質問コーナー 過去のやりとり(1998年7月-12月)

寄せられた質問 ・ 質問への回答

質問

1998/11/27 豊中市の平田倫子さんの陸貝についての質問
1998/11/12 匿名希望さんのナンキンムシについての質問
1998/11/8 尼崎市の佐藤敬一さんのコウガイビルについての質問
1998/11/4 島本町の杉之原專司さんのタカの渡りについての質問
1998/11/4 大和郡山市の池田昌義さんの甲虫の矮小化についての質問
  →その後の展開があります。甲虫は矮小化しているか?を参照してください。
1998/10/28 大和郡山市の中島俊樹さんのマルカメムシについての質問
1998/10/19 佐賀県の上赤博文さんの帰化植物についての質問
1998/10/18 秋田県の出雲紀行さんの日本のハチドリ?についての質問
1998/10/6 岡山市の鑛山宗利さんのキノコの標本の作り方についての質問
1998/10/5 岐阜市の匿名希望さんのドングリのなる木についての質問
1998/9/26 北海道の匿名希望さんの単性花についての質問
1998/9/21 岡山市の鑛山宗利さんのアオマツムシについての質問
1998/9/1 大阪市の鈴木和夫さんの植物の標本作りについての質問
1998/8/21 広島県呉市の熊谷栄治さんのムカデの餌についての質問
1998/8/20 岡山市の鑛山宗利さんのタマムシ成虫の食物についての質問
1998/8/9 大阪府のやっくんの甲虫に付くダニについての質問
1998/8/8 兵庫県宝塚市の森田竜也さんのマチカネワニの指の数についての質問
1998/7/28 京都大学の市原千博さんの昆虫の死(?)についての質問
1998/7/23 大阪市の市川顕彦さんのクマゼミの鳴く時間帯についての質問
  →その後の展開があります。大阪市内のクマゼミだけが午後にもよく鳴くか論争を参照してください。
1998/7/20 大阪市中央区の岡本浩さんの昆虫の眼についての質問
1998/7/15 京都大学の市原千博さん田んぼの謎の生き物についての質問
1998/7/9 神戸市の芝田和典さんのハチについての質問


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質問への回答
1998/11/27 豊中市の平田倫子さんからの質問
 カタツムリについてお尋ねします。1か月前に我が家の庭で見つけたカタツムリは、カワニナのような約1.5cmの細長い殻を持っています。キャベツや人参をエサにして飼っていますがどうも大きくならないようです。シンガポールにいた人に聞くと「殻の細いカタツムリは毒を持っているからさわらない方がいい」と言われました。カタツムリは種類が大変多いとも聞きます。このような細長い殻を持つものは日本でもよくあるのでしょうか?それともこれは、ただ殻を作るのが下手だったのでしょうか?

【動物研究室の山西学芸員の答え】
 「カワニナのような約1.5cmの細長い殻」の陸貝となると、キセルガイ類かもしれませんね。ふつうよく見られるふっくらしたカタツムリや海の貝とは逆に、殻のとんがった先をつまんでぶら下げて、口と向き合うと、口は左側に位置していませんか(貝屋の世界では左巻きと言います)?そうであれば多分にキセルガイ類です。だとすると、もう最大サイズですから、餌を食べても見た目には大きくなりません。ただ、口の先端が分厚くなっていきます。とりあえず図鑑などで、キセルガイ類か(あるいは口が右側ならオカチョウジガイ類かもしれません)どうか確かめてみて下さい。これらの貝であれば、毒のことは心配に及びません。キセルガイ類は日本で約150種(亜種)が知られている大きなグループです。詳しいことは、保育社の「原色日本陸産貝類図鑑」をごらんになって下さい。シンガポール方面に毒のある細長いカタツムリがいるかどうかは、申し訳ありませんが、知識を持ち合わせておりません。

1998/11/12 匿名希望さんからの質問
 家にナンキンムシが住み着いたみたいです。どうすれば追い払えるのか、とても困っています。(「バルサン」燻煙殺虫剤4個も使っていたのに… 、なんか効く薬剤があったら、教えて下さい)。

【昆虫研究室の初宿学芸員の答え】
 ナンキンムシは図鑑にはトコジラミという名前で載っています。扁平で赤褐色でハネがなく、特有の臭いを出します。以前はずいぶん多かったようですが、最近はほとんど見ることがありません。
 この虫はヒトの血を吸って生きています。血を吸われた箇所はとてもかゆく、腫れてたり水膨れを起こします。ケモノでは他に、ウサギの血液を好むようです。
 退治方法についてですが、ある本にはくん蒸などが効くとされています。しかし、もうすでにくん蒸の方は施されたとのことですね。安富和男ほか著「衛生害虫と衣食住の害虫」(全国農村教育普協会発行)には以下のようなおもしろい記述があります。「バルカン地方の民間伝承では・・・・インゲン類(マメ科)の葉をベッドの下の床に5〜6枚まいておくと、葉にたくさん生えている釣り針のような毛にトコジラミがひっかかり、もがいて抜こうとするほど動けなくなってしまうという。ドイツやアフリカでどんな植物が有効かという実験も行われ、アメリカ農務省の研究所でヌスビトハギの一種がトコジラミをとらえるのに効果的であることがつきとめられ、その利用が推奨されたこともある」とのことです。一度ためして見てはいかがでしょうか?

1998/11/8 尼崎市の佐藤敬一さんからの質問
 子供の頃、庭の石をめくると、そこに体の細長い頭が3角形で色は黄褐色で背中に黒い筋がある気持ち悪い生物がいました。その後、これがコウガイビルという生物の一種らしいということを何かで見て知りましたが、コウガイビルがどういう生物なのかいまだはっきりわかりません。コウガイビルとはどんな生物で、日本にどういう種類がいて、どういうところに生息していて、何を食べてどういう生活をしているのかお教え下さい。
 また、このコウガイビルという生物を日本で研究している人とかはいるのでしょうか。図鑑以外でこの生物に関して書かれている本とかがありましたらお教えいただければ幸いです。

【動物研究室の山西学芸員の答え】
 コウガイビルはヒル(環形動物)の仲間とよく間違えられますが、本当は扁形動物という大きなグループ(動物門)に属しています。その中の渦虫綱、三岐腸目のコウガイビル科というのが分類上の位置です。同じ三岐腸目には、淡水にすむ再生実験で有名なプラナリアがいます。扁形動物門では、他に人体にも寄生する吸虫や条虫(サナダムシ)などが有名です。これらの動物は、体が扁平で、体腔という体の内部の裏打ちされた空間が形成されず、肛門も開通していない、という原始的な体制をしています。
 日本では、クロイロクガイビルやミスジコウガイビルなど3種以上が知られています(詳しくは、北隆館の新日本動物図鑑の上巻を参照下さい)。
 とにかく乾燥に弱いので、湿った陰になる場所に生息していて、夜に活動します。そのために人目につきにくいのですが、人家の周りにもわりと普通に棲息しています。肉食性で、主にナメクジを捕食します。
 「遺伝」という雑誌の1983年9月号の52〜61ページに、「コウガイビルの話」という記事が載っています。他に、ご紹介できるような文献は見当たりません。この著者は北海道の藤女子大学の川勝正治先生で、この方が、おそらく日本における現役ただ一人のコウガイビル研究者(分類・形態学)でしょう。

1998/11/4 島本町の杉之原專司さんからの質問
 タカの渡りについて教えてください。
 1.雑誌などを見ると、いろいろなタカが一緒に渡りをしているようですが、タカどうしで喧嘩などすることはないのですか?
 2.一緒に渡ると書きましたが、今秋はとくに気をつけて空を見上げていたところ、どうもタカの種類ごとに渡る時期がずれているようなのです。私の直感は当たっているのでしょうか?

【動物研究室の和田学芸員の答え】
 1.秋のタカの渡りを見ていると、サシバやハチクマを初めとして、日本で見られるタカはほぼ一通り見られます。小型のハイタカやツミが、サシバなど中大型のタカにつっかかって行ってるように見える場合がありますが、総じてあまりケンカをするのを見ることはありません。我々が見ているタカの渡りは、たいてい単に移動しているだけで、繁殖にも採食にも関係がありません。つまりケンカの対象になるような資源が何も関係しないので、ケンカのしないのだと思います。

 2.タカの種類ごとに渡りの時期(少なくともピークは)はずれています。おもだった種類で言えば、ハチクマ→サシバ→Accipiter(ハイタカの仲間、ただしアカハラダカは除く)といった順番になると思います。

1998/11/4 大和郡山市の池田昌義さんからの質問
 最近気になることとして、かぶと虫の大きさが矮小化しているような気がいたします。最初はコカブト虫かと思ったのですが、かぶと虫のようですし、他にクワガタ、カナブン、ハナムグリなども矮小化しているのでは、という気がします。まず、このような情報や研究が行われていらっしゃるかについて、そして行われているのでしたら、どのような報告がなされているのか、お訪ねいたしたく存じます。もし、特に統計だてた研究がないようでしたら、貴博物館が採取保管されていらっしゃるカブト虫、カナブンの年代別のスケールを教えていただけたらと存じます。突然の質問で恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

【昆虫研究室の初宿学芸員の答え】
 カブトムシやクワガタなどは他の甲虫の種類に比べても、大きな個体と小さな個体が差がはっきりわかりやすいのですが、近年になって矮小化しているという話は私自身はこれまで聞いたことはありませんし、研究がされていることも耳にしたことがありません。
 標本室の標本をざっとみたところでは、特に近年のものが小さいように思いませんでしたが、サンプリングが偏りなく行われているかどうかわかりませんので(つまり大きいものだけを選んで標本にしている可能性があるということ)、標本室の標本を計測して時代ごとに並べても、矮小化しているか否かをつきとめるのは難しいように思います。
 見かけたカブトムシをすべて捕まえて標本にして計測する、というのを何年かごとにくり返して行うと、矮小化を証明する結果が出るかもしれませんね。

1998/10/28 大和郡山市の中島俊樹さんからの質問
 うちの家のベランダにはこの季節山のようにマルカメムシがわきます。原因はさっぱり分かりません。でも、あまりに多くでてくるし、触ろうもんならものすごく臭いので困っています。洗濯物は干さないわけにはいけないのですが、入れるのに30分以上かかるしもう一度点検しなくてはなりません。布団なんか干すこともできません。なるべく平和的にご退散願いたいのですが、どうすればよいでしょう。

【昆虫研究室の初宿学芸員の答え】
 マルカメムシは都市部ではクズをおもな寄主としています。10月から11月にかけて天気のよい日にいっせいに飛び立ち、ベランダの洗濯物やふとんにつくために、苦情の寄せられることの最も多い虫のひとつです。
 食草のクズが家の周辺からなくなれば多少減るかもしれませんが、繁殖力の旺盛な植物なので、すべて刈り取るというのは不可能でしょう。
 家の中への侵入を防ぐには網戸をかけるなどの方法があります。ベランダに飛来するものについては手の施しようがないと思います。ひたすら我慢するしかないのではないでしょうか?
(参考文献:松崎沙和子・武衛和雄1993,都市害虫百科,朝倉書店)

1998/10/19 佐賀県の上赤博文さんからの質問
 先日(10月9日)、貴博物館を見学させていただきました。興味深い展示ばかりでしたが、中でも特別展「都市の自然」は1時間ほどかけて見学しました。展示の中にありました帰化植物について、教えていただきたいことがあります。それは、ヒメアメリカアゼナと、アメリカタカサブロウについてです。アメリカアゼナとタカサブロウとはどのような点で区別されるのでしょうか。同定のポイントについて教えていただけると幸いです。

【植物研究室の藤井学芸員の答え】
 遠方から展示を見に来ていただきありがとうございます。私自身は帰化植物については全くの素人ですが・・・。
 アメリカタカサブロウ:申し訳ありません、私自身は区別できません。文献をご覧下さい。あるいは著者に直接問い合わせてみて下さい。なお、人から聞いた話ですが、近畿地方ではタカサブロウは非常にまれであるとのことです。おそらく数十カ所位の調査ではタカサブロウは見つからないのではと思います。他地域については情報を持っていません。
  梅本信也.1997.タカサブロウの起源 山口裕文編”雑草の自然史−たくましさの生態学−”.
  北海道大学図書刊行会
 ヒメアメリカアゼナ:アメリカアゼナに酷似するが以下の点で区別できる。全体に小さい、直立傾向が強い、基部からの分枝が少ない、葉が小さくてより心形になる傾向が強い、果柄が長い傾向がある。環境によっては、ヒメアメリカアゼナの方が多いところもあるようだ。今のところ以下の文献以外では紹介されていないかもしれない。文献入手は発行者である津村研究所(〒300-1192 茨城県稲敷郡阿見町吉原3586、電話:0298-89-3832)へ問い合わせて下さい。
  山崎敬.1988.ヒメアメリカアゼナ日本に帰化.植物研究雑誌 63:410-411.

1998/10/18 秋田県の出雲紀行さんからの質問
 秋田県の中学校の理科の教師をしています。先日、同僚の先生から、家の庭にハチドリのような鳥が訪れて花の蜜を吸っていたという話を聞きました。去年も1回見て、今年は、ビデオで撮影したということでした。ハチドリは南米などで見られる鳥なので日本にいるはずはないと思って半信半疑だったのですが、ビデオを見てみると、くちばしが非常に細い小さな鳥がホバリングしながら花の蜜を吸っている姿が映っていました。花の大きさと比較するとメジロなんかよりも、もっと小さいように見えました。日本にもハチドリはいるのですか?

【動物研究室の和田学芸員の答え】
 日本の野外にハチドリは生息していません。お書きになっているように、アメリカ大陸だけに生息しています。花の蜜を吸うように特殊化した小型の鳥は、アメリカ大陸ではハチドリですが、他の大陸にもミツスイ、ハナドリ、タイヨウチョウといったように分布しています。いずれも、熱帯から亜熱帯の鳥です。ただし日本でもハチドリを温室などで飼っている施設はありますので(大阪近辺なら橿原市昆虫館)、そこから逃げ出した可能性はないとはいえません。でもたぶん日本の冬は(とくに秋田の冬は)こせないでしょう。
 ビデオを見てみないと断定はできませんが、”ハチドリのような鳥”というのは、鳥ではなくて、スズメガの仲間ではないかと思います。オオスカシバなどは昼行性ですし、比較的大型で、ホバリングしながら花の蜜を吸うので、ハチドリのような趣があります。

1998/10/6 岡山市の鑛山宗利さんからの質問
 エノキの老木の幹に大きなコフキサルノコシカケが生えていて、エノキの保護のためにこのサルノコシカケを取りました。採ったついでに、標本にしようと思うのですが、どのようにして標本にするといいのでしょうか?
 また、普通のキノコ(タマゴタケ、イグチなど)は、どのようにして標本にするといいのでしょうか?

【植物研究室の佐久間学芸員の答え】
 キノコを野外にほっておくと、1.自分で溶ける、2.かびたり腐ったりする、3.虫に食われる、のどれかの運命をたどります。標本として保存するためにはこれらを避ければいいわけです。基本的にはサルノコシカケなどの硬質菌であろうと、柔らかいキノコだろうと変わりません。

 回避の方法としては、
A.しっかり乾かして、防虫剤・乾燥剤で管理する
 いわゆる干し椎茸の状態ですね。形も、大きさも色も変わり果てた姿となってしまいますので、生の時の記録が重要になります。もちろん生の時の味や臭いも失われます。詳しくは
D's Basementの「番外標本の作り方−キノコその1−」をご覧下さい。博物館などでは大型の送風乾燥機を使いますが、家庭では温風ヒーターを使って乾燥機を作る方法、ふとん乾燥機を使う方法(膨らむ袋の中に入れてしまう)などがあります。これらの方法が不可能、あるいはめんどくさいという方は、キノコを縦に薄く割いて(マツタケご飯には行っているマツタケのイメージ)陰干しする、という方法もあります。これでも胞子を調べる事は可能ですし、傘から柄の部分まで、一そろい残りますので、なんとか役にたちます。小さなもの、肉薄のものなら、しっかりふたのできる入れ物でシリカゲルと一緒に入れておくという方法でも十分乾燥できます。コフキサルノコシカケなどの硬質菌類は材の部分が付いている標本が理想です。送風で乾かしてもどの程度乾いたか分かりにくいので、重さをはかっておくと良いでしょう。条件によりますが5%〜10%程度は減ると思います。この方法の場合防虫管理がポイントです。チャック付きポリ袋に防虫剤と一緒にしまっておきましょう。油断するとタバコシバンムシなどすぐ虫が湧きます。また、湿気にも気をつけないとすぐにかびます。私もこれらで大分犠牲にしました。

B.しっかりふたのできる容器で液浸にして保存
 どういう液に着けて保存するかは様々です。70%アルコールや6%程度のホルマリン、またはアルコール、ホルマリン、蒸留水を25:5:70で混合したもの(Corner's solutionと呼ばれます。色が比較的よく残ります)、FAA(ホルマリン、氷酢酸、蒸留水を10:5:85)などがよく使われます。かさばるので私はあまり作っていません。

C.凍結乾燥標本

 いわゆるフリーズドライです。-40〜50度で凍らせ、それを真空状態においてやることで形を保ったまま乾燥させる方法です。でも湿気も吸いますし、経年で色もあせます。機材が必要ですからあまり一般向きではありませんが、方法はあります。ものぐさ流としては、しっかり霜とり機能がある冷蔵庫の冷凍庫に1年単位で放置すること。家庭ではいやがられるでしょうね。乾かないうちに取り出してしまうと細胞内の水が溶けてしまい形もぐにゃぐにゃとなりダメになってしまいます。おすすめはしません。
 もう少しまじめな方法は一度凍らせて、そのままシリカゲルに埋めて数週間〜数カ月冷凍庫内におく。これは特に肉の薄いキノコでは比較的成功します。

 これらの他、採集日、採集場所、採集者などを書いたラベルが必要なのは植物その他の標本と同じです。いろいろ書きましたが、生の状態での観察に勝るものなしです。そこがキノコのつらいところなのですが、頑張って記録・スケッチして下さい。

 今関・本郷「原色日本新菌類図鑑I」(保育社)や井上・横山「きのこ・こけ・しだ」(小学館)他,キノコ図鑑の巻末や巻頭に標本の作り方は載っています。図書館や書店でご覧下さい。


1998/10/5 岐阜市の匿名希望さんからの質問
 どんぐりのなる木は北の方には少ないのでしょうか。私は子供の頃は富山ですごしましたが、どんぐりを拾って遊んだことがありません。どんぐりのなっている木は見たことがありませんでした。今は岐阜市にいますが、町の中の公園にあたりまえのように、シラカシ、マテバシイ、スダジイ、クヌギなどのどんぐりが落ちていてびっくりしています。仙台の人と新潟の人にきいてみましたが、どんぐりは、あまり見たことがないそうです。( たくさんの人にきいたわけではないので断言できませんが。)北海道にもどんぐりのなる木はあるのですか。北か南かの問題でなく雑木林が残っているかどうかの問題なのでしょうか。積雪量と関係はありますか。
 おしえてください。どんぐりについての本がもしあったら、それもおしえてください。よろしくおねがいします。

【植物研究室の岡本学芸員の答え】
 日本の国内レベルでは、ドングリのなる木は北から南まである、と答えてよいでしょう。
 ドングリのなる木には、常緑樹のシイやカシの仲間と、落葉樹のコナラ、ミズナラ、クヌギなどの仲間のふたつのタイプがあります。分布パターンがはっきりしているのは、常緑のいわゆる照葉樹林のメンバーで、これは西南日本を中心に分布しています。北へは海岸沿いに分布をのばしており、アカガシ、ウラジロガシは宮城県や新潟県まで分布しています。もちろん、富山県にもあります。
 落葉のものの分布パターンは、常緑のものほどはっきりしません。コナラは本州、四国、九州の雑木林にあり、北海道は南部域にあります。ミズナラはもっと高地や北方の温帯林のものです。クヌギ、アベマキは本州北部まで分布し、北海道にはありません。
 ということで、結局は雑木林などの広葉樹の林があれば、日本ならどこでも何かのドングリに出会えると思います。積雪との関係については、私はあまりはっきりしたイメージは持っていません。
 どんぐりについての本としてまとまったものは今すぐには思い浮かびません。絵本類はいくつかありますが、当館が出している「長居公園のブナ科植物」あたりが一番まとまっているかもしれません。週刊朝日百科「植物の世界」87号には、日本のブナ科植物から出発して、世界のブナ科を解説しています。今でも分冊で買えるのかどうか知りませんが、図書館には合本版があると思います。

【茂似太のコメント】
 岡本学芸員の答えをよく読むと、質問にあった「なぜ富山でどんぐりで遊んだ記憶がないのか」については答えていません。そこで同じ植物研究室の佐久間学芸員が、”富山のどんぐりの謎”の部分についてコメントしてくれました。

【植物研究室の佐久間学芸員の答え】
 私が育ったのは神奈川県横須賀市の東京湾にむいた丘陵の辺縁でも、あまりドングリをつける木はありませんでした。子どもの頃、図鑑でクワガタムシやカブトムシはコナラやクヌギに多いと書いてあるのを読み、クヌギをさがしたものの、そこらにはありませんでした。
 私の家の前の海に向いた斜面は、海風のもろに当たる場所で、タブの常緑樹林だったのです。落葉樹林もミズキやケヤキそしてオオシマザクラなどの多い林でした。もちろんこのことをきちんと知るのは私が植物を学ぶようになってからの話です。横須賀ではオオシマザクラの萌芽林を薪炭利用した地域もあったそうです。「日本植生誌」(宮脇・奥田1985)を見ても、コナラを欠いたこうした二次林が三浦半島の土の深いところに分布することが記されています。
 とは言えナラ・カシ類が全くないのではなく、大人の行動半径と目を持ってすれば見えてきます。大きな神社に行ってみればアカガシやシイの巨木がありましたし、横須賀市立博物館の持っている観察園にはマテバシイの林がありました。相模湾側にはきれいなコナラの林もあります。でも、子どもの行動圏で目に付くほどではありませんでした。
 雑木林・里山といっても全国各地に個性があります。例えばそこが林業地だったらまわりには杉やヒノキばっかりだったかもしれません。一面拡がる水田地帯だったら? ハセ木に使う樹の植えられた地域や、樹のない場所などそれぞれでしょう。「子どもの遊ぶ近所」といったローカルな単位で何が目立つ樹なのか、というのは北や南だけでなく、海からの距離、その地域の産業立地、その時の造園の「流行」(「鎮守の森」の自然が重要視された頃からシイ・カシ林を模した植栽がひろまります。最近はコナラやクヌギを植えるというのも聞きます)などいろいろなことが関係するでしょう。
 環境教育の素材として「どんぐり」は注目され、それなりにひろまっていますから、私たちがどんぐりを見つけて喜ぶ、という見る側・探す側の意識の高まりの部分もあるのかも知れません。
 べつにどんぐりだけではあるまい、というのはそういう林で育たなかったもののひがみでもあり、本音でもあります。

1998/9/26 北海道の匿名希望さんからの質問
 植物には単性花、雄花と雌花が別々に咲くものがあると知ったのですが、単性花である植物にはどんなものが知りたいのですが・・・。

【植物研究室の岡本学芸員の答え】
 単性花というのは、一つの花に機能のある雄しべ・雌しべを備えている両性花(両全花)に対応する言葉です。被子植物では両性花が一般的です。個体(株)としての雄・雌の区別(雌雄同株・雌雄異株)とは別の問題です。 単性花には、一見して雄花・雌花の区別がつくもの、よく見れば区別がつくもの、機能を調べて区別ができるもの、などさまざまな段階があります。

1.一見して区別がつくもの
 花だけでなく花序(花の集まり)も異なる(風媒の)ブナ科、クルミ科、カバノキ科などが代表的なものです。多くの裸子植物もここに入ります。風媒花(風で花粉媒介される)であることが特徴(条件)です。風媒花は大量の花粉をつくり飛散させることが必要で、しかも雄花と雌花が似ている必要がない(虫媒花は虫に両方の花に来てもらう必要があるので似ていなくてはならない)ので、こんな雄花・雌花の分化が可能です。
 花序の形が異なるほどでなくても、風媒花の単性花は、雌花では柱頭が大変よく目立つ、雄花では葯が大きく目立つ、などで容易に区別できます(ミクリ科、プラタナス科、スイバ、ホウレンソウなど<最後のふたつは雌雄異株)。

2.よく見れば区別がつくもの
 虫媒の単性花の多くは、注意してみないと区別しにくい。虫が雄花と雌花を区別せずに訪れてくれることが望ましいからです。雄しべか雌しべのどちらかがないか、あっても痕跡的なものがここに入るでしょう。例として、ウリ科(花冠の下の子房の膨らみを較べるのが簡単、雌花は膨らみあり)、ベゴニア(これの雄花と雌花を較べるとおもしろい,雌花は報酬としての花粉がある雄花に擬態しているのかもしれない)、アケビ,アオギリなど。

3.機能を調べて区別ができるもの
 外見的には雄しべ雌しべともあるが、相対的大きさが異なり、小さい方の機能が失われているものがここに入ります。例として、モチノキ科(雌雄異株)、トチノキ(雄花と両性花が雑居)など多数あります。雄花、雌花、両性花のつき方も、雌雄異株から雑居性までさまざまです。

1998/9/21 岡山市の鑛山宗利さんからの質問
 アオマツムシについて質問します。家の近くのホームセンターに腐葉土を買いに行ったときのことです。桃の苗木のところでリーリーとうるさく鳴く虫がいました。捕まえてみると、最近、進出している「アオマツムシ」でした。他にもいないかとおもって探してみると,メスのアオマツムシもいました。カブトムシの幼虫のエサ(腐葉土)を買いに行って、アオマツムシのペアを捕まえてきたのです。
 さて、このアオマツムシは、サクラなどの木にいるそうですが、サクラの葉っぱを食べているのでしょうか? 近所のサクラの葉っぱは、既に枯れて落ちています。メスの方は、お腹がまだ大きく膨れていないので、産卵の準備はできていないように思います。今から栄養を取らないと卵に栄養が行かないと思うのですが、何を食べているのかお教えください。
 また、木にいるようですが、鈴虫のような産卵管を持っているので、土に卵を一つずつ産んでいくのでしょうか? それとも、アワでできた卵嚢を土の中に作りそこに卵を産むのでしょうか? かまきりのように、木に卵嚢を付けるとは思っていないのですが、どうでしょうか?

【昆虫研究室の金沢学芸員の答え】
  アオマツムシは、サクラに限らずいろいろな木にいます。多分、幼虫のときには、それらの木の芽や若葉を主に食べているのでしょう。成虫になっても、同じ食物だと思います。
 産卵行動の観察例は、ほとんどありませので、わからない面が多いのですが、「縁がやすりのような産卵管を持っているので,若い枝にねじ込んで穴をあけて産卵するのではないか」という意見があります。飼育して観察したら、教えてください。飼育は新鮮な枝と葉を入れてあげますが、レタスやキャベツでも飼育できると思います。

1998/9/1 大阪市の鈴木和夫さんからの質問
 私は、植物に興味を持ってあちこちの野や山に良く行きます。これまでは珍しい植物を見つけても標本にしようとは思いませんでしたが、今後そういった植物を見つけた場合、研究に役立てていただくために、標本にして博物館の方へお送りしようと思います。しかし、私は専門の研究者ではありませんので、ちゃんとした標本の作り方がよくわかりません。作る以上はいい加減な方法で作った標本でなく、ちゃんとした標本を作りたいと思います。どのように標本を作成すればよいかその方法をお教え下さい。

【植物研究室の藤井学芸員の答え】
 要は「押し葉標本」を作ってください。サイズはA3(新聞紙半切の大きさ)。A3に入りきらない大きなものでも、折りたたんでA3に納めるか、A3の大きさに分割した複数の標本を作製します。厚みがあるものでも、水中に生えるものでも、すべてA3サイズで乾燥させた標本を作ります(サボテンのような多肉質のものは難しい)。「押し葉標本」以外に、液浸(70%エタノール)標本があるが、よほど特殊なものでない限り作成しません(カンアオイの花は液浸がいい)。ただし個人の標本に関しては、サイズにこだわる必要はありません。
 博物館に送る場合、台紙に張ることは不要です(新聞紙に挟んだままでよい;台紙へのマウントは博物館で行っています)。もし台紙に張る場合は、紙をテープ状に切って糊で貼る(・・・原始的な方法しかない)。代用品として切手シートの縁をテープ状に切って使うと便利。糊はアラビアゴム(一ビン4千円くらい)。台紙は中性紙を使う(紙の厚さは植物にあわせて2種類を使用)。最近は、紙テープの代わりに「ラミントンテープ」なるもので代用しています。これは市販されていない(注文生産なので、小口注文には応じていない)し、高価で、専用の道具が必要です。年間数千点以上の標本を作成するところでないと薦められません。
 「ちゃんとした」標本とは、花・果実・胞子等がついたfertile conditionであることです。これら(花・果実・胞子等)のないsterile conditionの標本は、研究価値が著しく低い。標本としての価値をほとんど持ちません。花などが付いていない場合、採集してきて栽培しておいて花が咲いたときに標本にするといったことをすることもあります。その場合は、元の採集データと移植後の(開花)データの両方をラベルに記入します。
 よい押し葉を作るには、可能な限り早く水分を抜くことです。吸水紙を1日数回取り替える、シリカゲルを使用する、などがあります。だいたい2週間で乾燥します。研究者は、専用の乾燥機で45度2昼夜で作成しています。簡易法として電子レンジを利用する方法があるが、A3サイズの標本を作製するには、業務用電子レンジが必要(火事に注意)。その他、布団乾燥機を利用する方法もあるが、これも火事に注意。
 ラベルは絶対必要です(採集場所:とくに産地は正確に記入、日時、採集者名など。ラベルはアルファベット表記と日本語表記の両方を書く。経緯度も入れる)。以下ラベルの一例

--------------------------------------
PLANTS OF JAPAN


Loc. HONSHU Osaka Pref.:
135゜27'E 34゜29'N
Shinoda-yama, Izumi-shi.
(大阪府 和泉市 信太山)
alt. 50-70 m
Hab. wasted paddy field(放棄水田)
Note flower: red(花:赤)
Date October 16, 1997
Coll. Shinji Fujii
--------------------------------------

 標本ラベルは、採集者しか知らない情報を文字情報として標本に付加するものです。だから、植物の名前は書く必要がありません(名前は、誰でも調べることができる。でも、採集場所は採集者本人しか知らない)。また、本人にしか情報が読みとれない書き方はよくありません。なお、ラベルのアルファベット表記は、それを読む人が日本人とは限らないので、全世界共通で行っています。また、経緯度を書いておけば、大阪の地理に詳しくなくても場所がすぐに特定できます。
 やってみると、このラベル作成がとてもたいへんな作業だと分かるはずです。でも、「標本を作ることは、将来にわたって利用する価値を付加する」作業です。ラベルの不完全な標本は「単なるゴミ」ですので、よろしくお願いします。


1998/8/21 広島県呉市の熊谷栄治さんからの質問
 私はムカデの生態が知りたくてムカデを飼おうとしています。私の家の周りには竹藪があって毎年沢山のムカデが出ます。そこでムカデが家に入らないようにムカデの研究をしてみようと思いました。しかし、ムカデが好む餌など私には全く未知の世界なのでどうぞ宜しくお願いいたします。

【昆虫研究室の金沢学芸員の答え】
 西日本で人家に侵入して、時には人を咬んで激痛を与えるトビズムカデやアオズムカデのオオムカデ類は、主に昆虫を食べます。ふつう林内の落葉層に棲んでおり、そこに生息するカマドウマやゴキブリ類などの昆虫を食べると言われていますが、実際にはワラジムシ類やヤスデ類などの昆虫以外の小動物も食べていると思われます。梅雨時から夏かけて、人家に侵入して、ゴキブリ類を補食することもあります。
 初夏が配偶行動のシーズンで、そのために分散すると思われます。オオムカデ類が侵入する家は、落葉層がたまった林に隣接しているものが多く、見方によっては環境のよいところと言えるかもしれません。ムカデは狭いところが好きなので、よく布団の中にもぐり込みます。そのうち、寝返りをうった人間につぶされそうになり、自分の防御のために人を咬むわけです。 

1998/8/20 岡山市の鑛山宗利さんからの質問
 近くのエノキのところで、タマムシを捕まえました。図鑑などで調べましたが、幼虫のエサはエノキの材である事はわかったのですが、成虫のエサが分かりません。エノキの樹液で良いのでしょうか?
 また、幼虫期は2年くらいであるようですが,成虫期はどのくらいなのでしょうか?

【昆虫研究室の初宿学芸員の答え】
 タマムシのうち、緑色で赤いスジが2本ある種類はヤマトタマムシとも呼ばれています。成虫はケヤキやサクラ、エノキなどに集まって、昼間に活発に活動していますが、これはメスが卵を産みつけるためで、幼虫はこれらの樹の枯れ木の中にすんで材を食べています。樹液はなめないと思うので、カブトムシ用のゼリーでは飼育はできません。
 成虫期に関する記述はあまり見られませんが、成虫ではあまりエサを採らないと考えられるので、かなり短い(せいぜい2週間ぐらい?)と思われます。いずれにせよ,飼育するのは難しいと思います。

1998/8/9 大阪府のやっくんからの質問
 カブトムシやクワガタにつく虫(ダニ等)はどうやって退治できますか?
それらは、人間に害がありますか?
ついている虫(ダニなど)の名前も知りたいです。

【昆虫研究室の初宿学芸員の答え】
 カブトムシやクワガタムシにつくダニはヒゼンダニ類のコウチュウダニと呼ばれる仲間で、そのうちの一種にはクワガタナカセというユーモラスな名前が付けられているものもあります。そのほか、寄生性でない仲間がついている場合(くっついて遠くに運んでもらうことを目的としている)もあるようですが、いずれにせよ、退治しておくほうがよいでしょう。楽な退治方法はありません。ひとつひとつを歯ブラシやピンセットで取ってください。人体に対してはおそらく害はないだろうと思います。

1998/8/8 兵庫県宝塚市の森田竜也さんからの質問
 素朴な質問ですが、マチカネワニの骨格化石を拝見したところ、前足の指は5本で後ろ足は4本の様に見えたのですが、実際はどうなのでしょうか?

【地史研究室の樽野学芸員の答え】
 ワニ類の後足は、進化の初期段階で第5指が退化し、4本指になっています。前足は、現生のワニでも5本指のままです。つまり、前足5本指、後足4本指というのは、マチカネワニに限らずワニ類一般の特徴です。

1998/7/28 京都大学の市原千博さんからの質問
 同僚(カイエビの絵を描いた)が所内を歩いていたところカブトムシの頭部だけが落ちていました。アオバズクか何かに食べられたものと思って、(ちなみに彼は日本野鳥の会会員)拾い上げたら、頭だけの状態で前足(第1肢)と触覚を盛んに動かしていて非常に不気味だったそうです。彼の疑問は「一体カブトムシなどは胸・腹がなくても死なないのか」ということです。昆虫がかなり単純なシステムで(生命体としてもその集合体としても)成り立っていることは聞きますが、生命を維持するのに重要な器官を失っても良いだけの余裕があるのでしょうか?カマキリの♂が交尾中に頭をかじられるのは目撃したことがありますが、これも頭がなくなっても交尾の機能には差し支えがないということだと思います。

【昆虫研究室の初宿学芸員の答え】
 昆虫の場合は、脳のある頭部以外のそれぞれの節(胸部3節,腹部10数節)にも脳のような神経系の中心(神経球、神経節などと呼ばれる)があって、それらがその節の運動(脚、翅、筋肉運動)を司っています。そのため、頭がなくなっても脚が動いたりするわけです。
 生殖器に関する運動も各体節からの交感神経が関係していて、頭部とは直接の関係がありません。とはいっても、脳は生命を維持する器官に多く関係していますので、頭部を失うとやがて死に至ることになります。

1998/7/23 大阪市の市川顕彦さんからの質問
 今うるさく鳴いているクマゼミですが、なぜ大阪や豊中のクマゼミは午後にも鳴くのでしょう? 田舎(郊外)のクマゼミはひるから後は滅多に鳴きません。他の蝉がいないのではなく、ニイニイゼミやアブラゼミがいるところでもたくさん午後に(夕方にも)鳴いています。

【前館長の宮武さんの答え】
 クマゼミは普通の天気であれば、早朝から鳴いて、昼前に鳴きやんでしまいます。ところが朝方雨が降ったり、午前中に天気が悪くて十分活動出来なかった時は、午後も鳴きます。また、午前中に鳴いても、午後天気が悪くなり、午後そこそこに天気が好転すると、鳴き出すときがあります。また、個体数が極端に多い時季は、時間に余り関係なくどれかの個体が鳴き出すと、多の個体もつられて鳴き出し、時ならぬ大合唱が続きます。午後や夕方だけでなく、気温が高ければ夜にも起きます。ということで、お天気と個体 数との関係で、時間外にも結構鳴くときがあることを承知して下さい。田舎でも、温暖化で個体数がやたら増えていると、大阪市内と同じように状況が変わっている可能性があります。またセミの鳴くのは、お天気や明るさや、それらとの相互関係で微妙に変わってくることも納得して下さい。しかし、基本的なパターンはやはりあるところがおもしろいところです。

【茂似太のコメント】
 
宮武さんの答えは、クマゼミの一般的なパターンの説明でしかなく、質問の答えになっていないな、っと思ってたら、案の定、市川さんから反論が来ました。この後の展開はこちら
1998/7/20 大阪市中央区の岡本浩さんからの質問
 昆虫の眼について質問です。昆虫は一般に、複眼ですよね。複眼ですと、プリズムのように、ひとつの対象が多数映し出されるわけですが、これでよく、目的物を認識できてるなと思うんです。そこで、どうしてこんな進化をしたのか教えて欲しいんです。よろしくお願いします。

【昆虫研究室の金沢学芸員の答え】
 昆虫の成虫のほとんどは複眼を持っています。でも一つの物体が多数に認識されているとは限りません。それは、ヒトの目が二つあるのに、一つの物体が二つに見えない(実際には二つに見えているのですが)ことと同じことです。実証されていませんが、私は人間が見ているように、昆虫も見ているのではないかと考えています。神経の働きにより、複数の映像を合成しているかもしれません。昆虫の種類によって、色の見え方はヒトと違うかもしれませんが、形はたぶんヒトといっしょのように見ていると思います。
 問題なのは、昆虫がどういう風にまわりを見ているか,正確に把握する手段がないことです。昆虫だけでなく、同じヒトどうしでも、同じようにまわりが見えているかはわかりません。あなたが赤と思っている色を、他のヒトが本当に同じ色に見えている、という確信をあなたは持てますか?
 次に、どうしてこんな進化をしたかということですが、単眼というものが昆虫の目として最初にできたのでしょう。多くの幼虫と成虫にある単眼は、像をとらえるというより、外界の明暗を感じる器官と言われています。その単眼を複数もつことにより、物の遠近を把握できるようになったと思います。さらに数を増やしてきれいに整列さ せて複眼にすることで、物の形を認識できるようになったのかもしれません。これらの進化の過程は、単眼を拡大して多機能化するより、複眼にする方が小さな昆虫に合っていたことや、いくつか壊れても、なんとか見ることができる、という利点があったのかもしれません。結論として、昆虫の目についてはわからないことが多いというのが現実でしょう.


1998/7/15 京都大学の市原千博さんからの質問
 田んぼの中の見慣れない(と思っているだけでしょうけれど)生き物についてお尋ねしたいのです。それは、6mmくらいの貝殻をかぶったホウネンエビとでも形容できるものです。出所は堺市美木多上の同僚の田んぼの土に水を入れて4-5日で出現したもので非常に活発に動き回るものです。今日でそれから1週間ほどですが、ルーペで見たところ背中に卵を持っているようでした(下の写真の背中に当たるところに白く見えています)。お忙しいところ恐縮ですが、これが何か教えていただけないでしょうか?


【動物研究室の山西学芸員の答え】
 水田などで見つかる二枚貝のような甲殻類には、ウミホタルと同類のカイミジンコの仲間(甲殻綱:貝形亜綱)と、カブトエビやホウネンエビと同類のカイエビの仲間(同:鰓脚亜綱)とが知られています。下の写真を見ますと、殻に同心円状の模様が認められますので、後者すなわちカイエビ類であると判定できます。近畿地方の水田には数種類のカイエビが分布していますが、この写真だけではどの種類に該当するかまでは判りかねます。
 脚を比べると、カイミジンコでは、エビ・カニを想わせる複雑な構造を示していますが、カイエビでは同じような葉状のものが多数並んでいるだけで、後者が非常に原始的な甲殻類であることが判ります。
  参考文献:北隆館「新日本動物図鑑」中巻

【茂似太の補足】

 この絵は、写真と一緒に送られてきたものです。質問者の市原さんの同僚の方が、問題の謎の生き物をスケッチしたものだそうです。市原さんは「市原とは別人の手になる絵であること」を明記することを条件に、同僚の方は「あの絵が生物学の進歩に貢献できればこの上の幸せはない」ということで、このホームページで公開することを承諾してくださいました。
 その後、問題のカイエビの標本が博物館へ送られてきて、山西学芸員の同定の結果、ミスジヒメカイエビと種名も判明しました。


1998/7/9 神戸市の芝田和典さんからの質問
 今朝ほど私の勤め先の建物の中で、ハチを見つけました。今まで見たことのないハチでしたので、取りあえず捕まえて同僚と色々調べてみたのですが、結局名前なんかは解りません。ハチの名前と簡単な生態をお教え願えれば幸いです。



【昆虫研究室の金沢学芸員の答え】
 写真なのではっきりと同定できませんが、オオホシオナガバチ(ヒメバチ科)のメスと思います。前バネの斑紋がほぼ一致します。体の黄色の紋は変異が大きいようです。メスは春〜夏に太い倒木や半枯木に集まってきます。長い産卵管で、カミキリムシ類、タマムシ類、キマワリ類などの幼虫に産卵するようです。オスは同じように倒木でメスを待ち受けているようです。


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