私は今、教育ビデオの翻訳をやっています。内容は、テントウムシの生態についてです。カナダの番組で、いくつかテントウムシが出てきます。その日本名を色々と探してみたのですが、分かりませんでした。どんな資料で調べればいいか、お教えいただければ、幸いです。
 以下にテントウムシの名前(スペルに若干の間違いがあるかもしれません。番組から台本を起こした人間も正式なスペルを見つけられなかったようなので)と、簡単な特徴を記させていただきます。
・Delfastus Pucilous(黒い小さなテントウムシで、コナジラミの幼虫しか食べない種です)
・Maculae ladybug(黒地に赤の斑紋が12個、ついているものです。雑食性で、アブラムシやコロラドハムシの幼虫を食べます。このテントウムシに関しては、もしかしたら学名ではなく斑型テントウムシという意味で言っているのでは、とも思っています)
・Anatus Mali(赤地に白ふちの黒斑がついているテントウムシで主に木の上に住んでいるそうです。)

【初宿学芸員の答え】
 日本のように図鑑に一般名が載っているような場合というのは世界的には希なケースで、マイナーな種類になるほど学名がそのまま一般向けの本やビデオ(のナレーション)に載ったりします。欧米の場合はアルファベットを用いているので、さほど違和感なく処理できるのですが、日本だと学名そのままというのは難しいものです。
 今森光彦さんや海野和夫さんのような外国の昆虫写真家の方々は、その出版時に日本名をつけている場合も少なくないようです。だから同じ種類なのに別の名前がついている、ということもしばしばです。
 今回もいずれも北米の種類で、日本名というものは特に存在しません。写真家の人たち同様の処理の仕方をするのがよいかと思います。

・Delfastus Pucilous
Delphastus pucilous という学名の種類と思われます。日本には近い種類がいません。デルファスタステントウとでも訳してはいかがでしょうか?

・Maculae ladybug
これは学名の一部を用いて一般名にしている場合と思います。「ジュウニアカマダラテントウ」というのでいかがでしょうか?

・Anatus Mali
日本のウンモンテントウという種類に近い種類です。私なら無難に「ウンモンテントウの一種」とするか、「マリウンモンテントウ」と命名すると思います。

以上は、
・Arnett, R. H. et al. (eds.), How to know the beetles. Wm. C. Brown Company Publishers, 1980.
・Arnett, R. H. 1973. The beetles of the United States. The American Entomological Institute.
という資料を参考しました。


1999/9/16 兵庫県宝塚市の猿人さんからの質問
 6月頃に家人が巣から落ちて片足の関節を怪我したスズメの雛を拾ってきました。この時点で見た目はほとんど成鳥と変わりなかったようです。とりあえず、鳥かごに入れて家の中で育てました。人の頭や肩に止まったりしてよくなついていたのですが、三日前、鳥かごから出していた際に、家人が頭に赤いタオルをのせて部屋の中に入ってきたのを見てパニックになり、たまたま空いていた裏口から外へ出ていってしまいました。それ以降帰ってきません。
 巣から落ちて以来ずっと家の中で暮らしていましたので、天敵から身を守ったり、スズメ同士のコミュニティーに入ったりできるかどうか心配です。野生に戻って無事に生きていてくれればいいのですが、実際うまくやっていけるものなのでしょうか?

【和田学芸員の答え】
 スズメ同士のコミュニティーにうまく加われるかどうかは、それほど心配することはないと思います。セキセイインコのような別種でも平気でスズメの群混じってますし。ただし、小さいときにスズメに接していないと、配偶者選びの時に問題が生じる可能性があります。
 若いスズメは、大人のスズメに比べると、何事につけ鈍くさく、死亡事故も多発します。窓ガラスに衝突したり、車にひかれたり、カラスやネコに捕まったり。死んでいるのを見かけるスズメの90%以上は、今年生まれの若いスズメと言っていいでしょう。人に育てられても、スズメの親に育てられても、天敵や窓ガラスや車の恐さは自分で学んで行くしかないと思います。唯一の違いは、人間を恐がらない点でしょうか。
 というわけで、野生に戻ることはそれほど難しくはありませんが(飛んでいった時に野生には戻ってますし)、無事に生き延びるのは大変でしょう。しかしそれは人間に育てられたからではないと思います。


1999/9/8 大阪市の花井さんからの質問
 取引または証明に使用する法定計量単位は、1999年9月30日をもって「SI単位」に統一され、mmHg(血圧測定を除く)、cal(栄養分野を除く)等の「非SI単位」は使用できなくなります。そこで、気になるものに「昆虫」の数える際の単位があります。昆虫の数を数えるには「匹」の他に蝶などに用いられている「頭」を見かけますが正しくはどちらなの数え方なのでしょうか、教えてくださいますようお願い申しあげます。

【金沢学芸員の答え】
 
「匹」も「頭」のどちらもよく使われており、特に巷では「匹」、動物学などの文献では「頭」が多いと思います。どちらが正しくて、どちらが間違いということではないでしょう。昆虫学の論文では「個体」や「頭」がほとんどで、「匹」と書くと論文の格が下がります。その程度の問題です。また、蝶で「頭」が多いとは思いません。

【茂似太の勝手な補足】
 
ちなみに、「匹」や「頭」は数えるときの単位ではなく(単位は個体です)、単位につける語(中国語でいうところの量詞)にすぎません。計量単位と同列に論じられるものではないと思います。


1999/9/6 大阪府のLainさんからの質問
 私達自然科学部は高校の文化祭で「葉脈標本」を展示しようとしています。しかし、作成方法は分かったものの、どの葉が適しているか?葉によってどれくらい薬品つけるべきか?などがはっきりしていないのです。なのでこのことについて分かることがあれば教えていただけると嬉しいです。

【塚腰学芸員の答え】
 
すぐに作製できて、しおりにもできる葉脈標本作製法をお知らせします。

◎作業の概略:薬品処理により葉肉を軟らかくして、葉脈は残し葉肉のみを除去する。
◎適した葉:葉脈が丈夫な葉でないと、葉肉といっしょに葉脈も落ちてしまいます。したがって、ヒイラギ、セイヨウヒイラギがおすすめ。キンモクセイ、アセビでもうまくいくようです。
◎作業手順:
1.水酸化ナトリウム10%水溶液を作製し、大きめのビーカーに入れ、葉とともに加熱する。だんだん葉が茶色になってきます。 ★注意:沸騰しないように注意する。水酸化ナトリウム溶液は危険な薬品ですので、沸騰して飛び散り目に入ったり、皮膚や洋服に付かないように十分注意する。
2.10〜15分間加熱したら、割り箸で取り出し、じゅうぶん水洗する。 ★葉が柔らかくなっているので、尖ったピンセットだと穴が空くかもしれません。
3.ガラス板の上に載せ、歯ブラシでトントンたたいて葉肉を落とす。 ★葉肉が簡単に取り除けないようでしたら、もう一度加熱してください。
4.水で洗って、古い電話帳などにはさんで乾かす。
5.必要であれば漂白、染色をする。

 どのような方法で行われる予定かわかりませんが、私が知っているのは上記の方法です。この方法では、(溶液の濃度-溶液の温度-葉の丈夫さ)の関係で時間が決まります。溶液の濃度と温度は同じ条件とすると、処理しようとしている葉の丈夫さ(固さ)によって時間は異なります。10〜15分を目安にして、葉肉を落とせなければ、さらに煮てください。水酸化ナトリウム10%水溶液で30分と書いてある資料もありますが、葉によって異なりますので、時間が不足の場合、追加して時間を長くしていくと良いと思います。水酸化ナトリウムの取り扱いには十分注意してください。


1999/9/1 滋賀県の山谷さんからの質問
 ドバトの雄雌の見分け方を教えて下さい。家のベランダに巣があるので毎日観察しているのですが、図鑑を見ても野鳥の図鑑なのでわかりません。
 またうちにいるハトは、いつも1羽ですが、雌がずっと温めているということでしょうか。あと、はとはツバメのように親が餌をせっせと運んでいないように見えるのですが、どうしてヒナは、あんなにすぐ大きくなるのでしょう。単に餌をやるところを見ていないだけでしょうか。

【和田学芸員の答え】
 
ドバトの雌雄の識別は、難しいです。「岩田厳(1924)伝書鳩雌雄の鑑定法.鳥(16):80-92.」という論文によれば、総排泄口の内側の形、から判定できるそうです。また大まかな判定は、鼻瘤(上くちばしの根元の膨らみ)の形も参考にできるそうで、雌は鼻瘤の中央に縦に白い肉線があり、雄にはそれがないといいます。しかしこういった判定は、ハトを捕まえなければなかなかわかりません。測定値から言えば、雄の方が雌よりも少しだけ大きいので、よく見ればわかるかもしれません。
 外形からではなく、むしろ行動から雌雄を判断する方がいいでしょう。交尾を観察できれば上が雄ですし、求愛ディスプレイ(相手の前で胸を膨らませて、頭を動かしたり、動き回ります)をしているのは雄です。また抱卵から雌雄を判断することもできます。
 ハトは、雌雄が、巣づくりから抱卵、給餌のすべての段階で協力して繁殖します(ただし、分担がきちんと決まっているので、巣で見ているだけだと、確かにたいてい1羽しか見ないことになると思います)。夜に抱卵しているのは雌です。一方、昼間(午前10時頃から午後2時頃まで)は、雄が抱卵する傾向があります。午前と午後に1回ずつ、交代があります(抱卵期初期には多少いい加減になります)。
 ツバメなどの小鳥類と違って、ハト類は、1日にほんの数回しかヒナへの給餌を行いません。ヒナが大きくなってきて、親鳥が巣にいてずっとヒナを暖めなくなると、親鳥が巣に給餌にやってくるのは、両親合わせても一日に10回もありません。よほど注意深く観察していないと見逃すでしょう。ハト類は給餌回数は少ないですが、ピジョンミルクと呼ばれる高栄養の分泌物を与えるので、ヒナの成長は早いようです。


1999/8/31 和泉市の翔吾の父さんからの質問
 1.金剛山ロ−プウエイ前バス停から念仏坂を登り、10分ほど行ったところの沢筋に大きなトチノキがあるのですが、実が落ちているのを見たことがないのです。どうしてでしょう、トチではないのでしょうか。
 2.8月26日に六甲山の紅葉谷(有馬から極楽茶屋の登山道)に行って来ました。途中、直径2cm位のうす赤っぽい実が落ちていました。木を見るとその実は上向きに付いていてとてもたくさん実っていました(下の写真。撮影者は丹波の赤尾さんです)。図鑑で調べましたがわかりません。何という木でしょうか。

 3.和泉市松尾寺はヤマモモがたくさんあります。今年も6月末に実を採ってきて、ヤマモモ酒を作りました。ところで、ヤマモモの実は直径1cmくらいのものが多いのですが、松尾寺公園に一本だけ直径2cmちかくの大きな実を付けるヤマモモがあるのですが、ちがう種なのでしょうか。松尾寺周辺はヤマモモがいっぱいはえていて、たくさんの実がみられます。でもサイズは同じくらい(1cm)です。

【岡本学芸員の答え】
 
1.トチノキの花には両性花と雄性花がありますが、一つの株に混生します。したがって、株には雄雌はありません。金剛山のトチノキに何故実がならないのかはよく分かりません。自家不和合(自分の花粉で受粉したのでは実ができない)の傾向があるのかもしれませんが、単独で生えているトチノキでも、けっこう実を付けているような印象を受けているのですが。
 2.ヤマボウシです。
 3.ヤマモモの実のサイズには、かなりばらつきがあります。実の形がヤマモモならば、ヤマモモに間違いないでしょう。徳島県からは大きな実のヤマモモが出荷され市販されています。栄養条件等でも実のサイズは変わるのかもしれません。


1999/8/27 川西市のなべさんの友達さんからの質問
 川から15mほどの所にあるマンションに住んでいます。秋になるといつもカメムシらしき昆虫(丸くて黒くてつぶすと臭いです。)がベランダに飛んできます。ベランダ側には、用水路があり一部雑草だらけのところがあります。同じマンションの住人の話によるとその用水路の壁面に無数のカメムシがくっついていたそうです。9月ぐらいから10月ぐらい約一ヶ月間ベランダに飛んできて洗濯物をはじめ物干しや何にでもくっついています。洗濯物を取り入れる時必ずついているので、振り払って入れています。そうすると、羽部が硬いからか、小石が転がるみたいな音とともに落ちていきます。しかし、数も多くなると1日に30匹ぐらい飛来してきて、はじめはガムテープにくっ付けて取っていたのですが、そのうち掃除機で吸引するようにしました。階が低くなるほど多いようで、1階の方は洗濯物は室内で干しているそうです。うちの下の方は、ベランダに蚊取り線香をつけてられますが、効き目はあるのでしょうか。効果的な駆除方法知りたいのですが何かありますでしょうか。やはり、用水路の方で何か対策した方が良いのでしょうか。

【金沢学芸員の答え】
 
その昆虫は、たぶんクズなどのマメ科植物の汁を吸って育つマルカメムシでしょう。蚊取り線香がきくとは思えません。
 飛んでくる発生もとのクズなどのマメ科植物がわかれば、それらを夏に刈ることで個体数を減らすことができます。殺虫剤散布は天敵相を減らしますので、長期的にみるとかえって逆効果です。それ以外の対策は思いつきません。


1999/8/27 吹田市の樽美真生さんからの質問
 ゴキブリについての質問です。うちの台所にゴキブリホイホイが4つしかけてあります。それを毎朝、チェックしていて、気付いたんですがおとなのや、赤ちゃんのや、それに小・中学生くらいのは、捕まっているんですが、高校生くらいの羽がちょうど半分くらいまでのびてるって感じのがどのホイホイにもいつ見ても捕まっていません。このくらいの歳のゴキブリはどうして、捕まらないんですか。教えて下さい。
 それから、オスとメスはパッと見ただけで分かるほどちがうんですか。それもできたら教えて下さい。

【金沢学芸員の答え】
 
そのゴキブリは、普通の住宅に多いクロゴキブリだと思います。クロゴキブリは、脱皮回数が多く、10〜11齢を経過すると言われています。10齢幼虫はたぶん赤褐色で、ハネはかなり短いはずです。つまり、ゴキブリに限らず、昆虫の成虫のハネは、幼虫や蛹のときにはたたみ込まれていて、外見上はかなり短く見えるのです。それが脱皮して成虫になると,たたみ込まれていたハネが伸びて、立派なハネになるのです。
 このことを確かめるためには、クロゴキブリを飼育して観察することです。ハネの短い終齢幼虫が脱皮して、成虫になることを確認するわけです。毎朝チェックする根気があれば、飼育は簡単です。エサは人間と同じです。

 昆虫の多くは、メスが大きくて、オスが小さいのが普通です。もちろんカブトムシのような例外があります。クロゴキブリも、オスの体長は約25mmで、メスが25〜30mmと、少しメスが大きいです。しかし25mmくらいのクロゴキブリの成虫の場合には、体長だけでは見分けられません。
 そこでゴキブリの場合は、腹部の先端の形でオスとメスを見分けます。オス・メスとも1対の尾肢という目立つ突起がありますが、オスには、その中央にさらに1対の細い尾突起があり、メスにはありません。


1999/8/25 東京都の磯村 司さんからの質問
 この間小説を読んでいたらラウンケルの生活系というのが書いてあったので、興味を持って図書館で調べたのですが、どの本に書いてあることも難しすぎていまいちよく理解できません。わかりやすく教えてください。

【佐久間学芸員の答え】
 
生態学の用語ですが、「ラウンキエの生活形」(これはアメリカ流の読み方でしょうか)としても知られています。主に冬越しの仕方で植物の生き方を整理してみようというものです。
 ラウンキエの生活形では、植物は主に5つのタイプに分けられます。着目点は「年を越す組織」の位置です。寒さや乾燥など、生活に不適当な期間をくぐり抜ける組織をどういう場所にもっているのか、と言うことです。中でも、冬芽や球根、タネといった翌年の体を作るために必要な成長点が重要視されます。

1.地上植物:樹木は地上のより高い位置に芽を持っています。芽は寒さや乾燥に耐えるためのしっかりしたしくみになっていることが多いです。
2.地表植物:地上でも地面近くは風などによる影響も小さくなります。また雪におおわれ保護される場合もあります。こうした場所(地表25cm以下)に芽をつける低木がここに入ります。高山や北海道で良く目にするはっていたりロゼット状になっている樹です。
3.半地中植物:地表に芽を持つ植物です。多年生草本植物などが入ります。
4.地中植物:多年生植物のうち、芽が球根や地下茎などで完全に地下にあり、保護されているものです。
5.一年生植物:生活に不適当な期間をタネで越す植物です。

 この5つの生活形を持つ植物の比率は環境によって大きく変わります。


1999/8/24 兵庫県加古川市の山岡広樹さんからの質問
 カブト虫を飼育しておりますが、最近小さな白い(透明)虫(0.5mmあるかないか)が大量に発生しており、腐葉土の中や表面にもいっぱいいます。ショウジョウバエ?が、数匹カゴ内にいますので、その幼虫かなぁと思っていますが、その正体はわかりますでしょうか?
 また、カブト虫への影響はありますか?ある場合は撃退方法は?
 以上、よろしくお願いいたします。

【初宿学芸員の答え】
 
カブトムシやクワガタムシを飼っていて、白い虫がたくさんついたという質問はよく受けます。おそらくほとんどがダニだと思います。甲虫につくダニについては、「1998/8/9 大阪府のやっくんからの質問」を参照して下さい。
 なおダニが発生したら、腐葉土を取り替えるようにしたほうがいいと思います。このダニは、おそらく腐葉土そのものを食べているのではないかと思っています。新しい腐葉土にもその発生の原因となるもの(卵など)はもちろん入っている可能性はあると思います。しかし家庭菜園に利用する分には何も問題ないと思います。
 それと、ショウジョウバエは樹液や果実など、カブトムシが好きな食べ物によく集まる虫のひとつです。ある程度、発生するのはやむを得ないと思います。カブトムシに対して、とくに害はないと思います。


1999/8/21 堺市の春日建二さんからの質問
 今夏、タクラマカン砂漠の北部、天山山脈の麓を旅行しました。クチャ、アクスという街でツバメを見ました。その時はなんとも思わなかったのですが、渡りをするツバメがどのルートでやって来るのかという疑問をもちました。
 普通、ツバメは冬でも暖かいアジア南部から来ると思われます。しかし、クチャ、アクスという街の南部にはタクラマカン砂漠があり、更に、ヒマラヤ山脈があります。このルートは不可能に思います。南西部には世界の屋根というパミール高原があり、これも難しいと思えます。中国の雲南省経由ではチベット高原という難関があります。
 冬には氷点下の気温になる所ですから渡りをするのは確実です。教えてください。

【和田学芸員の答え】
 
 クチャ(庫車)やアクス(阿克蘇)といった地域で繁殖するツバメ(Hirundo rustica)は、ヨーロッパから中央アジアにかけて繁殖する基亜種Hirundo rustica rusticaにあたると思われます。この亜種は、冬季はサハラ砂漠以南のアフリカ、アラビア半島、インド亜大陸で越冬します。ヨーロッパで繁殖するツバメがどこで越冬するかについては、標識調査の結果かなりくわしくわかっています。しかし、中央アジアの個体群の越冬場所については、よくわかっていません。もっとも、クチャやアクスは亜種Hirundo rustica rusticaの繁殖分布のほとんど東の端にあたりますので、おそらくインド亜大陸で越冬するのだろうと思います。
 このように越冬場所すらあいまいな状態で、ましてや渡りのコースはまったくわかっていません。個人的な見解では、ヒマラヤ山脈を越えるのは無理にしても、パミール高原辺りなら、ツバメにも通り抜けられるのではないかと思います。
 以上の記述は、おもに以下の本を参考にしました。
Turner, A. & Rose, C. (1989) A Handbook to the Swallows and Martins of the World. Helm.


1999/8/20 東京都の松原なおみさんからの質問
 私は学芸員の仕事に興味があるのですが、具体的にどのような仕事ですか?卒業後、どのようにしたらなれますか?また、大学の偏差値が学芸員の就職のときに関係ありますか?よかったら教えてください。
 追加 学芸員になるのはむずかしいですか? 

【茂似太の答え】
 
学芸員の仕事の基本は、研究、資料収集・保管、展示、普及教育の4つです。しかしその他にもいろいろとやることはあり、また上の4つの仕事の進め方も博物館や学芸員によって違います。というわけでなかなか一口に説明はできません。当館ホームページの学芸員の個人ページを見てもらえば、その一端を知ることができると思います。
 学芸員のなり方については、「
1999/1/7 高知大学の匿名希望さんからの質問」などを参照してください。
 大学での偏差値は学芸員の採用の際、なんの関係もないと思います。少なくとも、当館の学芸員の採用の際に問題にされるのは、採用試験のでき具合と、募集した分野の研究者としての能力です。学芸員の募集はとても少ないので、学芸員になるのはとても難しいです。自然史系の博物館の学芸員になりたければ、まず一人前の研究者になることを目指してください。


1999/8/18 栃木県黒磯市の枝さんからの質問
 今現在日本に存在するカマキリの種類と分布している範囲について教えてください。よろしくお願いします。

【金沢学芸員の答え】
 
「日本に存在する」を「日本で記録されている」と読み替えて、お答えします。
 日本産昆虫総目録(1989,九州大学農学部昆虫学教室・日本野生生物研究センター)という出版物には、カマキリ目で9種類が掲載されています。分布の概略も島ごとに載っています。一度ご覧になったらいいと思います。主要な自然史系博物館においてあります。ちなみにリストアップされている9種は以下の通り。
  ヒナカマキリAmantis nawai
  ハラビロカマキリHierodula patellifera
  ウスバカマキリMantis religiosa
  コカマキリStatilia maculata
  モリカマキリStatilia memoralis
  チョウセンカマキリTenodera angustipennis
  オオカマキリTenodera aridifolia
  サツマヒメカマキリAcromantis australis
  ヒメカマキリAcromantis japonica
 直翅目だけでなく,カマキリ目などのカタログを自力で作成されている市川顕彦氏のリストでは、16種ほど掲載されています。このリストでは分類学的扱いも詳しく掲載されています。このリストに関しては,日本直翅類学会にお問い合わせ下さい。
 このように、分類学的研究も遅れているのが現状で、今現在日本に存在するカマキリの種類は定かではありません。

【茂似太の補足】
 
日本直翅類学会の連絡先については、monitor@omnh.jpまでお問い合わせください(連絡先は個人宅のため公開できないもので…)。


1999/8/13 川崎市の 山田博康さんからの質問
 早速ですが、コアラにへそはありますか?
 先日、日本テレビの『所さんの目がテン!』という番組でコアラとユーカリの特集のときに<有袋類は胎盤がないため、とても早産。>という説明がありました。胎盤がないということは、へその緒もないと思いますが、どうなんでしょう?

【樽野学芸員の答え】
 
多くの有袋類は卵黄嚢胎盤を持っており、これを介して、子宮壁と緩くつながっています。そしてここから栄養をえています。ただし、有袋類の中でも、フクロアナグマは普通の哺乳類とおなじ尿奬膜胎盤を持っています。子宮とのつながりが弱いということですから、臍帯は発達しない、ということで、コアラには臍はないと考えていいでしょう。
 話は変わりますが、イヌやネコのおなかを見たことがありますか。イヌの場合、生まれて間もないころは臍らしいものが見られますが、成長するとどんどん不明瞭になってしまい、毛の伸びの方向が変わる様子で、元「臍」の位置がわかる程度になります。他の哺乳類をそのつもりで観察したことはありませんが、人間をはじめ霊長類のような明瞭な臍は、胎盤を持つ哺乳類でも、むしろ特異なものかもしれません。


1999/8/12 島根県浜田市の永野 聖さんからの質問
 夏休みの自由研究でおじぎそうについてしらべています、おじぎそうをくらい場所におくと葉がとじてしまいます、なぜでしょうか?

【藤井学芸員の答え】
 
「オジギソウの葉が閉じるのはなぜか」という問いには、「葉が閉じることの合目的意味」と「葉の閉じる仕組み」の二つが含まれていると思います。残念ながら、前者についての理由はわかりません。後者については、以下のように説明されます。オジギソウの葉柄の基部には膨らみがあり、この中に含まれる水分の圧力(膨圧)によって葉が支えられています。振動、光、温度などの刺激により、葉平基部の水分が移動して圧力(膨圧)が変化します。その結果、葉が閉じるわけです。
 また、「くらい場所におくと」という部分についてですが、振動などの刺激と同様の効果を光が持っている訳ですが、それがどうしてなのかは分かりません。なお、マメ科植物のほとんどは、夜に(暗く)なると葉を閉じる「就眠運動」をします。これはクローバー(シロツメクサ)でも見ることができます。


1999/8/11 東京都三鷹市の高遠徳尚さんからの質問
 7月13日に部屋の壁を登っている、変わった生物を見つけました。長さ1.5〜2cmほどの、豆のさやのような形をした平べったいまゆ(?)の間に、ハサミムシのおなかのような生物が入っていて、「さや」の合わせ目から体を半分出して、伸びたり縮んだりしながら移動していました。
 「さや」は「どら焼き」を2つ並べてくっつけたようになっていて、生物は2つの「どら焼き」の中を自由に行き来し、前進・後退します。2つの「どら焼き」の接合部分に当たるくびれ部分以外は、合わせ目が開くようで、生物は「くびれ」以外からはどこでも顔(?)を出します。「どら焼き」は泥を固めたようにもみえます。内側は合わせ目から見ると、白っぽいです。
 生物自身には、橙色の極短い毛(足?)のようなものがある様にも見えましたが、定かではありません。

 この生物は何という名前で、どういう生活をしているのでしょうか? また、参考になる書籍等があったらお教えください。

【金沢学芸員の答え】
 
 写真が不鮮明で断定はできませんが、マダラマルハヒロズコガの幼虫とケースに最も似ているようです。わりと普通種で、長居公園の植物園内のフェニックス?の幹にいるのを観察したことがあります。幹の表面の朽ちた部分や地衣類などを食べていると思われます。
 部屋の中に自力で入ることは考えられませんので、ついていた植木などを室内に持ち込んだりしなかったでしょうか。
 ケースの図は標準原色図鑑全集1「蝶・蛾」(保育社)の151ページに掲載されています。


1999/8/5 福岡のサザエさんからの質問
 最近とても小さな茶色い虫がうちの中を良く飛んでいます。とりあえず見つけたらがんばって殺しているのですが全く減りません。どうやらシンバムシ(多分タバコシンバムシ?)らしいのです。しかも最近シンバムシアリガタバチらしきヤツも見かけてしまいました。シバンムシアリガタバチは人に害があるらしいので駆除したいのですが(両方とも)。どうやら発生源は畳のようです。「畳を上げて駆除する」ようなことを見たのですが、それ以外の方法は無いのでしょうか?例えば市販の「バルサン」のような駆除剤は有効なのでしょうか?よろしくお願いします。

【初宿学芸員の答え】
 
タバコシバンムシは動物質・植物質を問わず、乾燥したものならほとんど何でも食べられる幅広い食性の持ち主で、誰の家にでもすんでいる虫といっても過言ではありません。家庭で大発生する場合は原因が畳である場合が少なくないようです。
 市販の燻蒸剤はさほど毒性が高くないので、100%の効果は望めないと思います。松崎ほか(1993)によると、畳のシバンムシの駆除には「高周波マイクロ波による加熱処理が最も有効」と記されています。どのようなものか詳細は不明ですが、おそらく素人で処理できるものではないので、発生がひどい場合には駆除業者に頼むしかないのではないかと思います。
 タバコシバンムシがいなくなれば、シバンムシアリガタバチもいなくなるでしょう。

参考文献  松崎沙和子・武衛和雄1993.都市害虫百科.朝倉書店.


1999/8/5 千葉県の匿名希望さんからの質問
 湿気の多い北側の部屋に置いてあるクローゼットダンスの床部分に虫がいます。たぶんダニだと思うのですが、白っぽい細かい虫です。これは、夏になるとよく見かけるように思います。下駄箱、洗面台の下、などで。よく本の中にいる虫はまた違うのでしょうか。
 普段気にも留めていなかったのですが、ふと凝視してみたら、細かいのがいっぱい動いていてびっくりしました。とても不快です。やはり扉をほとんど閉め切っているせいですか。とりあえず、今は扉を開けています。このせいで、部屋中にわくということはないのでしょうか。何か対策はありますか。よろしくお願いします。

【金沢学芸員の答え】
 
ふつうの家の中には、無数のダニ類がいます。また、ダニ類と間違えられてさわがれる昆虫にチャタテムシ類がいて、やはり家の中にたくさんいます。ダニ類のあしは8本、チャタテムシ類は6本で、頭部・胸部・腹部が明確に分かれているので、ルーペなどでよく見れば判別できます。ダニ類への対策はよく知られていると思うので、ここではチャタテムシ類と仮定して話をすすめます。
 チャタテムシ類はふつうの家にもたくさんいますが、古い家、畳の上にじゅうたんをしいている家や、湿気が多い家、細かい有機物が散乱している家に多いようです。
 チャタテムシ類であれば,全然心配いりません。ほとんど害はありません。できるだけ窓をあけて湿気を少なくする、部屋の掃除をこまめにして細かい有機物をなくす、熱風でダニを殺す掃除機などを使う、といったことで目につかなくなるはずです。


1999/8/5 東京都文京区の夕子さんからの質問
 こんにちは。今日はヤギについて質問があります。小さいときの記憶だから確かじゃないんですけど、ヤギの黒目は四角だった記憶があるんですけど、なんで黒目が四角なんですか?

【樽野学芸員の答え】
 
目をカメラのレンズにたとえると黒目(瞳孔)は光の通る部分で、そのまわりの色の付いているところ(虹彩;日本人なら焦げ茶色、白人なら灰色や青など)は絞りに当たります。写真を撮るとき、明るさに応じて、絞りを開閉してレンズにとどく光の量を調節するように、目も、虹彩の形を変えて、瞳孔の大きさを変え、網膜にとどく光の量を調節しています。ヒトの場合、虹彩が開いても絞られても光が通る部分は円形です。だからいつも黒目は円形を保ちます。ネコの場合、虹彩が開いたときには、瞳孔は円形ですが、絞られると縦長になります。だから明るいときのネコの黒目は、縦長です。ヤギの虹彩は絞られると、瞳孔は横長の楕円か長方形に近い形になるようです。それで、明るいところでは、黒目が四角になります。
 なぜ、動物の種類によって、絞られたときの虹彩の形が違うのかはわかりません。


1999/8/5 大阪府のかもめさんからの質問
 子供の頃(約20年くらい前)の、田舎(徳島県)で見たクマゼミは、透き通った羽をして全体的に黒っぽかったと思います。しかし最近よく見るクマゼミは、鳴き声は同じですが、緑がかった色をしています。
 単なる記憶違いなのか、それとも地域によって色の多少の違があるものなのか、もしかしたら全く別の種類なのかもしれない、などと考えています。
 色の違いが本当にあるのか、あるとしたらなぜ違っているのか、教えてください。

【初宿学芸員の答え】
 
クマゼミは基本的には真っ黒なのですが、ときどきちょうどミンミンゼミなどのような緑色の胸の模様が見えることがあります。羽化して間もない若い個体だったり、単に色の薄い個体だったりするものと思われます。これは地域間の変異というよりは、個体間の変異だと思います。最近よく見るものに緑色が多いかどうかを、きちんと調べたことはありませんが、そのような傾向があるとは特に感じていません。やはり真っ黒のものが多いと思います。クマゼミを見る機会が増えたので、相対的に緑の個体も見ることが多くなったのかもしれません。

【宮武さんの補足】<元当館学芸員。現在の所属は大阪青山短期大学>
 
クマゼミはもともと黒っぽい体ですが、羽化してまだ日にちがたたないのは、金緑色の鱗粉のようなもので覆われていて、緑色に見えます。個体数が多いと、羽化したての個体も多く、緑っぽいのが目立つでしょう。羽化後日が経ったのは粉が取れて黒っぽくなってしまいます。だから、個体数が少ないと、黒っぽいのが多い印象を与えるでしょう。
 したがって、別の種類ではありません。地域差といえば、腹部背面の白いワックスの部分(白帯になる)の幅は、地域によって違います。八重山や与那国のものは特に幅が広く、以前は別亜種にされましたが、現在では地域変異とされています。


1999/8/4 京都府の匿名希望さんからの質問
 最近、ベランダにムカデがよく出てきます。子供が遊ぶので大変怖く、この間も子供の布団の下からムカデが出てきて大変な騒動になりました。
 立地条件は集合住宅でベランダ側は芝生が生えていますが、木は生い茂っていません。5メートル先にはフェンスを境に私有地の畑があり、柿の木が一本あります。子供を刺すのではないかと心配です。
 ムカデがベランダ又はその窓付近に近づかないような方法がないでしょうか。刺された場合、どんな風になるのか教えて下さい。

【金沢学芸員の答え】
 
人家に入ってきて困るムカデ類は、ほとんどがトビズムカデなどのオオムカデ類です。
 発生している場所がわかれば、オオムカデ類の繁殖に必要な条件を排除することで、個体数を減らすことができます。オオムカデ類はふつう、落ち葉などがつもる湿ったところで、昆虫などの他の小動物を食べています。落ち葉をなくすか、あまりおすすめできませんが、殺虫剤を散布するかです。
 忌避剤はいくつかあるようです。昔からいわれている方法としては、「石灰を建物のまわりにまく」、「炭を焼くと出る汁をまく」などがありますが、効き目はわかりません。他の忌避剤については薬局できいてみてください。
 オオムカデ類に咬まれると、かなり痛く、はれると言われています。アレルギー体質の人では、ひどい症状になる場合もあります。アレルギー体質の人でなければ、数日でなおるはずです。


1999/8/4 東京都大田区の小田征史さんからの質問
 セミの死骸を見ていて不思議に思ったのですが、昆虫には心臓というようなものがあるのでしょうか? 確か私の記憶では虫は外骨格に覆われていて体液がそのなかにあるというような記事を読んだことがあるのですが、そうだとすると血管に相当するようなものがないので心臓みたいなもので体液を循環させることが出来ないのでは?? でもそうすると虫が呼吸をして得た酸素をどのようにして体をまわしているのか? もしも、心臓がないのなら虫はどのようになったら死んだということになるのか? 脳死しかありえないのか? などど次々と解らないことが出てくるのですが。お教え願えれば幸いです。

【初宿学芸員の答え】
 
昆虫の血管系は開放系で、血液に相当するものは、脊椎動物の血液とリンパ液と組織液が一緒になったようなもので、「血リンパ」と呼ばれています。
 昆虫の背側(脊椎動物のちょうど脊椎に相当する位置)に一本の太い管が通っていて、その後半部分に筋肉(翼状筋)が取り囲み、それらが収縮することによって、管の血液を後ろから前へ送っています。ただそれだけでは身体のすみずみまで血リンパが行き届きにくいので、触角や脚、ハネなどの付け根にある脈拍器官というものが各器官へ血液を送り込み、小さな心臓の役割も果たしています。
 昆虫の場合は神経系も血管系も脊椎動物とは大きく異なるので、「死の定義」も同じように扱うわけにはいかないように思います。


1999/8/3 兵庫県西宮市の谷川智康さんからの質問
 貴館の展示に付いて、お問い合わせさせていただきます。第2展示室17にあるアンモナイトの化石のうち洲本市千草産のものがありますが、さらに詳しく産地がどこであるかを教えて頂くことはできませんでしょうか? 洲本市千草は私の故郷であり、大変驚き、興味を持った次第です。
 また、淡路島は南部でアンモナイトの化石が出るようですが具体的な情報が得られる書物、Webページなどありましたら御紹介いただけませんでしょうか?
 よろしくお願い致します。

【川端学芸員の答え】
 
ギャラリーの「和泉層群の化石」のコーナーに展示しているお問い合わせのアンモナイトは、大阪市立自然史博物館の登録番号 MI-2192 ノストセラス(Nostoceras cf. hetonaiense)、採集年月日:1983.3.7、採集地:洲本市千草、となっています。
 採集者は、元大阪市立自然史博物館学芸員(現徳島県立博物館)なので、問い合わせてみたところ、次のような情報が得られました。
 採集場所は洲本市東(大字千草字東?)から竹原に向かう農道沿いのガケで、地形図で見ると、東の集落をはなれて人家がなくなってから約350mほど南に進んで、ゆるく左に曲がるコーナーの少し手前の右側のガケになっています。「農道脇の小さな露頭で、ボロボロになった泥岩の中に小さなノジュール状に化石が入っていた記憶があります。だいぶ昔のことなので、現状がどうなっているかは知りません。」ということでした。
 千草からすぐ近くの由良町内田の採石場は,アンモナイト(Nostoceras hetonaiense)の産地として有名な場所です。
 参考になる本については、「
1999/6/2 高槻市の匿名希望さんからの質問」を参照してください。

1999/8/2 東京都文京区の夕子さんからの質問
 亀はなぜ亀の甲羅の上に乗るのですか?

【和田学芸員の答え】
 
カメが他のカメの上に乗っているのを見るのは、ふつうカメがひなたぼっこをしている時だと思います。カメの健康にとってひなたぼっこは欠かせないのですが、池にすんでいるカメにとって、安全にひなたぼっこができる場所(水面につきでた岩の上など)は、限られていることが少なくありません。そんな場合、何匹ものカメがひなたぼっこをしようとした結果、他のカメの上に乗ってしまうのだと思います。この場合、他のカメの上に乗ること自体にとくに意味はありません。
 その他に交尾の時には、雄ガメが雌ガメの上に乗ります。


1999/7/27 川西市の安田さんからの質問
 この夏休みを利用して、小学生の子どもと化石の採取を体験したく思っています。近場(兵庫県川西市在住)にそのような場所があれば教えてください。また、初体験者なもので何か参考にする本があれば推薦ください。

【川端学芸員の答え】
 
兵庫県川西市の近くですと、裏六甲の「つくはら湖」の周辺で古い時代の化石が見つかることがあります(「兵庫自然史ハイキング 地学団体研究会大阪支部・兵庫教師グループ編」創元社のコース)。神戸電鉄「西鈴蘭台」駅の近くでは植物の葉っぱの化石が見つかります。
 少し遠くなりますが、大阪府南部の和泉山地のふもとでも化石が見つかります。およそ7000万年前の和泉層群という地層です。で、和泉層群の方ですと、貝塚市蕎原のコースを「関西自然史ハイキング 地学団体研究会大阪支部編」創元社で紹介しています。ほかには、「泉佐野市滝の池」や滝の池のとなりにある「新池」、「泉南市畦ノ谷」などで化石採集ができます。
 参考になる本については、「
1999/6/2 高槻市の匿名希望さんからの質問」を参照してください。

【安田さんからの成果報告】
 早速「兵庫自然史ハイキング」を参考に「西鈴蘭台」と「つくはら湖」へ息子とその友人3名で意気盛んに出かけました。本とメールにあった通り、藍名トンネルを出たところの鉄工所の前にある露頭を小突いていたら出てきました。はじめに鉄工所の方にとりあへず採取することの許可を請うたところ、この辺りはもう出ないとの返答があり少々がっかりしていたのですが、兎にも角にも子ども達と一緒に初めて見る化石に小生も童心に戻り興奮いたしました。その後、つくはら湖に行ったのですが蚊の大群に行く手を阻まれ化石がどうのという状況にあらず、這う々々の体で逃げ帰ってきました。
 子どもたちも葉っぱの化石を前にして少しは地球が生きていることの勉強になったと思います。ありがとうございました。


1999/7/22 東京都日野市の横尾幸江さんからの質問
 蝶の行動に関して、疑問に感じてることがあります。先日、知人から、「モンシロチョウは、海を渡るときに、片羽をヨットの帆の様に立て風を受けて波間を漂って移動する!」ということを聞きました。本当にそんなことをするのだろうか!?と不思議でたまりません。もし、ご存じでしたら教えていただきたくメールを送りました。不躾ですがよろしくお願い致します。

【金沢学芸員の答え】
 
このことは、「海をわたる蝶」(日浦勇著,蒼樹書房)の79ページに漁師の瀬戸口定義さんの目撃談として登場する有名な話です。原文は「一方の羽は海面にピッタリくっつけ、他方の羽は帆かけ船のように直角に立てて、風でも受けて進むのだろうかに感じました」です。風を受けて漂うのは事実でしょうが、それを推進力にして移動するとは思えません。海をわたる蝶が、休息する際に片バネをつけて、片バネを立てるという姿勢をとることは、イチモンジセセリでも知られています。ハネの表面に鱗粉があるので、浮きやすいのかもしれません。それもよほど波が小さなときのことでしょう。海上での移動を見ることは非常にまれなので、今のところはこの目撃談を信用するしかなさそうです。

1999/7/19 東京都町田市の山田さんからの質問
 先日、庭で変わった虫を見つけました。周りでは何かの幼虫ではないかとかいろいろ話ながら調べてみたもののいままで見たこともなく名前、その他全くわかりません。もしよろしければお教え願えればと存じます。


【金沢学芸員の答え】
 シャチホコガ科のシャチホコガの幼虫と思われます。カエデ科、ニレ科、カバノキ科などの多くの樹木につき、7齢幼虫まであるそうです。

1999/7/16 横浜市栄区の匿名希望さんからの質問
 ヤマモモの樹に雌雄の区別が有ると聞いています。 わざわざ実の生る雌ですねと確認の上購入し、庭に植えましたが実が生りません。どのようにすれば区別できるのでしょうか?

【藤井学芸員の答え】
 
まず、「開花はするけれども結実しない」のか「開花しない」のどちらでしょうか? 仮に雌株だとして、前者の場合なら周辺に花粉親となる雄株が存在しないことが結実しない理由と考えられます。後者の場合は開花に至っていないので当然ながら結実はしません。
 一般に、雌雄異株の植物の場合、開花しなければ雌雄の正確な区別は不可能です。ヤマモモの場合も同様で、開花する以前に雌雄の区別はできません。「実がならない」とのことですが、開花さえしていれば花の構造を見れば雌雄の区別は簡単にできます。雄株であれば、3月末から4月ごろ、枝先に黄色〜赤のクワの実のようなかたまりがあれば、それが雄花の集まりです。雌株の花は目立たないのですが、やはり4月ごろ枝先を注意深く観察してください。
 あらかじめ性型が明らかな株を「挿し木」で殖やせばそれらは全て枝を提供した親株の性型に一致します。


1999/7/15 千葉県流山市のガクトさんからの質問
 僕は去年、学校の自由研究でダンゴムシについてやっていました。ダンゴムシは半年ほど飼っていたのですが脱皮を見ることができませんでした。脱皮したあとの殻さえも半年間見かけませんでした。半年間二十数匹ものダンゴムシのうち一匹も脱皮しなかったとは考えにくいので、ダンゴムシの脱皮についてよろしくお願いします。

【茂似太の補足】
 
あいにく当館には、ダンゴムシにこの質問に答えられるほど詳しい者がいません。そこで、富山市科学文化センターの布村昇さんに答えていただきました。布村さん、どうもありがとうございました。

【布村昇さんの答え】
 
オカダンゴムシは、脱皮のあと自分の脱皮殻をたいてい食べてしまいます。また、少なくとも5から6回は脱皮します。(これは場所などでも変異があるかもしれません)
 なお、脱皮は半身ずつ脱皮します。たびたび、自然でも半分だけ脱皮して色が変わっている個体を観察することがあります。よーく観察してみてください。


1999/7/8 東京都のすみやんさんからの質問
 一週間ほど前、ベランダにハチが巣を作っているのに気が付きました。

 アシナガバチの一種ではないかと思うのですが、7〜9匹の働きバチが、毎日せっせと巣作りに励んでいて、巣は日に日に大きくなっています。そっとしておきたい気持ちもやまやまなのすが、このまま洗濯物や布団が干せないのも困ります。
 大変迷った末に、この巣を取り除きたいと思っています。この時期に取り除くなら、どういう方法で、どういう点に注意すれば良いか(あるいは、自分でやらないで専門業者にまかせた方が良いのか)を教えて下さい。よろしくお願いします。

【松本学芸員の答え】
 
画像を見る限りセグロアシナガバチの可能性が高いですね。この種は日本のアシナガバチのなかでも最大級で攻撃性、威嚇性ともに強く、しかも人家の軒下などによく巣を作るため刺される被害が多いハチです。体質にもよりますが、アノフィラキシーショックを起こして死亡した例もあります。とは言っても、巣に近づいたり、ちょっかいをだしさえしなければ、攻撃されることはまずありません。
 ハチを取り除くには、慣れた人なら巣から少し離れたところで、捕虫網を使って、外から巣に帰ってくるハチを1匹ずつ捕まえていくという方法もあります。しかし、慣れないと難しいかもしれませんし、上記のように刺されると人によっては危険なのでおすすめできません。
 他に巣をとる方法としては、夜間に巣にむかってライトを当てて(地面に置くなどして、人はライトの近くに寄らない、蜂は明かりに向かって飛んでくるため)ライトとは違う方向からピレスロイド系の殺虫スプレーを吹きかけるという方法があります。蜂は殺虫剤などに対しては非常に弱いため、後はそのままにしておいても大丈夫でしょう。作業するときには、肌を露出させないような厚着にして(雨合羽を上に羽織るのも有効)、帽子をかぶり、首筋にタオルを巻くなどして、いざというときに備えるべきでしょう。
 10月頃になれば働き蜂はいなくなり、巣には新女王と雄バチばかりになり、攻撃性は低下します。さらに11月になれば巣は放棄されますので(2年連続で同じ巣を使うことはありません)それまで放置することが可能なら、どんなふうに巣を作ったり、子育てをしたりするのかそのまま観察するのが望ましいといいたいところです(ハチの働き者ぶりが見れるなんてすばらしいことなのですが)。でも洗濯物や布団が干せないというのであれば、いたしかたありませんね。
 いずれにせよ、ご自分で巣をとる場合には細心の注意を払って刺されないようにして下さい。自治体によっては蜂の巣の除去サービスを行っているところもありますので、問い合わせてみるのもよいでしょう。



1999/7/7 岐阜市のM.T.さんからの質問
 近所の学校の校庭の隅にある木のことでおききします。木の根元にどんぐりのおわんがたくさん落ちていました。去年のものだと思います。うろこ状のもようがあって、直径は2センチ以上あります。2.3センチのものが多いです。枝の先には、どんぐりの赤ちゃんのようなものが見えます。

1.この木は、なんでしょうか?コナラに似ているような気もしますが、こんなに大きいドングリがなることはありますか?ミズナラは葉柄がほとんどないのですか。この木は葉柄がはっきりわかります。ナラガシワでしょうか?
 2.公園などでシラカシは時々植えられていますが、コナラやクヌギはあまりみかけません。なぜでしょう?コナラやクヌギは平地の市街地では育ちにくいのでしょうか?それとも、植えた人の好みで決まっただけかな?

【岡本学芸員の答え】
 
お問い合わせのドングリの木は、ご推察の通りナラガシワです。コナラのドングリのサイズや形は個体による変異が大きく、一概には言えませんが、おわんの大きさから推定して、これほど大きくなることはないでしょう。ナラガシワのドングリには、全面に細かい毛が生えていることで、コナラと区別できます。葉の形もコナラに似ていますが、大きさと厚さ、それから裏面に星状毛が密生していて白く見えることで区別できます。ミズナラの葉は、葉柄がほとんどないことで区別したらよいでしょう。

 確かに、シラカシやアラカシに比べて、コナラやクヌギが植えられていることは少ないですね。しかし長居植物園では、よく育っています。場所による土質の問題もあるでしょうが、カシ類より立派な林をつくっています。大阪の平地で育ちにくいということはないでしょう。
 ただし、コナラやクヌギは大阪の平地のもともとの林に多かったものではないようです。平地にもともと多かった落葉樹は、ムクノキ、アキニレ、エノキ(?)などです。山裾に行けば、ケヤキ。これらの樹木の林の第2層として、アラカシなどの常緑樹はなじみが深かったものと思います。
 大阪などの平地の公園にカシ類が多い原因として、一つ忘れてならないことは、かつて都市の緑化の重要性が言われ出した一時期に、その地の潜在自然植生を復元しようという運動があったことです。大阪の平地では気候的には照葉樹林(シイやカシの常緑樹の林)が成立する地域ですから、その構成種であるカシ類は好んで植えられたということはあるでしょう。
 交通量の多い道路等からのバリアーとしての効果を考えての植栽もあるかもしれません。これには、常緑樹の方が圧倒的に優れています。
 思いつくのは、というようなことです。最近では、身近な環境にコナラやクヌギを植え、昆虫などもよく集まる多様な自然を求める動きも出ています。


1999/7/6 東京都のカメカメハさんからの質問
 カメムシの事なんですが、分類に適した本、カメムシとサシガメの見分け方、についてお教え下さい。また、もし標本があった場合、お送りすれば同定していただけるのでしょうか?ちなみに、私は、昆虫関係の処理業者ではありません。

【松本学芸員の答え】
 
分類ということですが、同定(種名調べ)と考えてお答えします。チョウや蛾、甲虫とは違って、カメムシのようにマイナーなグループの全体を見わたせるような本は残念ながら無いのが現状です。というのも、カメムシのなかま(カメムシ亜目)には世界で約35000もの種が含まれるといわれるかなり大きなグループで、その全てを網羅する図鑑をつくるのは困難だからです。
 とはいえ、現在出版されている昆虫図鑑はまったく使えないというわけではありません。図鑑にはわりと普通に見ることのできる種が載せてあるので、運が良ければ調べたい種が近似種との区別点も含めて載っていることでしょう。以下に現在手にはいる図鑑をあげておきます。
 1. 原色昆虫大図鑑(3),1965,北隆館.
 2. 原色日本昆虫図鑑(下),1977,保育社.
 3. 決定版生物大図鑑(昆虫1),1985,世界文化社.
 4. 学研生物図鑑 昆虫3 1983初版 1990改訂.
 これらの図鑑に加えて、1993年に日本原色カメムシ図鑑という本が全国農村教育協会からでました。この本は写真が全て生態写真という点で上の図鑑とは大きく違います。
 また昆虫分類学(1989、川島書店)にはカメムシ亜目を含む半翅目の科への検索表が載っていますのでこれも参考になります。

 カメムシとサシガメの見分け方について。”カメムシ”といった場合それがカメムシ上科なのかカメムシ科なのかという問題はありますが、(ちなみにサシガメといった場合、通常サシガメ上科のことをさします)ここではサシガメを他のカメムシから見分けるポイントをあげたいと思います。
 1. 中胸と後胸の腹板が融合する(他のカメムシは融合しない)。
 2. 頭部は比較的長く、通常複眼の間、または直後にくびれや溝があって後頭部が分離している(明瞭なくびれや溝はない)。
 3. 後脚の基節は球状で回転可能(ちょうつがい型で回転できない)。
 これらの点を参考に区別して下さい。自然史博物館においでになれば実際に見ていただけると思います。

【茂似太の補足】
 昆虫標本の同定について補足します。昆虫の同定は写真などではなく、標本を見なければわからないことがしばしばあります。その際、標本を送って頂ければ、可能な範囲で同定して答えています。ただし学芸員は、他にもいろいろと仕事がありますので、以下の点を了解してください。
 ・送る前に必ず担当学芸員の了解をとってください。何の断りもなく、いきなり送りつけられても受け付けません。お問い合わせは、
monitor@omnh.jpまで。
 ・調査会社などの業務上の仕事は引き受けません(博物館は無料の下請けではないので)。
 ・同定結果の返事に期限をつけないでください。できるだけ早く答えたいとは思いますが、他に急ぎの仕事がある場合も多いので、すぐに同定できるとは限りません。申し訳ないですが、気長に待つ覚悟でお願いします。
 ・一度に大量の同定依頼は、基本的にお断りします。同定して、返事ができる目途も立たないので…。どのくらいが大量かは、常識的な判断でお願いします。
 ・昆虫は種類が多く、それぞれの分類群の専門家でないと同定できない場合がしばしばあります。必ずしも種まで同定できるわけではないので、ご了解ください。

1999/7/6 福井県の松岡由浩さんからの質問
 クワガタについてお尋ねします。クワガタの成虫(オオクワガタ、コクワガタなど)を長期間飼育した場合、体長が多少なりとも伸びることはあるのでしょうか?

【初宿学芸員の答え】
 
昆虫は外骨格という殻に覆われているので、成長するためにはその殻(皮)を脱ぐ必要があります。だんだん大きくなる幼虫はこのように皮を脱ぎながら成長しているのです。
 いったん成虫になってしまうと、もう殻をぬぐことはできないので、それ以上成長することはできません。ときどき体長の小さいカブトムシやクワガタを見て、「あっ、まだ小さいんですね」とおっしゃる方がいますが、実はそれらはその大きさのまま一生を終えることになります。


1999/7/1 茨城県つくば市の岩永千沙子さんからの質問
 シダ植物の形態について質問があります。シダ植物の葉を裏返してみると、胞子嚢がついている場合とついていない場合があります。胞子体がある程度大きくならないと胞子嚢はできないのでしょうか。それとも種類によって胞子嚢のできる場所が異なるのでしょうか。すこし調べてみたのですが、どうもはっきりしません。また、家でシダを胞子から育てることはできますか?

【佐久間学芸員の答え】
 
まず、シダの胞子嚢には様々な形態がある事を確認しておきたいと思います。一般的によく知られているのは、ベニシダやイノデのような葉の裏に「虫の卵」のように丸くついている胞子嚢群だと思います。包膜(たとえばベニシダなら若い時に赤く見える)の裏に胞子が包まれた胞子嚢がたくさんついています。ノコギリシダやシケシダなど、まるくない包膜の種類もあります。中にはミゾシダのように包膜がなく、胞子嚢がむき出しのものもあります。
 それから、質問と関係するかも知れませんが、葉の裏にあっても人目に触れない者があります。身近なところでは例えばイノモトソウがそうです。これらの種類は葉のふちに胞子嚢ができるのですが、葉のふちそのものが裏側に巻いてしまい、胞子嚢を隠してしまいます。胞子嚢ができていない春先の葉で鋸歯があるのに、今頃は鋸歯のない葉が多いのはこのため(鋸歯の部分が裏に巻いてしまうから)です。ワラビも葉のふちに胞子嚢ができます。アツイタのように葉の裏全面に胞子がつく場合もあります。
 ふだんの葉と胞子ができる葉が全く異なる種類もたくさんあります。誰でも良く知っているシダの一つ、ゼンマイがそうです。ゼンマイでは胞子がつく葉(実葉という)は直立して胞子嚢が展開すると右辺はほとんど茶色に見えます。里山で良く見るシダ、シシガシラもそうです。冬の山道ぞいにアンテナのようにたつシシガシラの古い実葉は非常に目立つはずです。ゼンマイはふつうの葉の上の方だけが実葉になるときもあります。実葉と栄養葉が、形態的に大きく異なる場合も、あまりかわらない場合もあり、様々です。

 種類にもよりますが、気長にやれば、シダを胞子から育てるのは、そんなに難しくもないようです。育て易い種を推薦できるほど経験がないので、いろいろ試してみてください。比較的簡単なのは胞子のたくさんついた葉を、新聞に挟んで押し葉にします。するとたっぷり胞子が新聞の上に落ちますから、それを紙のうえに集めます。シャーレ(なければ小鉢にガラスのふたでもかまいません)にバーミキュライト(園芸店などにあります)をいれ、たっぷりと水を含ませます。あとはこの上に胞子を巻き、気長に半日陰に置いてやって下さい。乾燥させぬように。
 半月くらいで緑のカーペットのように見えてきます。後は間引いて植え次いで、という段取りです。私は以前この段階でうっかりからしました。詳しくはシダの栽培の本を見て下さい。


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