開館30年を迎えて

 大阪市立自然史博物館は,1974年4月に長居植物園内でオープンして以来,30年を迎えた.開館当初の「自然と人間」をメイン・テーマとしたストーリー展示は,自然の仕組み・自然の歴史そして人と自然の関わりとその発達史を示すことで,人類は未来に向かってどう進んでいかなければならないかを問いかけようとするものであった.この展示は,当時にあっては内容・手法ともに斬新であり,高く評価されたと言えるだろう.

 しかし,自然史科学の絶え間ない進歩は,展示内容の更新によって反映されなければならないし,観覧者の理解を助けるための新しい展示技法が開発されれば,取り入れていかなければならない.常設展示といえども,一定期間経過すれば更新が必要なことは言うまでもない.当館では1986年春に,常設展の一部更新を行っているが,その後すでに20年近くが経過した.2000年には,隣接する花と緑と自然の情報センター内に,「大阪の自然誌」展示室を増設したが,本館の常設展更新は取り残されている.

 この間,原生林の伐採,二酸化炭素濃度の上昇,地球温暖化など,地球規模での環境問題が進行し深刻さを増している.30年前に掲げた展示の方針は決して古くさくはなっていない.それどころか,当館の果たすべき役割は,ますます大きくなっているだろう.また,1990年代以降の急速なIT化は,展示技法にも大きな変革をもたらしつつある.自然史博物館のメッセージを,多様な年齢・意識の来館者に伝えるため,興味を引き理解しやすい展示への更新をめざして,私たち学芸員は一層の努力を重ねてゆくだろう.


2004年3月展示解説第10集 改訂版より